流れる星の様に
文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:流星
連絡船に乗れば街の灯から遠ざかることができる。
それでも見える星は少なくなった。
瀬戸内の海の上、漆黒の海原の中にあっても、一面黒にしか見えないこの夜空は、それでもまだ明るいのだろう。
深く、低く、静かに唸る船のモーターかスクリューの音が、まるで慟哭のように聞こえた。
各地で航路が消える。
残された航路も便数が減る。
航路は都市部から都市部へと最適化されて、更に他の交通機関に圧迫される。
もはや寝ている間に車を運ぶだけが仕事のようになっていき、その価値でなんとか生き残っている。
ゆったりとしたソファに寝そべりながら静かな内容のシアターを眺めつつ、いつでも眠りについて良い。そういうVIP席などを用意する試みもあるらしい。
船内で明かりのついていないところは殆どなく、甲板ですらなに不自由なく歩ける。
そして星が減った。
まだ辛うじて残る星も、いつまで眺められることだろう。
船舶は流星に似ている。ひときわ明るく輝いて、夜の瀬戸内海を流星のように滑っていく。
そして流星は燃え尽きるのだ。
明るくしよう、早くしよう。競うべきでないところで力を振り絞り、周りとの摩擦を起こす。
実際は摩擦などという生易しいものではなく、見えていなかった空気を押しつぶしてしまい、空気を構成している分子達が空気という物質の姿を保てなくなり熱に変る。その恐ろしいまでの発熱だからこそ流星は燃え尽きるのだ。
かつては輸送の根幹だった船舶は、それでも自分が大規模輸送によってのみ活きると信じてより多くのものを押しつぶす。
尤も、そうあらねばならないと、他の運輸関連業種に押しつぶされた結果やむなくそうするしかないのかもしれない。
けれどいまや飛行機でどこへでもいける時代に、沖の上で数泊もするツアーは未だ健在だ。
安さの売りに飛びついた人もいるのだろう。
だけどそういう人ですら、きっと夜に空を見上げる。
幽かな光が一筋流れた。
こういう感じでいいのだと、切なる願いを篭める。
明るすぎては他の星は見えない。流星は己ばかり輝こうとしても意味はないのだ。
大規模輸送には適さない、各地に残る小さな価値を繋ぎ合わせることができたのなら、満面の星空を彩る流星の様な存在になれるのではないか。
しばらくその願いを夜空に篭めて、船内に戻った。
きっと甲板には、もう誰もいない。
船舶関連業種の人、ごめんなさい。
なにとぞド素人のはたから見た印象という事でご寛恕下さい。
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334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/14(水) 00:07:36.87 ID:fPPO+N2H0
それはさて置き、お題を下さい
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 00:26:47.23 ID:brAFC+WIo
>>334
流星
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/14(水) 00:33:59.81 ID:fPPO+N2H0
>>335
把握しました