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豚汁もどきを作ります

 目が覚めると、以前見た天井が目に入った。

 よかった。ちゃんと送ってくれたみたい。

 体を起こして、辺りを見回す。


「……あれ?」


 額から濡れタオルが落ちたのも気にならないくらい、部屋を見て驚いた。

 ここって…同じ小屋だよね?なんか豪華になってるんだけど…

 ベットはそのまま。だけど、小さなテーブルと椅子が新しくあって、窓も増えていた。というか、部屋が大きくなっているような?


 《あ!主様!》


 聞き覚えのある声が聞こえる。見ると、ドアが少し開いていて、その隙間からプレナの姿が見えた。


「おはよう?」


 《うん!》


 元気よくベットに飛び乗ってくる。

 そしてそのまま肩まで登り、私の額に小さな手を当てた。


 《よかった。熱は下がってる》


「ありがとね」


 《いいの。でも、ほんとに心配したんだよ?主様はすぐ無茶するんだから…》


「……弁解の余地もございません」


 いやほんとごめんなさい。でも、私が少し無茶するぐらいで誰かを助けられるなら、これからも私は進んで無茶をすると思う。助けられるなら助けたい。例え、それがその場しのぎでしかなかったとしても。


「瑠璃は?」


 《長はちょっとね…》


 言葉を濁すプレナ。なにかあったの?


「なにがあったの?」


 《えっと…とりあえず外に出たほうが早いかも。出れる?》


「大丈夫」


 聞くと1日寝てただけだからね。少しダルいけど、大丈夫。

 ベットからでて、プレナを肩に乗せたまま小屋の扉を開けた。

 そして、閉めた。


 《あ、主様?》


「…うん。私のせいだよね」


 もう一度扉を開ける。すると目の前に高い高い、木の実の山が出来上がっていた。もちろんそれは……ミーソの実。私が頼んでたやつ。


 〈おお、起きましたか〉


 その山の隣で、瑠璃がなんとも言えない表情で佇んでいた。


「うん…これって」


 〈皆が集めたものです〉


 やっぱりそうだよね!

 どうしようかと山を見つめていると、ひょこっと見たことがあるクリスタルなうさぎさんが出てきた。


 《主様、この子がこれでいい?って》


「うん…ありがとね」


 もう諦めた。クリスタルなうさぎさんを撫でる。すると透き通った青色の体が少し輝いて、濃い青色の瞳を細めた。気持ちいいらしい。


 〈して、これはどうしますかな?〉


 確かにどうしようか。まぁ無限収納庫(インベントリ)に入れちゃってから考えようかな。

 私の身長よりも高い山を収納する。


「ありがとね。だけど、無理してない?」


 クリスタルなうさぎさんを撫でながら尋ねる。


 《それ、主様が言う?》


 プレナの呆れ顔が目に入る。いや、私は不可抗力で…


 《はぁ…この子だけで集めた訳じゃないから、大丈夫だよ》


 あ、そうなんだ。


「みんなにもお礼言っといてね」


 キュイ!と高い鳴き声を上げて、クリスタルなうさぎさんは去っていった。


 〈マリーナ様。一体何に使うのです?〉


「うん?ちょっと料理に…この実って一般的に流通してるの?」


 聖域にしかないんだったら、あんまり迂闊には使えないんだけど?


 〈問題ありませぬ。ただ、使う用途がないので、あまり知られておりませぬ〉


 なるほどね。マイナーな食材?ってことかな。


「よし。じゃあ今作っちゃおう!」


 瑠璃にシステムキッチンを出せる場所を聞いて、そこで調理を始める。

 コンロに鍋を置いて、その中に魔法で水を入れる。水道を使っても良かったんだけど、何となくめんどくさかったから。


「うーん…出汁、出汁…」


 無限収納庫(インベントリ)の中で、味噌汁の出汁に使える食材を探す。


「あ、干し肉でいいか」


 小麦粉を買った時におまけでくれていた干し肉を投入する。火にかけて出汁をとる。

 コンロはまだあるので、土鍋でご飯を炊く。


「魚が欲しい…」


 古き良き日本の伝統食ですよ。まぁないものねだりしても仕方ないね。

 ご飯のお供か…また野菜炒め作るか。今回は醤油味で。


 《主様、それって前のやつ?》


「前のとは少し違うよ」


 ちなみにコンロは4口ある。便利だね!


 〈おや。どうやら集まってきてしまったようですな〉


 瑠璃の言葉通り、周りには魔物が集まってきていた。なんかデジャブ。


「よし!できた」


 野菜炒めを無限収納庫(インベントリ)に一旦収納して、ミーソの実の加工に入る。


 クルミみたいな硬い殻を外す。


 べキッ!!


「あ、あれ?」


 砕けちゃった☆ってちっがぁぁう!なんで砕けちゃうのよ!


 《主様、大変そうだね》


「うん…ちょっと力が強すぎるからね…」


 はぁ…今度は慎重に…


 メキッ!


 うっ!まだマシ。うん。


 《…やろうか?》


「…いや、加減を練習したい」


 頼ってもいいけど、今後色んなことで加減が出来なくなるかもしれない。その練習にこれは持ってこいなんだもの。


 とりあえず作業を進めて、中から出てきた黒っぽい玉をボウルに入れる。

 うん。なんとか加減はできるようになった。

 だいぶ数が溜まったらそこに水を加えて混ぜる。すると、あっという間に見慣れた味噌が……!


 《主様〜。ボコボコいってるけど》


 は!鍋が物凄い沸騰してた!

 急いで火を止め、干し肉を引き上げる。ちょっとアクがでたから、それもとっておく。

 そして、できた味噌を混ぜていく。分量は……適当で。ま、まぁ大丈夫!


「あ、具がない」


 具なし味噌汁なんて…急いでオーク肉を切って投入。ついでに人参とか大根とか、野菜炒めの余りを突っ込んでいく。豚汁もどきの出来上がり!


「できた!」


 辺りを見回すと、期待に満ちたキラキラした瞳が…


「うっ!…作ります」


 ご飯をおにぎりにしていく。半分醤油を塗って焼きおにぎりに。魔法で焼きました。だってそっちの方が早いんだもん。


 お皿に乗せて、みんなの元へ。


 〈食べてよろしいので?〉


「もちろん!みんなで食べよ?」


 そう言うと、周りで見ていた魔物達が集まってきた。ゴザを敷いて、私も食べ始める。


 豚汁もどきはちょっと塩分濃いめ。だけど、十分美味しい。


 《主様!この汁美味しい!》


 プレナも満足したみたい。いつの間にか瑠璃も食べていた。目を細めているから、多分美味しいんだと思う。


 魔物たちは恐る恐るといった感じで食べ始めたけど、美味しかったらしく直ぐに無くなってしまった。


 私も焼きおにぎりを食べたけど、ほんとに美味しかった。日本バンザイ!


 追加でおにぎりを握りつつ、みんなで美味しく食事を終えた。

 さぁ。次は制御の特訓だ!




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