清流
第二章 四 「青天の霹靂」
「伊勢・・遅いわよ。待ってたのよ」
紅華が屋敷の玄関先で待っていた。
「紅華さん・・綺麗ですね。いつか、舞踊会にもご一緒したいものです」
権太お兄様が、うっとりした顔で紅華を褒めている。
「あら。権太さんありがとう。そうね・・いつかご一緒できるといいわね」
権太は、伊勢を下ろし・・立ち去る。
「伊勢・・権太さんはとても良い人なんだけど・・小さい時から知ってるので・・お兄さんみたいにしか思えないわ。伊勢だって、進之介お兄様に対して同じでしょ」
「そうね。・・うふふ」
権太兄さんは、紅華が大好きみたいだけど・・紅華に脈はなさそうね。かわいそうなお兄様・・
「あら・・伊勢のドレス・・おとなしいデザインね。それに、ちょっと古い感じね。あっ・・・見て・・私のドレス・真っ赤で素敵でしょ。今はやりのデザインよ。政宗様はオシャレだから私もお父様に頼んで奮発してもらったの」
「紅華。素敵だわ。紅華にとても似合ってるわ」
「ありがとう。伊勢は地味だけど、どうせ私の付き添いだから・・それでいいわ。まっ・・それなりに似合ってるし・・」
「紅華ったら・・ふくが一生懸命に作ったドレスなのよ。私は気に入ってるわ」
「もっ・・・ドレスのことはどうでもいいわ。もうすぐ、政宗様が迎えに来るわ。進之介お兄様と一緒に中で待ちましょう」
二人が中に入ると、紅華の兄・進之介が待っていた。
進之介は伊勢を見て・・目を細める。ドレスの派手さはないが、美しい伊勢にとても似合っている。いや・・ドレスだけが派手な紅華より目を引いてしまう真の美しさがある。
「・・・・伊勢さん。綺麗だ」
「お兄様・・・伊勢のドレスなんて地味じゃないの。私のドレスの方が流行のものなのよ」
「おぅ、紅華。もちろんお前も綺麗だ・・」
「お兄様・・伊勢は私の引き立て役なんだから・・」
(まったく・・お兄様はいつだって・・伊勢にデレデレなんだから・・困ったものね)
・・・ドン。
その時、政宗がドアを開け、入って来る。
「政宗様・・・。お迎えに来てくれたのね。・・・紅華、今日は楽しみにしてましたのよ」
「可愛らしいお二人とご一緒できるのは、とても光栄ですよ」
「紅華のドレス・・素敵でしょ?」
「そうだね。華やかで君にぴったりだ。そして・・」
政宗は、伊勢に目線を移す・・
「・・・とても綺麗だ」
紅華は、政宗の言葉を遮り・・
「政宗様・・伊勢のことはいいのよ・・・さぁ・・舞踊会へ行きましよう」
政宗は、紅華に腕を組まれて、連れて行かれる。
進之介と伊勢はそのあとに続いていく。
「紅華には・・困ったものだな。伊勢さん・・さぁ、行きましょう」
進之介が伊勢をエスコートする。
「・・はい」
四人は政宗の馬車に乗り込み鹿鳴館へと向かう。




