表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

十三日目

 これは、カウンセリングを始めて十三日目の話だ。


 今日のカウンセリングを終えレポートを書いていた。


 実のところ僕の仕事は、彼女とカウンセリングをしている時間よりも、レポートを書く時間や、カウンセリングの流れについての会議をしている時間の方が圧倒的に長い。


 それだけ慎重な実験なんだ。


「調子はどうかね?」


 教授から声をかけられた。


「順調、だとおもいます」


 僕は、パソコンから手をはなし、教授に応答する。


「そうか」


 僕と教授はそれなりに会話をするけれど、事務的なものばかりで、このような雑談に近い会話は珍しい。


「彼女も、君のカウンセリングが始まってから、実験に対して幾分か前向きになった。話し相手を作るリスクは大きかったが、リスクに見合った効果は出ているようだ。君はよくやってくれている」


 教授が人を労うなんてさらに珍しい。


 途方もない実験に突然身を置くこととなった僕への教授なりの気遣いなのかもしれない。


「……光栄です」


 僕は、彼女といるときは彼女を人として扱い、教授といるときは彼女を実験体として扱っている。


 まるで本音と建前。いや、建前と建前か。


 僕の本当の意思はどこにあるのだろうか?


 人間はとうの昔に社会の奴隷に成り下がっている。


 言いたいことも言えず、やりたいこともできない。


 自分と自分が分離していくような感覚。


 ある意味では、僕も彼女と同じなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ