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Pure maple

秋です。

秋は美味しいものがいっぱい☆

「私ね。この季節が好き!春や夏や冬よりもこの季節が好き」

紅葉により綺麗にデコレーションされた道を両手を広げながら彼女はこちらを見て言った。

その声がこの季節が到来した事の嬉しさを…

その笑みが今ここに居ることの幸せを教えてくれた。

「ねぇ?君はどう?」

「僕もだよ」

「そう」

彼女は更に満面の笑みを浮かべると踊るように早朝の道を歩いた。

この生活が当たり前に成ったのは今年の春だった。

去年の冬に彼女がお隣に引っ越してきたのだ。

彼女は活発で積極的で誰にでも分け隔てなく接し好かれていた。

対照的に僕は誰かと関わるのが…一緒にいるのが嫌だった。

そんな僕ですら彼女に関わらせられてから僅か三ヶ月で早朝の散歩をさせられていた。

「…でも変わったよね?」

「何が?」

「君が」

「僕が?」

「そう…だって君、最初の頃私に冷たかったじゃない」

「そうだっけ?…それよりそんなに回ると危ないよ」

くるくると回りながら話している彼女に僕は誤魔化すために注意をした。

別に忘れている訳じゃない…ただその頃の僕は人に関わりたくなかっただけなんだ。

その結果、誰にでも話をしようとする彼女を傷付けたのは重々承知していた。

だから掘り返したくなかった。

この楽しい雰囲気が罪悪感で修復不可能まで潰れてしまいそうだったから…

「どうしたの?」

彼女の声により意識が思考の海から引き上げられて視角が元に戻るとそこに彼女の顔が近くにあった。

「いや別に…」

僕は早くなる鼓動を抑えいたって冷静を装った。

「なら…いいけど」

「ほら…早く行こ。学校に遅れるよ?」

彼女の心配そうな顔を見るのが嫌で僕は先を急かした。

「う、うん…分かった♪行こ!」

彼女はまた踊るように歩き出した。

永遠に平和なんだと思っていた。

明日が在ることがあまりにも当たり前すぎて僕たちは忘れていた。

そこにある幸せはいつかは無くなることを…

「私…選ばれちゃった」

ある日、彼女からその一言を玄関の戸口で聞いた時僕はどんな顔をしていただろう?

彼女の今までに見たことの無い儚い姿を僕はどんな表情をしていたのだろう?

「何に?」

分かりきっている事を聞く僕が今にして思えば滑稽だった。

「終焉を防ぐ神子に…」

いったい誰が最初に気付いたのか分からないだが誰もが疑うなか悪魔は地上に現れ絶対の力を魅せ付けた。

どこの軍も悪魔の前では無力でありそのあまりの無力さに人々は非現実だと一時的に認識をしていた。

だがそれが現実であると世界各国の大半を失い初めて認識をした。

そして悪魔は初めて人間に言葉を伝えた。

「贄を寄越せ」とただそれだけを全国に知らせたのだ。

そして彼女が選ばれた。

僕は絶句するしか出来なかった。

しかし彼女は僕のために微笑むといつものように言った。

「散歩に行こ」

その言葉が表情がより一層僕の知っている彼女から遠くて胸の底から悲しみが溢れてきそうになった。

「うん…」

僕は短く頷くと彼女と一緒にいつもの道へ向かった。

紅葉のトンネルの半ばまで彼女は一頻り思い出話をしていた。

それに対して僕は適切な事が言えず短く「うん…」としか言えなかった。

長く言葉を紡げばきっと僕は泣いてしまうと思ったからだ。

「…結局一年も一緒にいられなかったね」

彼女のその一言で僕は限界を越えて誰に言うでもなく叫んだ。

「なんで…なんで僕じゃないんだよ」

彼女はそんな僕を目を見開いて見つめたが直ぐに優しい笑みを浮かべて「ありがとう」と言いその場から紅葉と舗装された道ごと消えた。

それから悪魔の目撃例はなくなり悪魔からの攻撃も無くなった。

しだいに皆は悪魔の存在を否定し自然災害と隕石落下を原因にして非日常から日常に戻っていった。

僕は彼女が居なくなってから泣き続け後悔をしていた。

涙はやがて魂の大半と一緒に渇れ果てた。

それから何日かしたある日、黒服の男性が数名会いに来て彼女からの手紙と彼女が愛用していたペンダントを渡して帰っていった。

全員が部屋から居なくなり静かになった部屋で僕は手紙を広げ渇れ果てたはずの涙を流しペンダントを握り締めた。

「だから…関わりたくないんだ」

部屋の中でうめくように呟く僕に彼女が囁いたような気がする。

ただ一言

「前を向いて生きて」と…


この物語には二種類の終わり方があるんです。

ひとつがコレ

少女が何も選ばなかった結末

もうひとつが

少女が少年だけを選んだアダムとイヴの結末

あえてコチラを選びました。

アナタは最後の時が数時間しかない時どうしますか?

作者は寝ます。えぇ寝るの大好きですから(笑)

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