レシピ登録
ロールキャベツを食べ終わり、リナさんに手を引かれ商業ギルドへ。
「私は別にしなくていいと思うんですけど…」
「だめよ!あんなに美味しいものを広めない手はないわ!」
うーん…これはもう止められないな。
あっという間に商業ギルドに到着。するとリナさんはカウンターへ向かい、何かを話し始めた。盗み聞きしちゃえ!意識を音に集中する。
「(ギルマスはいる?)」
「(はい、いますけど…またジリル草ですか?)」
「(今日は違うわ。でもそれと同じくらい凄いものよ)」
「(わ、分かりました!)」
うん、ハッキリと聞こえる…そんなに凄いことではないのだけれど…
「終わったわよ。じゃあ行きましょうか」
「はーい」
リナさんの後をついていき、向かったのは昨日きたばかりの部屋。
しばらく待っていると、ローランさんが部屋に入ってきた。
「今日はどういったご要件でしょうか?ジリル草ではないと聞いていますが…」
「レシピ登録よ!できるでしょ!」
と、食い気味にリナさんが言う。すこしローランさんが引いている。
「は、はい。出来ますが…それが凄いことなのですか?」
まぁそうだよね。
「凄いってものじゃないわ!革命よ!」
「そ、そこまでのものですか…現物はありますか?」
「さぁ、マリーナちゃん!」
リナさん…目付きが怖いです。ロールキャベツ、もといロール白菜は、リナさんに言われて1つ作ってある。なるほど。この為に作らせたのね。
「はい、どうぞ」
無限収納庫からロール白菜を取り出す。時間停止なので、まだ湯気が立っている。
「これですか…見たことない料理ですね」
「食べてみて!」
「では…」
ローランはどこからともなくフォークを取り出して、ロール白菜を食べ始めた。
「…っ!これはっ!」
そう言って目を見開いた。そして一気に食べ終わる。早くない?!
「なるほど…理由が分かりました。確かにこれは革命ですね」
「でしょ!」
リナさんがドヤ顔を決める。
「…リナ、作ったのはマリーナ」
そんなリナさんにフィーナさんが忠告する。
「なんと、マリーナさんが作ったのですか?」
「うーん…まぁ、そうです」
レシピを作ったのは私じゃないけどね。
「なるほど…ではレシピ登録を進めましょう」
そう言ってローランさんは立ち上がり、近くの棚をあさり始めた。
「あ、ありました。中々レシピ登録をする人が居ないもので、埋もれてしまっていました」
そう言いながらテーブルに置いたのはA4くらいの茶色い紙。
「これは?」
「これはレシピ登録をする際に使う特別な紙です。これに特殊なインクで書き込むことで、そのレシピは登録されます」
「誰にですか?」
「無論、神様ですよ」
……なんだろ。物凄い嫌な予感しかしない。
「ではこれに書いてください」
ローランさんはインク壺と羽根ペンを私に手渡した。
「書くのはどういった内容ですか?」
「そうですね…材料と手順。注意事項などでしょうか。何分私がギルマスになって初めてのレシピ登録ですので…」
まじか!?そんなに少ないの!?
衝撃的な事実を知りながら、私はペンを進め…進め…
「…書きづらそうね?」
「はい、ちょっと」
だってむちゃくちゃ紙に引っかかるんだもの。ガタガタの文字で、何とか材料と手順。注意事項を書き込んでいく。
あ、材料は4人前を基準にしてる。
「…書けました」
「はい。ではこちらに」
そう言って案内されたのは、ミニチュアの神様の像がある祭壇だった。
「ここに紙を置いて、祈ってください」
祈る?
「どう祈るんです?」
「レシピ登録お願いします、と」
まんまかい!
ローランさんと同じように手を合わせてお祈りする。レシピ登録お願いします!
するとどこからか、[任せなさい!]って聞こえた気がした。声が女性っぽかったから、エアリーズ様か、オケアニス様かな?
「はい。これで完了です。あとは紙に神様からの印が出るまで待ちます」
「どれくらいですか?」
「そうですね…ざっと1週間ほどでしょうか?」
そんなにかかるんだ〜って思ってたら…いきなり紙が光出した。
「「「「「え!?」」」」」
………うん。何となく予想はしてたよ。直ぐに登録してくれるって。
……けどさ、こんなに光るの!?
「これは…凄いですね」
ローランさんがそう吹く。
「神様もマリーナちゃんの料理を認めたのよ!」
多分その通りだから否定できない…
「と、とりあえず、登録は完了しました。後は価格ですが…」
「1番安くてどれくらいですか?」
「1番安いのは…100リシアです」
「じゃあそれで」
「ちょっとマリーナちゃん!?」
私の価格設定に口を出してきたのはリナさんだ。
「安すぎない!?」
「でも、私はもっと沢山の人に知ってもらいたいですし」
本来ならタダでもいいくらいなんだけどね。でも、タダにはできないらしいので、1番安い価格に設定した。
「確かにマリーナさんの考えは理解できます…しかし、あまりに安すぎると逆に不審がられる可能性があります」
あー…その可能性もあったか。
「…じゃあ1000?」
「それでもかなり安いですが…マリーナさんがそれでいいなら、その価格で設定しますね」
私が書いた紙に、ローランさんが同じインクで【1000】と記入した。するとその紙の文字が一瞬だけ光った。
「はい。これで登録完了です。売上はマリーナさんのカードに直接振り込まれますので」
へー。遠隔でチャージできるんだね!
「分かりました」
「では外まで送ります」
ローランさんに外まで見送ってもらい、商業ギルドを後にした。
「本当にあの価格でよかったの?」
「はい。お金なら使い切れないくらいありますしね」
無限収納庫の中にはジリル草はまだまだあるしね。お金の心配はまだない。
「そう…まぁマリーナちゃんがそう決めたならもう何も言わないわ」
もう時間的には日暮れ。なので宿へと向かう。道中まだレシピがあるのか聞かれたので、あるにはあるけど、材料が足りないとだけ伝えた。
明日はなにしようかな?
そんなことを考えながら、私は宿へと戻った。