エピローグ☆百合子と彼
エピローグ☆百合子と彼
「よく会いますね?」
彼は喫茶店で百合子と何度も遭遇した。
「ええまあ」
百合子は毎日通ってるのだ。
「またルビーの指輪見せてください」
彼はルビーの指輪にみとれている百合子をじっと見ていた。
「もしよかったら、僕とつきあってくれませんか?」
「えっ?」
百合子は本当にびっくりして、彼を初めて真正面から見つめた。
「僕は船乗りで、あんまり会う機会がないかもしれないけれど、これも何かの縁です。もし僕と結婚してくれるなら、この指輪はあなたに差し上げましょう」
「ええっ?」
私、指輪に目がくらんでこの人と結婚するのかしら?百合子はどうしようかと思った。
そして、本当に二人は結ばれることになった。
幸せな生活が続き、彼は久しぶりにしばらく自宅で百合子と過ごしていた。
「今日の夕飯は何かな?」
「あっ!まだ用意していなかったわ!」
百合子はいそいそと割烹着を着て、ポケットにルビーの指輪を入れた。
料理中の百合子の背後から、彼は尋ねた。
「僕と結婚したのは指輪に目がくらんで?」
「そうかもしれない」
その言葉に彼は百合子を殺したい衝動に駆られた。
「でもね、お腹に赤ちゃんができたのよ!」
「えっ?本当かい」
彼は毒気を抜かれて、まじまじと百合子を見た。
「あなたと結婚して、本当に幸せだわ。この子が生まれたら指輪を形見にあげようとおもってるの」
「名前はどうしようか?」
「男の子だったらよしお。女の子だったらよしこ」
「もう決めてるの?」
「そうよ」
百合子はくすくす笑って言った。彼は指輪だけが自分たちを繋いでいると思っていたのをあらためた。どうだい?ちゃんと、僕らの間には愛が育まれているじゃないか!きっと孫子の代まで続いていくだろう。彼はそう信じて疑わなかった。
「宝石は時として人心を惑わすけれど、自分をしっかり持ってさえいれば、宝石の精霊を御することはたやすいだろう」
デルムントは過去と未来を行き来しながらそう思った。
「あかりちゃん!」
「だあれ?」
「デルムントっていうんだ」
あかりは高校生だった。
「君のお母さんが石の力に負けて手放した指輪を君に届けに来たよ」
「えー?」
あかりは全く知らされていなかったルビーの指輪をデルムントから受け取った。
「詳しくはお母さんじゃなくて、叔母さんの美咲さんに聞いてごらん」
「美咲さん?」
「そう。指輪にまつわる物語が聞けるはずだから」
あかりはルビーの指輪に目がくらくらした。顔を上げると、デルムントはもういなかった。
宝石より物語に興味ができたらしく、あかりは向こうへ駆けて行った。




