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これは私のわがままです

 オケアニス様が空中から取り出した…いや、取り出すには少々大き過ぎる気もするけど…


「どう?」


 そう自信満々に聞いてくる。


「こ、これって…」


 私の目の前に現れたのは…………向こうで使い慣れたシステムキッチンだった。


「え、ど、どうして…」


 脳内プチパニックである。あ、いや。今は脳ないんだっけ?

 でも、そんなことよりなんで?!なんであのシステムキッチンが!?


「ふふふっ。驚いた?」


「いや、驚いたというか…理解できないというか…」


 だってもう使うことはないって思ってたから…


「これはマリーナちゃん…正確に言えば真衣ちゃんの記憶から作ったのよ」


「私の…記憶…?」


「そうよ。だって必要な道具が分からなかったんですもの」


 いやまぁ確かに言ってなかったけど!


「私の記憶…覗けるんですか?」


「ええ、もちろん!だって神様よ?」


 ま、まじかぁ…え、てことは今までの心の声とかも筒抜け?


「私の…考えてることも分かるんですか?」


 思わずそう尋ねてしまった。


「ああー…それは…分からないのよ」


 あ、あれ?てっきりそれも分かるものかと…


「人間相手とかだったら分かるんだけど、マリーナちゃんは違うしね」


 ええ、神龍ですね、私は。未だに認めたくないけどね!


「神龍っていうのも神の眷属に当たるから、漠然と考えてることが分かるんだけど…マリーナちゃんは、もはや神龍とは言えない()()になっちゃったからね」


 いやその言い方なんか怖いんですけど!?未確認生命体ですか?私は!


「そ、それって大丈夫なん…ですか?」


 私がじゃなくて、()()()()()()、だ。


「まぁ大丈夫なんじゃない?」


 …随分軽いな。神様がそんなんで言い訳?ちょっと抗議の視線を向ける。


「だ、大丈夫だから!ちゃんと確認してるから!だからその目止めて?!」


 …ほんとかなぁ?疑わしいのでグランパパに目線を向ける。


「大丈夫ですよ。私も確認してます」


 ほ、なら安心だね。


「え、私ってそんなに信用ないの!?」


 後ろでオケアニス様が倒れ込んだ。なんか落ち込んでる…落ち込む要素あったかな?


「…とりあえず…これは…どうしたらいいんですか?」


 グランパパに助けを求める。


「大丈夫です。ほっとけば戻ります」


 なんか扱い雑くない?!いや、私も言えたもんじゃないけどね?


「そ、そうですか…で、これは使っていいんですか?」


 オケアニス様を放置し、システムキッチンを指さす。


「多分いいんじゃないでしょうか?」


「でもこれってどう運べば…」


 あ、そう言えば無限収納庫(インベントリ)はこっちでも使えるんだっけ?でも、これ何処で使うよ?


「何処で使えばいいんでしょう?」


「ここで使えばいいのでは?」


 いや、料理するためにわざわざ教会に来るのもめんど…大変だしなぁ。


「ううぅ…マリーナちゃんが構ってくれない…」


 え、構って欲しかったの?


「えーっと…オケアニス様?」


 とりあえず名前を呼んでみる。


「……違うぅ…」


 あ、あれ?名前間違えちゃった?


「名前間違えましたか?」


「いや名前は合っていますよ」


 私の質問にグランパパが答える。じゃあなんで違うの?


「あのー…じゃあ、どう呼んだらいいんです?」


 答えを本人に聞くほうが早いよね。

 私がそう考えて尋ねると、待ってました!と言わんばかりに、オケアニス様が顔をバッと上げた。


「マリーナちゃんはグランのことをパパと呼んでるわよね?」


「ええ、そうですね」


 あ、この流れは…


「じゃあ私はマ「お断りします」まだ言ってないのに!?」


 だってね?そこまで言ったら分かるよ。


「オケアニス様をママとは呼べません」


「ど、どうしてよ!?」


「私が、グランドリア様をパパと呼んでいるのは…私という()()()()()()からです」


 だから何も関わってないオケアニス様をママとは呼べない。変な考えかもしれないけど、私にとってパパとママとはそういう意味を持つ。無論本当の親はお父さんとお母さんだけどね。




「そんなのズルい!グランはマリーナちゃんを帰れなくした張本人なのに!」


 …まぁそうでもあるよね。


「確かにそうかも知れません」


「だったら…」


「それでも、私のために頑張ってくれました。私からしたら、それがとても有難かった」


 右も左も分からない私をフォローしてくれたのは直接的には[ハク]だけど、それを創ってくれたのはグランパパだからね。


「だから感謝してるんです。別に恨むとか、そういう感情がないからこそ、私はパパと呼んでいるんです」


 でも、確かにオケアニス様も私のために…だよね?システムキッチンを創ってくれた。その感謝はしないとだよね。まぁママと呼ばないのは、ただの私のわがままなんだけど…


「だからママは無理ですけど…そうですね、お姉ちゃんはだめですか?」


 なんとなく、妹が好き過ぎるお姉ちゃんに見えてしまうんだよね。


「お姉ちゃん…私がお姉ちゃん…」


「あ、あの…?」


 ちょっと目が怖い感じでブツブツ言うもんだから、心配になって声をかけたんだけど…

 …その瞬間、またしても抱きしめられた。


「ゔっ!」


「とっても嬉しいわ!」


 た、大層嬉しそう…なんだけど、


「く、苦しい…」


 堪らずペシペシとオケアニス様の腕をタップする。


「あ、ご、ごめんね!」


「はぁー…」


 ゆっくりと息を吐く。ほんと死ぬかと思った…


「今度から気をつけて下さいよ……アニスお姉ちゃん」


 オケアニスの後ろを取って、アニスお姉ちゃん。


「……っ!」












 ………………とてもお気に召したようで、またしても抱きしめられることになったということは、言わなくても分かるだろう。ぐぇー…



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