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馬子にも衣装

第二章 三 「薄黄色」



舞踊会当日・・

気の進まない伊勢ではあったが・・・


ふくはニコニコして支度を手伝っている。


「お嬢様、とてもお綺麗ですよ。いつか・・お転婆なお嬢様でも着るチャンスがあるかもしれないと、ふくが作っておいたこのドレス。ううっ。お美しい。じっとしているとぜったいお転婆とはわかりませんよ。お嬢様、おしとやかにしているのですよ」


「ふく・・・ドレスありがとう。わかったわ・・今日だけはおしとやかにしているわ」




「・・・奥様・・伊勢姫様の支度が出来上がりました」


「まぁ〜。伊勢・・とても綺麗ですよ」


「姉上・・姉上のドレス姿を見られるとは・・いつもは袴姿なので・・」

戸惑う・・弟の直胤・・


「おう。伊勢・・馬子にも衣装とはよく言ったものだ」


「お父さま・・それはひどいわ」


「伊勢・・・そのようなヒラヒラした西洋の着物など着ずに、いつもの姿の方がお前らしくて可愛いぞ」


「おじいさま。私もそう思いますが、今日は紅華と進之介様のお供で鹿鳴館に行かなくてならないのです」


「まっ・・伊勢。綺麗ですよ。さすがに私の孫ですね」


「おばあさま。ありがとう」




ふくが手作りしたドレスは、最先端で流行(はやり)のものとはいえなかったが、薄黄色でシックなデザイン。

伊勢には、とても似合っている。


「伊勢・・これをつけてお行きなさい」


祖母のしまが、伊勢に髪飾りを渡す。


「おばあさま。これは・・・」


「これは、私が大切にしていたものです。あなたにぴったりですよ」




黄色い花のティアラのような髪飾りはドレスとマッチしている。



「おばあさま・・ありがとう。本当は、気がすすまなかったこの鹿鳴館の舞踊会だったのですが、この可愛い髪飾りなら気持ちも明るくなります」


「伊勢・・・この髪飾りはね・・私の想い出の髪飾りなのよ。ずっと大切に・・想い出とともに箪笥の片隅にしまっておいたもの・・・。あなたにとても似合っているわ。人生は何があるかわからないものです。あなたは若いのですから、一瞬一瞬を楽しまなければいけませんよ」


伊勢の耳元で呟く・・


「おばあさま・・・ありがとう」



「さぁ。伊勢・・そろそろ行くぞ」

兄の賢太は、紅華の屋敷まで送ってくれることになっている。


紅華のことが気になる賢太ではあったが・・・紅華は政宗に夢中で賢太など眼中にない。



馬車に乗り込み、紅華の屋敷まで走らせる。





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