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001 500年後の世界

「そこ! 魔力が乱れてるぞ! 集中しろ!」


「は、はい! マレウス先生!」


 俺は20人ほどの生徒が居る教室の中で、怒号を飛ばす。

 

 生徒たちは自らの魔力で、目の前にある小石を浮かせていた。

 これは魔力を上手くコントロールするための、もっとも効率のいい訓練方法である。

 

「魔法は日々の積み重ねから! 誰一人手を抜かないように!」

 

『は、はい!』


 訓練に集中する生徒たちを見ながら、俺は満足気に頷く。

 

 いかんいかん、ここで満足してはいけない。


 すべては、この現代の魔術が弱すぎるという状況を打開するため。

 若い人間たちから特別な訓練を施し、立派な魔術師へと育て上げるためだ。


 この生徒たちから、いずれ俺はこの時代を担う最強の魔術師を生み出してみせよう。


 他ならぬ、リッチである俺の手によって。


 魔術の王である魔王様と、それを忌むべき存在とした人間たちの戦争は、長きに渡った。

 お互いがお互いの総力を持って魔術をぶつけ合い、戦況は拮抗。

 しかし、どんなものにも終わりは来る。


『私は最強の魔術を生みだしたかった……』


 そう言い残し、俺の目の前で魔王様は死んだ。

 

 残された家臣である俺は、魔王様亡き今何をすべきかを考えた。

 魔王様の無念を果たす、それには力も時間も足りない。

 

 考えた末、俺は自らで編み出した禁断の不死の術で、まず永遠の命を手に入れた。

 そうして魔王軍の残党狩りに巻き込まれぬよう、自分を地下深くで眠らせる。

 

 数十年、数百年後、俺が目覚めたときには、魔術はさらなる発展を遂げていることだろう。

 進化した技術を使い、俺は魔王様の野望であった最強の魔術を生み出してみせる。


 そう決意して眠りについたのだが――――。


 眠りから覚め、俺は土の中から這い出した。

 不死、つまりはアンデットとなった俺には、陽の光が少々堪える。

 辺りには魔王城らしきものはなく、更地になってしまったようだ。

 まだぎこちない身体を無理やり動かし、少し離れた木の陰に移動する。自分の魔力によって、肉体が維持できているのが救いか……骨の身体では些か不憫なことも多い。

 

 術の影響で真っ白になってしまった身体を見下ろしながら、俺は少し息を吸い込んだ。


「……少し魔力の濃度が薄いか」


 空中に漂う魔力の量が、俺の生きていた時代よりも薄いようだ。

 まあ問題はない。

 必要なのは技術力と、新たな発想だけだ。


「まずは時代の確認だな……」


 凝り固まった身体もほぐれてきた。

 日差しにも慣れてきている。

 そろそろ移動をしよう。


 周囲の魔力を探りながら、人が多い方向へと歩いて行くと、村のようなものを発見した。魔王様や俺も含めて人間族なため、リッチになったとは言え警戒などはされない。


 旅人として村の中に入って話を聞くと、今の時代は魔王様が亡くなられてから500年後の世界だと分かった。

 

 500年、それだけの年月があれば、きっと最新鋭の魔術が世に蔓延っているに違いない。


 しかし、現実はそうではなかった。


 俺がすべてを知ったのは、魔術都市と名高い大きな街に来たときのこと。

 魔術の現状を知るために、魔術学院という若者に魔術を教える機関を偵察していると、ありえない光景が広がっていた。


 500年前にあった下級、中級、上級、最上級、国宝級という魔術のランクの中で、上級程度の魔術を、この学院では最上級として教えていたのだ。

 下級の魔術に関しては、中級どころか上級になりかねない物すらある。

 

 ありえない……何ということだ。

 魔術の水準があまりにも下がりすぎている。

 念の為ありとあらゆる場所での水準を調査したが、どこも対して変わらない。


 これでは最強の魔術など生み出せないではないか。


 途方に暮れて、うなだれている俺に、一つの名案が浮かび上がってきた。


「そうだ、俺が魔術の水準を上げればいい」


 幸いにも、俺には無限の時間がある。

 やるしかない、どんなに時間をかけてでも。


 そうと決まれば、話は早かった。

 

 俺はすぐさま履歴書という就職に必要な書類を書き上げ、魔術学院へと向かった。

 正面から乗り込み、校長室へ飛び込む。

 唖然としている校長に対して、俺はなりふり構わず履歴書を叩きつけていた。


 これが、俺の教師としての第一歩である。

 


今日は三話投稿します。

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