人と遭遇
洞穴に住み始めてからだいぶ時間が経った。
『正確には7日です』
あ、そう…。で、その間色々なことをしてたんだよね。狩りをしたり、果物集めたり、薬草集めたり、洞穴リフォームしたり…あ!洞穴をリフォームした時に鉄鉱石を見つけたんだよね~。
『良かったですね』
ほんとにそうだよ!その鉄鉱石を魔力を使って純粋な鉄にしたり…
『あれはハチャメチャ過ぎます』
そうなんだよね~。そもそも魔力でそんなことはできないらしい。まぁ出来ちゃったんだけど。
で、その鉄を使って新しい武器とか、工具とかを作った。これでやっと木工ができる!
『もはや道具がなくてもできそうな気がします』
いいの!こういうのは形から入らないと。
『…そうですか』
あ!今呆れたでしょ!?
『…いえ』
その間はなんだ!?
『そんなことより』
そんなこと?!
『近くで人の反応があります』
「え?!」
人?!この森に?
『はい。どうやら魔物と戦っているようです』
「魔物の種類はわかる?」
『……バレットラビットです』
バレットラビット…私がこの森で初めて遭遇した魔物だね。ちなみに私が初めて倒したイノシシも魔物だったらしい。魔物っていうのはこの世界に広く生息する生物のことで、魔物によっては魔法を使ってくるらしい。もちろん魔物じゃない動物もいるけどね。
『どうなさいますか?』
「どうなさいますかって…とりあえず案内して」
『わかりました』
私は洞穴から出て、人がいる所に向かう。扉に魔法で鍵を掛けるのは忘れない。
『もうすぐです』
近づくにつれて戦闘をしていると思われる音が響いてきた。
「くそっ!なんでこんなとこにバレットラビットが!」
「無駄口叩くな!」
どうやら声から男の人かな?
「……アイスニードル!!」
お、どうやら魔法を使う人がいるみたい。声からしてこの人は女の人みたい。反応からしてあと1人いるみたいだけど声が聞こえない。
「…着いた…」
私は草陰から覗く。するとだいぶバレットラビットは消耗してるみたいだけど、それは人のほうも同じらしい。それにあと1人足りないと思ったらどうやらやられて寝ているみたい。まだ死んではないね。
「どうしようか…」
『バレットラビットの消耗率は68パーセント、人の消耗率は85パーセントです』
「…それってだいぶやばい状況じゃない?」
『はい。おそらくこのままでは』
ハクはそれ以上言わなかったけど…このままじゃやられる。確実に。
「…私になんとかできる?」
『マリーナ様の目的がバレットラビットを倒すことならば、無論です』
「はぁ…やるしかない、か」
別に自分の力を過信してる訳じゃない。私だってこれくらいの敵なら倒せるって大体分かるから。
…私が心配しているのはその後のこと。だってこんな森のなかに1人でいること自体おかしいもの。
「グハァ!」
「おい!」
そうこうしている間にも危険な状態になっていく。
「ああ!もう!」
私は走り出た。
「…っ!おい、危ないぞ!」
そんな男の人の声が聞こえるけど無視!私は無限収納庫から、刀を取り出した。これは採掘した鉄鉱石で作った。ハクの知識をフル活用してね。。それでも刃紋が上手く出来なくて試作品止まりだけど。
私は魔力を足に集め、一気に踏み込む。
キィィィィ!
バレットラビットが後ろ飛びで避けるけど、そんなの予想済み。私はその分まで力を入れていた。
!ギィィ!!
慌てたってもう遅い。私は魔力で空中に足場を創り、首まで登った。そして刀を横薙ぎに振るう。
ザシュッ!
骨はあったはずだが、刀に纏わせた風魔法が切り裂いた。
「ふぅぅー…」
私は息を吐いて着地した。そして男の人達の方に向き直った。
「大丈夫?」
「あ、ああ…おまえさん、すげぇな…」
大丈夫だと言ってるけど、消耗は激しい。所々流血している。
「…来て」
私は自分の洞穴に案内することにした。
「え?」
返事なんて待たない。付いてこないなら別にいい。
「リーダー。とりあえず…」
「あ、ああ…」
なるほど。1番最後まで戦っていた人がリーダーだったのね。
私は振り向くことなく、洞穴まで歩いた。