挽回
第二章十六 「後悔の心」
「ただいま」
「おかえりなさいませ。お嬢様」
「ふく・・今日ね・・フルーツパフェを食べてきたのよ。美味しかったわよ」
「可否茶館に行かれたのですか」
「そうよ。信玄様が私と幸を連れて行ったくれたの」
「へ〜っ。信玄様がですか」
「あっ、誤解しないでね。信玄様は女学校に講師としていらっしゃったの。偶然、お昼の時一緒になって、ひょんなことからフルーツパフェをご馳走してくれることになっただけよ・・・・」
「そうでしたか。それはよろしゅうございましたね」
ふくは、ホッとした気持ちになる。信玄様ならこのお転婆なお嬢様を暖かく包みこむ包容力がある。
「あっ・・ふく。今日も謙信様からお父様への手紙は届いた?」
「はい、届きましたよ」
「そう、よかったわ。ついでにと言ってはなんだけど・・私宛には手紙なんか届いていないわよね」
「・・・届いていませんよ」
謙信様からお父様宛に手紙が来るってことは、まだ私の事を好きでいてくれてるってこと・・。謙信様は志乃夫人と逢い引きなんかじゃないよね。大丈夫だよ・・・謙信様に限ってそんなことするわけない。心に言い聞かせる。
「そういえば・・今日料理の時間にあんぱんを作ったのだけど、直胤は帰ってきてる」
「直胤様なら、中庭で・・・いらっし・・」
「わかったわ」
ふくの言葉を最後まで聞かずに中庭に走り出して行った伊勢。
中庭で、政宗様と一緒に剣の練習をしていらっしゃいますよ・・とお伝えしたかったのに。
ふくがつぶやいても走り去る伊勢には聞こえない。
「直胤、約束のあんぱんよ〜」
「姉上。これが・・あんぱんですか」
「伊勢、久しぶりだな」
伊勢が差し出したあんぱんをさっと奪う政宗。
あの時のキスなど忘れてしまったかのように振る舞い、あんぱんを口に頬張る。
「形は悪いが、味はなかなか美味いぞ、伊勢」
「政宗様、姉上は料理や裁縫が不得意なんですよ」
「そうなのか。不得意は少しずつ克服していけば良い。形が悪くても食えればいい。このあんぱんだって食えるぞ」
「あの〜、政宗様・・・それは姉上を褒めてるんでしょうか?それとも貶しているいるのでしょうか?」
「褒めているに決まっている。俺は伊勢が作ったものならなんでも食うぞ」
「政宗様・・姉上の料理をですか・・・それでは政宗様の命がいくつあっても足りなくなりますよ」
「直胤、ちょっと失礼ね」
ふくれっ面をする伊勢をみて、政宗が笑い出す。
「伊勢。この前は悪かったな。お詫びに、お前の料理に俺の命を差し出してもいいぞ」
「政宗様・・もうこの前のことはとっくに忘れました。それに料理も食べて頂かなくて結構です。食べなければ命を捧げていただかなくてもよろしいので!」
「姉上、政宗様。この前の舞踊会で何かあったのですか」
真っ赤な顔で
「直胤、あなたには関係ありません」
「伊勢、この前のお詫びがしたい。フルーツバフェを食べに行かないか」
「えっと・・実は今日・・信玄様に連れて行ってもらい食べてきました」
「なんだと」
「学校に講師として来ていた信玄様が私と友人の幸を可否茶館に連れて行ってくれ、そこでフルーツパフェを食べました」
「信玄は女学校の講演を引き受けたのか」
「はい。とても素敵なお話でしたよ」
「伊勢・・フルーツパフェはやめだ。来週のお祭りで出る、夜店を見に行こう。勿論、直胤も一緒だ。確か、伊勢は女だから夜のお祭りは危ないと禁止されていたのだよな。俺からお前の親に話をしてやろう。直胤、お前も絶対、行きたいよな」
直胤を睨みつける
「・・・えっと・・行きたいです」
「じゃ、決まったな。男二人がつきそうなら許可してくれるだろう」
「あの・・私は行きたいと言っていませんが・・・」
「伊勢、美味しいものもいっぱいあるし、金魚すくいもできるぞ」
「金魚すくい・・一度でいいからやってみたかったんじゃなかったのですか・・姉上」
「そうだけど・・・」
「決まりだ。じゃ、今からお父上に話して許可をもらってこよう」
「でも・・・」
「仕方がない。そんなに心配なら紅華も権太も進之介も誘って行こう。それなら伊勢も安心だろう」
「はい。それなら楽しみになります」
紅華も一緒は気にくわないが、前回のことで伊勢は俺の事をかなり警戒しているから仕方がない。紅華は権太に任せよう。まずは、汚名挽回からだな。




