表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/59

情熱

第1章八 「甘いささやき」


「馬を用意しろ! 」


謙信は、千葉 采女(うねめ)に手紙を送っていた。


〜伊勢姫の心配はいらない。客人として丁重に扱っている。伊勢は馬が好きだと聞いている。伊勢の愛馬である天馬をこちらに送ってほしい。親元を離れ、気が滅入っているようなので伊勢に送りたい〜


伊勢の父・千葉采女から届いた真っ白い天馬と謙信の愛馬・せん)が厩舎から城門へ連れてこられていた。



「伊勢・・伊勢はおるか」


ふくが慌てて謙信殿に返答する。


「伊勢姫様はご気分が悪くお休み中でございます」



謙信は気にせず、伊勢の部屋へ入って行く。


香を焚いていた伊勢は驚きを隠せない。



「伊勢・・気分はどうだ? 顔色は悪くないな。伊勢に見せたいものがある。歩けるか?」


「・・謙信様? どうなされたのですか?  伊勢は、病気などではございません」


「そうであったか・・それは良かった。じゃ、俺についてこい」



謙信は、ふくをちらっと睨み有無をも言わせず、伊勢の手を取った。




謙信にしっかりと手をつながれ城門まで連れてこられた時・・



「ヒヒーン」


馬の嘶きが聞こえた。



「天馬・・天馬じゃないの。どうしてお前がここにいるの?」


「俺が引き取ったのだ。この馬は良い面構えをしている」


「こちらの馬は・・?」


「これは、俺の馬だ」


天馬と仲良くじゃれあっている馬はクリーム色をしており、陽に輝いて黄金色にもみえる。



「もう・・お前たちは、仲良くなったのか」

謙信が馬たちを見て笑う。


「可愛い・・・。お口のまわりだけ黒いのですね」うふふっ。


「この馬の名はせん。 どうだ・・これから俺が城下を案内してやろう」



謙信は、伊勢を抱き上げ天馬に乗せる。


「そうか・・着物では一人で乗ることはできないな」



謙信は、伊勢を胸に抱きかかえるように天馬に乗り込んだ。



「・・・謙信様」



「城下までの我慢だ。行くぞ、天馬!」



走り出す天馬のたてがみが、太陽の光でキラキラと輝いている。


謙信は、左手で手綱を握り、右手は伊勢をしっかり抱えている。

伊勢は頬を染めて、謙信を見つめている。



伊勢の美しい髪が揺れ・・


「伊勢・・俺が怖いか?」


「・・・いいえ。怖くなどありません」


「そうか」


たったそれだけの短い言葉だけで、二人の心は温かくなっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ