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ファンタジーって凄い

 リスたちに連れられて森の中の道無き道を進む。


 ていうか今の状況を他の人が見たらどう思うんだろうか?

 森の中を大量のリス型魔物を引き連れて歩く幼女……うん。やばいわ。


 幸いと言っていいのか、周りには人の気配はない。魔物の気配はそこら辺にウヨウヨあるんだけどね。てか魔物多いな?!森って大体こんなもんなのかな?


 だけど、なんでかは分からないけど、デカい反応の魔物は近づいて来ようとしない。かなり遠くにいる。しかもそっちに近づいたら離れてく。つまり逃げてるというか、避けてるってことだよね?何故?


『おそらく、マリーナ様の魔力を感覚で察知し、格上であると認識しているからでしょう』


 か、格上って…あれ、じゃあこの子達は?


『魔力を感知できる魔物は魔法が使えます。逆に言えば魔法が使えない魔物は察知出来ません。なので気にせず近づいてきます』


 なるほど。つまりこの子達は魔法が使えないのね?


『そういうことです』


 理解したわ。ていうかこの森の魔物って魔法が使えるのが多いのね。


『そうですね。だからこそマリーナ様を避けていますので』


 ……待って。第一に魔物に避けられる私ってどうなのよ。


『誇ることではあるのですよ?』


 いや、別にそんなこと誇りたくないからね!?


『しかし今後も同じような場面に遭遇するかと』


 だよねぇ…はぁ。なんか複雑。魔物は寄ってきて欲しくはないけど、逆に逃げられるって言うのもなんか私が人外みたいで……


『そもそも人ではありませんから』


 うるさーい!私はまだ認めてないからね!?


『……そうですか』


 あ!今呆れたでしょ?!


『……』


 いや無言やめて!?怖いよ!ていうかどうやって無言を表現してるのよ!?


『そういうものですので』


 ……なんか人間味おびてきたね。


『恐縮です』


 いや、褒めた訳じゃあ……


「キキッ!!」


 ハクと会話している間に、目的の場所へと着いたらしい。

 着いたのは……ただの森?


「ここなの?」


「キキッ!」


 問いかけると頷きながら鳴いたので、ここなんだろう。だけど、周りには木しか見えない。


「どこにあるの?」


 そう聞くと、オレンジ色の子はいきなり走って目の前の木によじ登った。

 え、どういうこと?


 私が理解出来ないでいると、おもむろにその子が木の肌を齧り出した。


「えぇ!?何してるの?!」


 いくら雑食だからって木の皮はだめじゃない?

 そう思ったけど、どうやら違うらしい。現に齧った木の皮は下に落ちていってるから。齧るというより…削る?


 しばらくそれを続けていると、傷付けたところから少しづつ樹液が滲み出てきた。その色が……真っ黒だった。


「え、まさかこれ?」


「キキッ!!」


 そうだよ!と言うふうに鳴き返してくれた…けど、樹液なの?


 ……いや、ここはファンタジーの世界なんだ。コンソメだって木の実だし。だから醤油が樹液ってことも有り得る…はず。


 意を決して滲み出てきた樹液を、指につけて舐めてみる。


「おおおぉぉー!!醤油だーー!」


 紛れもなく醤油だよ!疑ってごめん!ファンタジーって凄い。


「まさか樹液が醤油だなんてねぇ?絶対気づかないよ」


 木の肌を傷付けてみないと分からないんだもの。そもそもそんな発想もしないしね。これは聞いてよかった!

 早速採取することに。


「えっとー…ゴムの木みたいな感じでいいのかな?」


 ゴムの木から樹液をとるときみたいな傷を付けていく。地面に矢印が向いてるような傷ね。

 その先にひとまず鍋をおく。だけど醤油を入れる容器がない。


「うーん…ここの土からビンって創れる?」


『可能です。ただ、透明なガラスにはなりません』


 別に透明じゃなくていいから、それでいいや。

 地面に手をついて、イメージを固める。

 大きさは…そこまで大きくない、牛乳瓶くらいのが5本くらい。一升瓶くらいのが10本くらいあったらいいかな。


「よし!ちゃんとできた!」


 できたビンは磨りガラスで出来てるみたいだった。ただ、それだとちょっと強度が心配だなぁ…


『……でしたら強化魔法をかけてみては?』


 強化魔法?だけどそれって時間経過で消えない?


『生物ではない物体に施した強化魔法は基本消えません。簡単に言うなら、属性を付与するようなものです』


 おお。なるほど。

 早速強化魔法をかける。落としても割れないくらいの強度に強化するイメージで。


 一瞬だけビンが光ったけど、見た目は変わらなかった。まぁ出来てないならそれはそれでいっか。


「おお。もう溜まってる」


 鍋になみなみになるまで醤油が溜まっていた。直ぐに別の鍋に入れ替えて、溜まった醤油をビンに詰めていく。


「あ、ビン足りない」


 思ったより量が多かった。ビンを追加で創りつつ、詰めていく。ついでに多めにビンは創っておく。またなにかに使いそうだからね。


 また鍋がいっぱいになったら、空になった鍋と入れ替えて、ビンに詰めるという流れ作業をしばらく続けていると、だいぶ量が手に入った。てか樹液多いな!?まだ出てくるよ。


 さすがに傷付けたままじゃ可哀想なので、回復魔法をかけておく。すると一瞬で傷がふさがった。よし、これで大丈夫。


「キキッ?」


 もう終わり?とでも言うように、最初の白色の子が首を傾げてきた。


「うん。もう十分!それに日も暮れそうだしね」


 そう告げると、途端に悲しそうな顔になった。いや、そう見えるってだけだけど。


「ま、またくるから。ね?」


 そう言うと、なんか話し合いを始めたみたい。なんで?



 しばらくそれを眺めていると、どうやら終わったらしく、私の方を向いてきた。


「どうしたの?」


 すると、最初に近づいてきた白色の子が出てきた。そしてそのまま私の足元に駆け寄ると、足を登って私の肩に乗っかった。え、どういうこと?


「もしかして……連れていけって?」


 肩に乗った白い子に問いかけると、ブンブンと頭を縦にふった。さっきの話し合いはそのことを決めるため?


「でも、いいの?」


 ここを離れれば、しばらく会えなくなるかもしれない。

 そんな思いで尋ねると、そんなこと平気よ!とでも言うように、フンスッと鼻息を荒く吐いた。あ、そうですか……もう決定なんですね……


「じゃあまたね?」


「「「「キキッ!!」」」」


 私が手を振りながらお別れを告げると、みんな小さな手を振って送り出してくれた。

 やばい。写真撮りたい。作ろうかな。


 そんな馬鹿みたいなことを考えながら、私は森をあとにした。


















 ………肩にリスちゃんを乗っけて。あ、ハクに聞いたら女の子だったのよ。

 ………どうしようか、この子。




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