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漂流

『とははやなたが見る空に 春の月の(かすみ)かすまぬ影はありやと』


第二章二十  「消えゆくもの」


「エミリー、会いたかったわ」


「いせ、アメリカへようこそ!! サンフランシスコを案内してあげるわね」

サンフランシスコに到着するとエミリーはすぐに伊勢の元へ駆け寄って来た。



伊勢は、サンフランシスコ滞在中、エミリーの家でお世話になることになっていた。


今回の渡航団は男ばかりなので、何かと気を使うことも多い。

前大使であるエミリーの父が仕事の仲介役として関与していることもあり、伊勢の滞在は好都合である。


信玄だけは、ちょっぴり残念そうな素振りを見せたが、この旅を終え、日本へ帰国後には結婚も決まっている。

サンフランシスコ滞在も仕事の打ち合わせや観光などで忙しくあっという間に過ぎるだろう。


「エミリー、イセをたのむな」


「しんぱい、いらないよ。しごとのときは、私もアメリカ側の通訳の一人として一緒に参加することになってるから一緒だし、イセとは、たくさんはなしたいことある・・・おんなどうしで楽しく過ごすよ」

信玄の言葉にエミリーが笑顔で答える。




エミリーと伊勢は、その日からずっと一緒に行動することになる。



滞在中はあっという間に時間が過ぎていく。

ある日、エミリーは伊勢をサンフランシスコの高台に連れて来た。


「伊勢、みて。あそこに小さな島が見えるでしょう? アルカトラズっていう小さな島よ。南北戦争の時には86門もの大砲が島に作られたわ。今は刑務所になってる。あの島はもともとインディアンのものだったんだけど、彼らはあの島のことを呪われた島って言って恐れていたの。なぜだかわかる? あのあたりの海は海流が早くて海水温がとても低いの。危険なサメまで泳いでるしね。だから、あの島は呪われた島なの」


「サメも泳いでるんだ。それじゃ、あそこから泳いでサンフランシスコに着くのは無理だね」

二人はサンフランシスコの海を眺めながら語り合う。


「いせ、しんげんとほんとうにけっこんするの?」


エミリーの突然の問いに慌てる伊勢


「伊勢の顔は、しあわせそうじゃないから、ちょっと、きになるね」


「そんなことないよ。信玄様は優しいし、私のことを大切にしてくれてるよ」


「いせ、アメリカではみんな好きな人と結婚するんだよ。恋人同士はみんなニコニコしてる。愛し合ってるのが伝わって来る。いせは心から笑ってないよ」


「エミリー・・・」


「イセ、私と約束して。私たち、絶対にこうかいしない人生をいきるって」


「そうね。約束しましょう。次はいつ会えるかわからないんですものね。次に会える時まで、エミリーが一生懸命、頑張って生きてるって思えば、私も頑張れるわ」


「じゃ、絶対に約束だよ。イセ」


二人は夕日に映る海を見つめながら約束を交わす。






ーサンフランシスコの病室ー


絶は、アメリカでの手術を無事に終え、日本への帰国まで療養生活を強いられていた。

厳しいリハビリで辛い思いをしていたものの、足は順調に回復している。


日本からは最新医療を習うため、謙信とともに若い医師も付いて来ていた。

若い医師は、手術方法だけでなく、最新式リハビリの仕方などを習い、日本で実践することとなっている。


「絶さん、よく頑張りましたね。日本に帰ったら早く一人で歩けるように私がリハビリを施術しますね」


なかなかハンサムなこの青年医師は、気分屋の絶に気を使いながら声をかける。

絶もまんざらではない顔をしている。


3人は、アメリカの医師より次の日本行きの船で帰国する許可をもらった。


夕日が静かに西の空に沈み、月が微かな光を煌めかせている。




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