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 門を出て、怪しまれない程度のスピードで霧の森へと向かう。

 あ、プレナはまだ出してないよ。飛んでっちゃいそうだから。


 人が疎らになってきた辺りで、スピードを上げる。おぉ、速い速い。結局、ギルさん達と来た時の半分以下くらいの時間で到着した。


「プレナ」


 《はーい。ちゃんと呼んでくれた!》


「ちゃんと忘れてなかったから。で、昨日言ってた声って、聞こえる?」


 プレナにしか聞こえなかったっていうことは、もしかしたら、助けを求めていたのは魔物かもしれないね。

 プレナは私に言われて、耳に手を当てて音を聞いてるみたい。

 ……それがものすごく可愛い。だけど、プレナは真剣なんだから、邪魔しないようにする。


 《うーん…小さいけど、多分こっち》


 小さな手で右の方を指さした。もちろん、その方向は霧の森がある。


「こっち?」


 《うん。多分》


 とにかく頼れる情報はそれしかないので、ひとまずその方向の森中へ足を踏み入れる。


「あ、出れるかな?」


 森に入ってから気付いた。迷って出らなくなったらどうしよう?


『問題ありません。私が案内します』


 ほ…良かった。じゃあよろしくね。


『はい。お任せ下さい』


 ハクが出口まで案内してくれるなら安心。ということで、さらに森の奥へと進んでいく。すると、段々霧が濃くなっているように感じた。まるで、この先へ行かせたくないかのように……


「ね、ねぇ、こっちであってる?」


 思わず不安になる。だって私の足音しか聞こえないんだもの。


 《大丈夫!多分こっちだから!》


 た、多分…でも、それでも進むしかない。

 覚悟を決めて、さらに進んでいく。


「なんか…霧は濃いけど、空気はいいというか…」


 《それは私も思ったの。でも、嫌いじゃない》


 そう、嫌いじゃない。寧ろ…心地いい。


『おそらく、ここは聖域に近いのでしょう』


 聖域?


『はい。清らかな力が集まってできる空間です』


 なるほど…そんなものがこの森に。


 《あ!主様!あれ!》


 プレナが叫んで指さした先には、うっすらとだけど光が刺していた。

 私はその方向へ迷わず進む。そしてその光に差し掛かった瞬間、


 目の前が真っ白になった。いや、光に包まれたと言った方がいいかもしれない。実際、眩しくて思わず目を閉じてしまった。


 しばらく経って、目を開けると……


「なにこれぇ…」


 目に飛び込んできた場所は、霧なんて全くなく、木々は生い茂り、そのどれもが熟した実をつけていて、清らかな水がその脇を流れ、そこかしこに色とりどりの花が咲き乱れていた。まさに楽園とも呼べる場所だと感じたのは、間違いじゃないと思う。


 《すごい…綺麗…》


 プレナも感動しているみたい。でも、いつまでも見とれてる場合じゃない。


「プレナ、声は?」


 《…あ!ちょっと待って…こっち》


 プレナが指さした方向へと進む。進めば進むほど、空気が澄んでいくのが分かる。

 ……そして、到着した先には、1羽の灰色のうさぎが平らな石の上に倒れていた。いや、寝かされていたと言った方がいいかも。

 そのうさぎに少しづつ近付いてみる。すると、どこからともなく大小色とりどりのうさぎ達が姿を現した。しかも、まるで寝ているうさぎを守ろうとするように…


「え、えぇっと…」


 いきなりの展開にちょっとついていけないんだけど…

 すると、するするとプレナが地面へと降り立ち、会話を始めた。


 《大丈夫。主様はいい人だから》


 身振り手振りでプレナが説明していく。可愛い…


 《…主様、なんか変なこと考えてない?》


「え?!そ、そんな事ないよ?」


 ジト目でプレナが見てくる。いやほんとに、可愛いって思っただけだから!


 《…まぁ主様はこういう人だから、大丈夫!》


 それのどこが大丈夫なんだか。まぁ今そんなこと言ったら面倒なことになりそうだから、言わないけどさ。


 そんなプレナの説得?が上手くいったのか、うさぎ達が道を開けてくれた。


 《さ!主様!》


「う、うん」


 なんかモーゼみたい……って、今はそんな場合じゃないね。とにかくお礼を言って、寝ているうさぎの元へ。


「大丈夫?」


 優しく頭を撫でながら、語りかける。だけど、呼吸は荒い。


 ハク、何か分かる?


『マリーナ様の神眼で見れば分かります』


 神眼…


 心でそうつぶやくと、ポンッと半透明なプレートが現れた。


 ┠ステータス┨───────────

 名前:なし

 種族:ヴェルトーラス

 年齢:384

 レベル:138

 ステータス:魔力:5070 HP:3420(-24)

 魔法:草属性Ⅷ 風属性Ⅴ

 ユニークスキル:聖域結界

 スキル:魔力制御Ⅴ 魔力操作Ⅴ

 称号:聖域の主 ヴェルトーラスの長


 備考:呪い


 ────────────────────


 呪い…?


 さらに詳しく。


 呪い:聖域を侵すモノに蝕まれた状態。


 聖域を侵す…


「ねぇ、聖域を侵す存在って分かる?」


 《聞いてみる!》


 プレナが聞いている間に、できる限りのことを…!


『………』


 呪いを解除するには、おそらく原因を取り除く必要がある。だけど、それをする前に、このうさぎの命は…


 考えろ。考えるんだ。

 呪い。悪意。つまり悪。それの対になるもの………聖?でもどうやって…


 そうこうしている間にも、命の灯火は消えていく。


 やっぱり私には…いや、私は助けられるほどの力を持っているはず。ここで諦めるもんか!


「聖属性…解呪…」


 解呪は…多分体を蝕む存在を追い出すこと。なら…


「ちょっとごめんね」


 うさぎの体に触れ、そこから聖属性魔力を流す。うさぎの体の中にある、()()()()()を押し出すイメージで…


「お願い…」


 焦る気持ちを抑え、慎重に魔力を流す。すると、体から黒い煙のようなモノが出てきた。これが…呪い?

 とにかくそれを逃がさぬよう、聖属性の結界で閉じ込めていく。この聖域を穢す訳にはいかないから、ね…。


 しばらくそれを続けると、次第に煙は薄くなり、やがてなにも出なくなった。


 神眼…うん。呪いは消えてる。よかった……


 《主様!?》


 視界が傾く。あぁ…ちょっと無理したかも……

 私はそのまま意識を失ってしまった。














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