プロローグ☆宝石に魅せられた少女
プロローグ☆宝石に魅せられた少女
寺尾聰のルビーの指輪が店内にながれていた。
誕生石ならルビー。
「ルビーかあ」
高校生の百合子はほうっとため息をついた。7月生まれの彼女の誕生石はルビーだ。
「失礼。相席をお願いしてもいいかな?」
「えっ。ええ、どうぞ」
アイスコーヒーのグラスが汗をかいていた。氷が溶けてしまう前に飲まないとせっかくの味が台無しだ。
百合子は、声をかけてきて正面席に座った男を一瞥した。ふと、男の右手薬指に視線がくぎ付けになる。
「すごい!それ本物ですか?」
プラチナの台座に紅い宝石。一体何カラットあるんだろう?
「ああ。ピジョンブラッドのルビーだよ」
ピジョンブラッド=鳩の血
ルビーの中でも最高級の色とされている。
「うわあ、眼福だわ。本物初めて見ました」
男は素知らぬ顔でサイフォンで淹れるコーヒーを注文した。
失礼だとは思いつつも指輪にしか目が行かなかった。気づくと店を出ていった男の顔がどんな顔か覚えていない有様だった。
「ここの喫茶店に来てたらまた会うかも」
そう思って身震いした。男に、ではなくて、ルビーの指輪に、だ!
百合子は宝石に魅せられてしまった。




