序曲〜記憶〜
全ての流れは結末へと…
昔、一つの丘がありました。
丘は時には山ほどの高さで、時には道と変わらない高さでそこに当たり前のようにありました。
この空間と時間と因果の交わる丘を時の丘と呼びました。
その丘を中心に二人の天使が闘っていたのです。
己が正義を信じて…
最後の闘いのあと片方の天使は時の丘の頂上で社になりもう片方の天使をその社に封じこめられました。
片方の天使が社になる時に時の丘を因果、他次元間、世界軸、時間軸…全てから切り離し孤立させられました。
どこの世界にも存在をしなくなった時の丘で囚われた天使は目を覚ましました。
社の中からどこまでも続く草原を眺めていました。
過去も未来も他世界も時間もない空間で天使は思いをはせていました。
長い年月生きた長い長い記憶…
その長い記憶には色々な事がありました。
どれ一つをとっても美しい記憶です。
だから天使は思い出していました。
ゆっくりと一つ一つを楽しみながら色々な春夏秋冬の記憶を思い出していました。
やれる事の無いこの場所で唯一の娯楽だからです。
そして記憶はひとつの四季にたどり着きました。
春、それは美しいの少女の心に胸を打たれた記憶…
夏、それはバトンがどうなったか確かめた記憶…
秋、それは少女に選択を与えた記憶…
冬、それはもう片方の天使との闘いの記憶…
全てが懐かしく、全てが楽しかった日々…
いつか…
きっと再び…
天使は草原の先を見つめていました。
願いが叶うと信じて…
全ての流れは合わさりました。
そして一本の太い川になり流れ始めました。
しかしそれもまた一つの支流でしか無いのです。