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蜂起 その4

カスペルは幾人かの要人、貴族と接触し、今後についての意見のすり合わせを五日で終えた。半ば恫喝に近いやり方だったが、長く意見を交わすほどの時間はないのだから、性急になるのも仕方ないと言えた。

アベルを旗頭とする反乱軍ーー規模や統制が暴徒の域を超えたため、そう呼称されるようになったーーは、ゆっくりと王都に向けて前進していた。王都まで幾つかある検問は、彼らに対して言い訳程度の抵抗をした後、あっさりと通した。

カスペルによって出された指示は徹底されていたおかげで、双方に被害はほとんど出ていない。

アベルが到着するまで、約一日。猶予は二十四時間を切った。カスペルがあーだこーだと周囲を納得させるために飴と鞭を振るっている間に、ファグナリスは部隊の配置を終えていた。

王に対しては、ファグナリス自身が赴くことにした。王殺しに抵抗を持つものは少なくないため、ミエルハンス皇国の人間は極力排し、アキエナから兵を借り受けた。

指示を待ちながら、ファグナリスはリーゼリアの容態を思った。彼女の具合はかなり悪いらしい。出産が近いこともある。これ以上悪化しないことを祈るしかない。

「奥方が心配ですか?」

「ん? あぁ・・・うん。出来れば早く終わらせて帰りたいよ」

古参の年配兵士に声をかけられ、正直な気持ちを吐露した。

「そうですね。気持ちは解ります。俺も、隊長の子供が産まれるのが楽しみなんですよ。感覚としては、孫が出来るお爺ちゃんの気分です」

「そんなもんなの?」

「そうですよ。あなたと俺はそれぐらい歳が離れてますから。他の奴も楽しみにしてます。同時に心配も」

「そうか・・・」

心配をかけていることに申し訳なく思う反面、気にかけてくれていることが嬉しかった。

「これが終わったらしばらくゆっくりされてはどうでしょう? まともに休んだことはほとんどないでしょう?」

「・・・そうだね。考えておくよ」

会話が終わった頃、伝令がファグナリスに耳打ちした。

「さぁ、仕事を始めようか」


ファグナリスは王がいる寝所に向かって、進撃を命じた。

寝所の周りには王の近衛兵が展開し、警護についている。さらに奥には王のお気に入りの貴族の稚児が周囲を囲っている。彼らは王と一緒に遊んでいるが警護も担当している。実力はそこそこ。対応に間違いがなければ、ファグナリスだけでも問題なく処理できる程度だ。

近衛兵の処理を任せ、適当に選抜した二名を伴って寝所に足を踏み入れる。

「何事だ!?」

叫ぶ青年の喉に刃を突き入れた。二人に指示を出し奥に踏み込ませ、王の確保に走らせた。ここで逃げられては面倒だと判断したからこその指示だった。

寝所の前に突っ立っていたら、ぞろぞろと王の稚児が集まってきた。近衛兵の姿はない。順調に進んでいるようで安心する。

稚児たちも、敵が一人であることに安心したようで、ファグナリスで遊んでやろうという思考が、クスリを打ってうろんな瞳から透けて見えた。

視線だけで、人数を数える。

二十三人。教えられていた人数だ。指示は皆殺し。

ファグナリスは、銀色に輝く剣に魔力を走らせた。腕に黒い焔のような線が走り、それは刀身を侵食するように伸びた。他人とは質の違うファグナリスの魔力は、自身の腕と剣を食い尽くすように動き、黒い焔の線が走った部分から、全てを黒く染め上げた。

漆黒に染まった刀身は、まるで心臓が鼓動するかのように脈動する。

呼吸をはかることも、構えを取ることもしない。必要ないからだ。

剣を抜き、防御姿勢を取った青年を剣ごと、なんの抵抗もなく切り捨てた。両断された胴体から、臓物が零れることも、血が溢れることもなかった。傷口が、まるで焼かれたように炭化していたからだ。

何が起こったのか解らないまま、硬直する彼らに、ファグナリスは無慈悲に剣を振るった。

まとめて三人が切り捨てられ、背中を見せた青年の足が飛び、倒れたところで頭蓋が断ち切られた。

勇気を持って挑んだ数名は、ファグナリスに僅かに手傷を負わせたが、すぐさま首を飛ばされて果てた。

戦いにすらならなかった。それは、殺戮だった。ただの虐殺でしかなかった。抗うことすら許されなかった。彼らは容赦されることなく、命乞いすら出来ずに死んだ。

無意味に。

ファグナリスは持っていた剣を捨てた。彼の手から離れた剣は、柄だけを残して高熱によって融かされたように液体となって床に広がり、小規模な爆発を起こした。

無事だった剣を適当に拾い上げ、ファグナリスは寝所に入った。

そこには、拘束された王が状況を理解できていないなりに、威厳を持って座していた。

隣には、小さな、まるで少女のような男の子が全裸で横たわっていた。

「貴様・・・ここがどこで、私が誰だか解っているのだろうな?」

「知っているさ。解っているとも」

「ならば、拘束を解け。『王の剣』が、王に刃を向けるのか!?」

「だからこそ、刃を向けるんだよ。あなたに王の資格はない。処断させてもらう。・・・問答をしたのはなけなしの敬意からだ。何か言い残すことは?」

「ゆる、」

聞き終わる前に、ファグナリスは王の首を撥ね飛ばした。

「カスペル卿に伝令を。滞りなく。以上」

無造作に王の首を掴み、ファグナリスは踵を返した。

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