白黒(モノクロ)な私の世界
あの時、貴方に出逢うまでは。
私の世界は、白黒の世界だった。
灰色の空。灰色の木。灰色の人々。
ただ濃淡のついた、白黒の世界が広がる。
いや、本当は知っていた。
蒼色の空。翠色の木。血の通った肌色の人々。
知っていたんだ。
この世界には、“色”が溢れていると。
知っていて、それでも見えないフリをし続けた。
あの、鮮やかな色が怖かった。
もし、見てしまえば、何の色も持たない私は、
あの鮮やかな色に溶けて、消えてしまうのだと。
だから私は、白黒の世界を見た。
何の色も持たない私は、それでも灰色で形づくられたから。
白黒の世界だけが、私を形づくっていた。
それでも。
貴方に出逢って、私の世界は変わった。
貴方だけが、私の白黒の世界で、
鮮やかな色を纏っていた。
貴方が私を見て、話をする度に。
色を持たない私に、貴方が色を塗っていく。
貴方に笑いかけられただけで、私は鮮やかな色を纏う。
貴方がいるだけで、白黒の世界に、色が溢れた。
貴方がいるだけで、変わっていく私。
簡単に私を変えていく貴方が、少し怖かった。
けれど、それよりも。
嬉しかったのだ。
貴方と同じように、鮮やかな色を纏えることが。
そして、いつしか。
何の色も持たなかった私は、鮮やかな色を纏い。
かつての白黒の世界は、
色鮮やかな極彩色な世界に変わった。
鮮やかな色を纏った私の隣では、
色褪せることのない、鮮やかな色を纏う貴方が笑う。
白黒な私の世界は、
貴方に出逢って変わった。