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誤解は、解いたはずだった。人形を社に奉納して、ハッピーエンドかと思われたが、未だ2人のお通夜ムードは、変わらないままだ。そして、唐突に始まる寸劇。
「レイ、死んじゃ、やだぁ。うぇぇん。」
「ん。マリナ、今までありがとう。うぇぇん。」
涙を流しながら抱き合う2人。真剣すぎて、声をかけられるような雰囲気では無い。例え、かけたとしても、聞いてもらえないだろう。
「あの、2人とも?」
「ゼル、今は、2人にして。ひっぐぅ。」
いちおう声はかけてみた。ほらな、駄目だったろう。嫌な予感が止まらない。それは、もう滝のように汗が流れる。コイツら、また何か、斜め上の勘違いをしてないか。杞憂であれば良いのにと、オロオロする事しか出来る事は残されていない。
良く分からない寸劇が、終わり、二人は頷き、離れた。
そして、レイは、地面に何かを描き始める。この世界に転移した時に見た描きかけの魔法陣に似ている。
「あの、レイ?お絵描きしてないで、家に帰ろうか?」
「ん。ゼル、邪魔しないで。」
「そうだよー。ゼルさん。」
え?おじさんが悪いの。理由は分からないが、そうなのだろう。じっと無言のまま、待っていると、レイは、魔法陣が完成間際の所で手を止めて立ち上がった。
レイは、涙を拭き、悲愴な覚悟を漂わせ鎮痛な顔をする。そして、万感の思いを込めて、ゆっくりと自殺の決意表明をした。
「さよなら、私のゼル。いえ、ラプラス。ありがとう、契約は果たされた。私、対価の命を支払う。だけど、このままでは魔法陣が不完全だったので、逆に貴方が消滅するのが分かってる。んん、消滅なんてさせない。だから、今日は契約者の最後の努めとして、魔法陣を完成させる。」
それは、一方的に告げられる理解不能な盛大な勘違い。
は?何ひとつ、言ってる意味が分からないんですが!確かに、悪魔プレイはした。でも、あのガバガバな悪魔設定を、まさか、信じていたのか。2人揃って純粋すぎかよ。
「い、いや、おじさんは悪魔じゃないからね?良く聞いて、命とか要らないし。まずは、ゆーっくりと、落ち着いて話し合おう。あと、魔法陣は、嫌な予感がするから、消して欲しいかな。」
「もう、いいの。最後までゼルでいてくれて、ありがとう。」
話を聞かない女、レイは、サークルの最後の部分を、泣きながら、無理して笑って杖で、閉じた。制止が間に合わなかったゼルの顔が引きつる。
サークルが、完成。
嫌な予感は的中した。術式が、煌めく燐光を帯びて輝き出し、何も書かれていない部分は、どす黒い闇に浸食されていく。
そして、大召喚に応じて、本物の上級悪魔ラプレスが、魔界の奥底から現れた。
マジか、本物の悪魔が来ちゃった。
高速飛行可能な強靭な羽、ミスリルソードも通さない分厚い毛皮、ラピュラスとは、似ても似つかぬ死の臭いが染み付いた凶悪な地獄の死者。
真なる邪悪が、顕現した。その悪魔は、地底の奥底より低い声で、喋る。
「クハハ、余の名は、凶悪なる上級悪魔、ラプレス。余に数多の魂を捧げよ。さすれば望む対価を与えよう。」
錬金術師にて、黒魔術師の最終到達点である上級悪魔の大召喚を成し遂げた規格外の女、それがレイ。まさに、天才にして天災。




