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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
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17/28

17話

『あんた鬼の伝説どこまで知ってる?』

「えぇと、鬼が島の宝を見つけたけど、桃太郎が奪いに来たところまで。あと頭のコブのことも聞いた」

『そう、それならそろそろ話していいわね』

「何を?」

『あんた、そっちに行ってから随分モテモテなようじゃない』

「まぁ、恥ずかしながら」

『あんたが誰を選ぶか自由だけど、これだけは覚えておきなさい』

「何?」

『鬼の子孫となる伴侶はね、必ず死亡するわ』

「……え……!?」

『交通事故、心臓麻痺。死因は様々だけど、付き合って結婚して、幸せの絶頂地に必ず相手は亡くなるわ。これは桃太郎の呪いとも言われているわ。いい?覚悟しておきなさい。あんたが選んだ最愛の相手は必ず死ぬわ。これだけ覚えておきなさい』

「そん……な……」



 時は流れて本日は2月14日。

 バレンタインデーである。

 朝、桜花姉と伯母さんからチョコを受け取る。

 朝食時には、蕾さんから学校終わったら渡したい物があるとモジモジと恥ずかしそうに告げられた。

 メッセージアプリでは、しおりんから『けっけっけ、バレンタインだからチョコあげるよ。学校終わったらおいで』と送られた。



「守クン!これ!」

 と学校では眠子さんから赤面で、ハートの形に丁寧に包装されたそれを頂いた。

 世の男性諸君からしたら羨ましい光景だろうが、俺の心は浮かれてなかった。

 誰を選ぶか。

 答えは既に決めていた。

 ただ、選んだ相手は死んでしまう。

 とある人からの告げ口で、俺の心にはぽっかりと穴が空いていた。

「ありがとう、ございます……」

「守クン……元気ないね?アタシがあげるの迷惑だった?」

「いえいえ!そんなことは……!」

「そう……ならいいけど、何かあったらいつでも相談に乗るから!それじゃ!」

 不安と頼って貰えるかのかという期待が詰まっていた。

 タッタッタと足速に遠ざかっていく彼女の背中を見送った



 長方形で水色と白のチェック柄の包装紙に包まれたチョコを手渡される。

「まもっちどうしたの?元気ないけど。僕からチョコ貰うの嫌だった?」

 しおりんからチョコを貰いに病院へ。悩みが顔へ出ていたのか、彼女が顔を覗き込んでくる。


「いや、そうじゃないけど、嬉しいよ。すごい嬉しいけど、色々あってさ」

 俺はテキトーに誤魔化そうとしたけど、上手い言葉遣いができなかった。

「何さ?話しな。暗い顔なんてまもっちには似合わないぜ」

 ニヤリと本人はニヒルな笑みを浮かべているつもりかもしれないが、今の俺はそれに乗っかる気力がなかった。

「……今はまだ、話せない」


 それを絞り出すのがやっとだった。

「そっか。まぁ、その気になったらいつでも聞くから、今はそっとしておくよ」

「ありがとう」

 病室を出ていく際、しおりんは不思議そうに、そして心配そうな感情が入り交じった表情で見送ってくれた。



「守君!はいこれ!」

 病院を出て、蕾さんのバイト先へ。

 彼女はちょうど上がり立てなのか、空色のロングワンピース姿でばったり出会った。

 元気よく渡される。

 おそらく手作りであろうチョコクッキーが、金色のハート柄のシールが貼られていて、ラッピング袋されたそれを差し出した。


「ありがとう……ございます……」

 俺はそれを頂いた。

「元気ないね、どうしたの?」

 ひょこっと下から心配そうに顔を覗き込んでくる。

「いえ、なんでも……」

「お姉さんに嘘つくの?」

「嘘じゃないですよ」

 乾いた笑みを浮かべる。

「嘘だね」

 一瞬で見抜く。

 当たり前か。

 俺は、思わず叫んでしまった。

「嘘じゃありません!今は放っておいて欲しいんです!」

「嘘だよ!守君、何を抱え込んでるの?お姉さんで良ければ話聞くよ!?」

 強く腕を掴まれる。

 俺はそれを勢いよく振り払い。走って去っていってしまった。


「どう……したの……?」

 振り払った時の彼女の問に、俺は答える解を持っていなかった。



「おーい、まもりん。晩御飯の時間だよー」

 帰宅後、部屋に閉じこもり、電気もつけずにうずくまっていた。

「およ?せっかくのバレンタインデーなのに悩み事かい?」

「今日は食欲無いからいらない」

「うんうん、そっか」

 横に座り込む桜花姉。

「何があったの?」

 従姉が優しく訊いてくる。

「……母さんからさ、鬼の子孫の相手は必ず死ぬって電話があった」

「およよー、そこまで聞いちゃいましたか」

 軽く流される。

「俺は真剣に悩んでるんだ!」

 俺の叫びが部屋中に響く。

「あたし達もだよ」


「え?」


「あたし達、希導家の一族はね。鬼がこの島を守って死んだ時からそうだった。今は確認のしようはないけど、桃太郎の呪いだって言われてる」

「母さんから聞いた」


「そっか。だからね。あたし達は死にゆくパートナーを真剣に考えなくちゃいけない。

 徹みたいな、チャラい奴でも好意を抱いていたら嬉しい反面、悲しいんだよ。

 必ず死ぬから。

 まぁ、あいつの場合は、あたしのこと好きって言っておきながら節操なしに女の子に声かけてる相手は選ばないけどね。

 だからだよ。あたし達希導家は、鬼について知ってもらいたいの」


「………………」

「桃太郎の話はどこまでだっけ?」

「本能寺の変が起きる直前」

「鬼はね。まだ生きてるんだ」

「…………へ?…………」

 素っ頓狂な声が出た。

「2人のうち1人は桃太郎と相打ち、もう1人は複数人に討たれた。

 けど、神が舞い降りて2人を仮死状態のままこの家の地下に眠ってるの。

 桃太郎の部下だった後世に名を残せなかった武将が、宝を全て奪っていった。

 元々織田信長と明智光秀で山分けする約束だったんだけど、いざ宝を前にして欲に目が眩んだ織田信長が独占しようとした。

 怒った明智光秀が織田信長の居城を襲った。これが本能寺の変

「質問が2つ」

 びっと俯いたまま腕を上げる。

「どうぞ」

「1つ、しおりんが言ってた信長の埋蔵金はこの島にあるのか。

 2つ、この島の桜が咲き続けるのは鬼の意思か」

「1つ目は、嘘だよ。宝は全て燃えた。

 2つ目は言い方が違うけど、ほんと。桜が咲き続けるのと、南東のコスモス畑も鬼が愛した景色が続くように神に願ったの」

「神って実在するんだな」

「らしいよ。会ったことないけど」

「そんな存在信じろと?」

「まぁ、その辺の言い伝えは曖昧だからね。美咲先生の好きな曲の歌詞にもあるでしょ?神も天使も悪魔も閻魔も全て幻想。信じるなら連れて来いって」

「そうだね」

「でも、あたしは信じてる」

「なんで?」

「この島の桜が答え」

「意味わからん」

「この島の桜が一年中咲き乱れるっていう非現実的な光景があるから信じてる」

「そっか」

 俺は顔をあげる。

 桜花姉は立ち上がり手を伸ばす。

「晩御飯冷めちゃう。今日は唐揚げだよ」

「それは楽しみだ」

 その手を握り立ち上がる。


「あーあ、やっぱり冷めてた」

 1階に行き、リビングに入る。電気のついたその部屋の中央のガラステーブルの上には、冷めきった夕飯があった。

『ご飯食べたら自分たちで食器洗ってね』

 伯母さんの置き手紙。

「さて、遅くなったけど」

「「いただきます」」

 俺たちは手をパンと合わせて食事の挨拶をし、箸を持って夕飯を食べた。


 食事を済ませて部屋に戻ると、着信履歴があった。


 相手はしおりんからだった。


 紫音ルートへ。

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