依頼達成!
「えっとー…はい。私の従魔がやりました」
「まさか魔法が使えたなんて…凄いわね」
「そうですか?」
「ええ。でも、その魔物って魔法使えたかしら?」
あ、不味い。確かにプレナは元々魔法が使えない魔物だったわ。どうしよ?
「あ、っと……と、突然変異で」
うん。我ながら苦しい言い訳だわ…
『ある意味合ってますけどね』
あらそうなの?
『眷族になりましたからね。一応元の種族から変異、又は進化した種族ということになります』
な、なるほど。となると今の種族は?
『マリーナ様の眷族ですから、不明扱いです』
はぁ?!
『マリーナ様自身が種族不明なので』
……そうだったね。その影響をプレナも受けたってことか。
「突然変異、ねぇ…確かに姿がちょっと違ったわね。そういうこともあるのね」
ほ。なんとか納得してくれたみたい。
「あ、スライムは…」
「もうだいぶ数は減らしたわ。あとちょっとね」
一応依頼内容はスライムの討伐であって、殲滅ではないらしい。というか殲滅はしない方がいいそうだ。生態系が変わってしまう恐れがあるからね。だから少し残すらしい。数が減れば、集まっていたスライムは自然と散るので問題ない。
「大体こんなもんだな。おーい、魔石の回収手伝ってくれー」
スライムの大群に突っ込んでいたギルさんが、そう叫びながら手を振っていた。
「じゃあ行きましょうか」
「はーい」
リナさんと一緒に近くの魔石を集めながら、ギルさんの方へと向かっていった。
「結構散らばったからな。回収は大変そうだ」
「そうね。さっさと終わらせちゃいましょ」
ちまちまと回収しだしたギルさんたちに混じって、私も回収し始める。
なんでそこまでして回収するのかって言うと、もちろんお金になるからっていうのもあるし、魔石はそのまま残してしまうと、新しい魔物が生まれてしまうこともあるかららしい。だから取りこぼしはしない方がいいんだって。
だけどスライムの魔石は小指くらいの大きさで、背の低い草に隠れてしまうので中々見つけるのは大変だった。
「あー!見にくい!!」
バケットさんがそう叫んで頭をかきむしっているのが見えた。分かるよ、その気持ち。さすがに叫ぶほどではないけど。
「おーい。そろそろ帰んねぇとやべぇから帰るぞ」
ギルさんにそう言われて空を見てみると、もうだいぶ日が傾いていた。暗くなったら魔物が活性化するから、夜は危険なんだって。それに暗くなったらそもそも魔石が見つからないってことで、回収は終了して帰ることになった。
「取りこぼしは無さそう?」
「分からないわね。倒した数なんて覚えてないし」
確かに倒した数が多すぎるもん。覚えるのは無理だよね。
「じゃあひとまず帰るか。マリーナは…」
「あ、自分で走ります。距離的にも大丈夫ですし」
そもそも行きは断る暇がなかったのよ。だけど、それはそれで有難かったかも。どれくらいのスピードで走るか分からなかったからね。でも今は分かるから、そのスピードに合わせることが出来るはず。
「だが……」
「大丈夫でしょー。マリーナちゃんはあの深淵の森にいたんだし」
バケットさんがそう言うと、ギルさんは「そういやそうだったな…」と呟いた。でもそれがなんで私が走れる理由になるの?
「あの森の魔物と戦えてたからな。それだけの実力はあるか」
あ、そういう基準なのね。
「じゃあ行くか」
ギルさんの号令でまず霧の森へ。そう言えばプレナが助けを呼んでるって言ってたっけ?今日は時間がないから無理そうだけど、明日にでも来てみようかな。
そんなことを考えながら霧の森を無事抜けた。
ギルさんが全員いるのを確認して、身体強化を自身にかけた。
「マリーナ、大丈夫そうか?」
「大丈夫です!」
「よし。なら行くぞ」
そう言ってギルさんは走り出した。
………うん。遅い。そもそも私が身体強化しなくて追いつけるんだもん。
『それはマリーナ様だからです』
いやまぁそうなんだけど…はぁ。こうなると逆に合わせるのが難しい。いや合わせられるけどね?なんて言ったらいいかな………走ってる人に走っているように見えるように歩く、みたいな?
…そうなの。ギルさん達のスピードね、今の私の早足くらいのスピードなのよ。
「なんかマリーナちゃん余裕ね」
「え?!い、いやそんなことない、です」
リナさんが鋭い……
その後休憩なしで走り続けて、なんとか日没頃に門に到着した。
「ハァハァ…つ、着いたぞ」
息も絶え絶えなギルさんたち。ご苦労さまです。
「マリーナちゃんは…なんで…そんなに…」
「喋ると余計に疲れますよ。はい、深呼吸して下さい」
ギルさん達が深呼吸して落ち着きを取り戻している間、私はそれを眺めるという、傍から見たらなんとも変な光景に。いやだって私は全然疲れてないんだもん。仕方なく無い?
「ふぅ…マリーナちゃんの凄さが少し分かった気がするわ」
どんな凄さですかね、それ。
「とりあえず入るか」
門番の人にギルドカードを見せて、水晶に手をかざして街の中へ。
「ギルドで達成報告して…」
その時、ギルさん達のお腹がグゥ〜っと鳴った。
「……飯だな」
確かにお昼も食べてなかったや。自覚したら私もお腹が空いてきた。早く達成報告して、ご飯食べたい!
私たちは満場一致で、ギルドへと足早で向かっていった。