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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
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13/29

13話

「姉貴ー、借りてた漫画だけど」

「ちょっと!ノックぐらいしなさいよ!」

 ガチャリ、とある女の子の部屋のドアが開かれる。

「おっと、失礼。この抱いてるぬいぐるみ、今日あいつから取ってもらったやつだよな?」

「……うん……」

「大事に抱えちゃって、惚れたか?」

 男の子の問に女の子は、ぬいぐるみに顔を埋めて紅潮した表情で答える。

「まだ……わかんない」

「ふーん、ひとりで済ます相手なのにまだ分からないか」

 突然のカミングアウト。



「なんで知ってるの!?」

「だって隣の部屋だぜ?聞く気もなくとも聞こえてくるさ」

「う〜……!それは朝露サンが意識させたから気の迷いなの!」

「あいつほんとモテるなぁ。とりあえず、ほい漫画」

 少年は羨ましそうにボヤき、すぐそこに漫画を置く。

「じゃあなぁ」

 バタン。

 扉が閉じられた。



「アタシってちょろいのかなぁ」

 彼女は昔から惚れやすい子だった。

 優しくされたり、手が触れただけで、相手を意識してしまう。

 それがきっかけで付き合いもしたが、長続きした例は無い。

「あの人確かに周りに女の子多いもんねぇ」

 初詣で顔を合わせた子達のことを思い出す。

 そして歳上のお姉さんから連絡先を貰っていたことも脳に鮮明に再生される。



「考えても仕方ない。アニメでも見よ」

 アニメのブルーレイを並べてる棚を見やる。

 そこには「霊力魔法少女ヒナコ」もあった。



「〜~〜~〜~〜~!」



 彼女は赤面する。

「ヒナコは今は避けよう」

 そして手にしたのは「甘い蜜にはご注意を」のケースを手にし蓋を開ける。

「なんで!?」

 その中には、ヒナコのディスクが収められていた。

「う~~~~~~~!」

 彼女は悶絶してバタバタと手足を振っていた。



「さて、こいつだが……」

 俺は日中にしおりんが入院している病院の看護師さんから貰ったメッセージアプリのIDを睨んでいた。


 連絡なかったら紫音ちゃんの身体拭くこととか、蕾ちゃんの着替え覗いたこと誇張して言いふらすから


 謎の脅しが脳内で蘇る。


 恐る恐るIDを打ち込む。

 玲奈という名と猫のアイコンが映し出された。

 友達申請送る。


 ヒュポ。

 秒で承認された。


『やっほー、守君♡』

『こんばんは、なぜ俺にID教えたんですか?』

『そりゃあ、君に好意があるからだよ』

『初対面の相手にですか?』

『紫音ちゃんから君の話聞いてて気になってたんだー』

 銀髪の女の子が指で♡を作っているスタンプが送られた。



『ちなみに、しおりんは何て?』

『僕をアニオタの道に引き込んだ大事な人』

『事実ですね。玲奈さんもアニメ好きなんですか?』

『いや、全然。だから教えて欲しいなぁ』

『それは構いませんが、お仕事忙しいですよね?』

『明日、日勤だから紫音ちゃんのお見舞いって名目でこっち来て』

『ok』



 スタンプを送り、相手から即座に既読が着いたが返信はなかった。

 この島に来てからギャルゲーの主人公になった気分だ。

「これがモテ期か?」

 なんとも複雑な気分だ。

 カチッ

 思考を停止させて、部屋の電気を消し、布団に潜る。

 すぐに闇に落ちていった。



「そういえば桜花姉」

「何?まもりん」

 朝、いつも通り咲倉家で朝食を頂いている。

 本日はトーストだ。

 ピーナッツバター、イチゴジャム、ブルーベリージャム。

 焼けたパンの上にイチゴジャム塗りたくり、頬張る。

 サクッとよく焼けたパンの食感にイチゴの酸っぱさが口に中を支配する。



「しおりんのことも落ち着いたし、正月休みも終わったしさ、そろそろ島田さんに連絡入れてもいいんじゃないか?」

「そうだよ!桜花ちゃん!」

「そう言って二人はアニメ監督に会いたいだけでしょー?」



「「だって神ですもん」」



「ただの1人の人間だよー」

 呆れらながらも、桜花姉はピーナッツバターを塗ったパンを口にする。

 口元を手で覆い粗食する。

「まぁ、この島の伝説について伝いたいし、そろそろ来てもらってもいいかもねー」

「「やった」」

 俺と蕾さんはお互いの手をパンと合わせて叩いた。



 本日も桜花姉と蕾さんはバイトである。

 俺は約束通り、しおりんの病院に来ていた。

「あら?今日は守君1人?」

「はい、二人は仕事なので」

「そう、紫音ちゃん喜ぶわよー。2人っきりだもの」

「あはは……」

 乾いた笑み。本当は玲奈さんも介入してくるからだ。



 コンコン。

 ノックする。

「どっぞー」

 しおりんの承認を得てドアを開ける。

 ガチャ。



「あれ?今日はまもっち1人?」

「二人はバイト」

「そっかー。2人っきりかー」

 ニヤニヤ。何かを企んでいる。

「早速だけど、身体拭いてもらおうか」

 シュルっと病院着の紐を緩める。

「待って!今はそのタイミングじゃない!」

「ちぇー」



 コンコン。

「どっぞー」

 ドアが開かれる。

 ナース姿の玲奈さんが入室してきた。

「紫音ちゃーん、検温よー」

 俺を見てウインクする。

 よく来た。偉い。

 と伝えられた気がした。

 偉く緊張してしまう。



「二人はアニメ好きなんだよね?」

 しおりんが熱を測ってる間、玲奈さんが口を開く。

「そうですよー」

「ですね」

「どんなアニメ見るの?」

「霊力魔法少女ヒナコとか、甘い蜜にはご注意をとかですね」

 しおりんが答える。



「魔法少女は分からないけど、2つ目は実写映画にもなったやつよね?」

「そうですよー。玲奈さんも興味おありで?映画は観に行けなかったんですよねー」

「それのブルーレイも持ってるぞ」

「お?まじで!?今度貸してよ」

 しおりんが食いつく。

「なんなら外出許可貰って、俺の部屋で観ないか?」

「けっけっけ、名案」

「まぁ、桜花姉達に訊いてみてからだけど」

 出来るだけ、玲奈さんが会話に入れないように話をどんどん広げる。

「けっけっけ、大丈夫でしょ。問題はつぼっちも来るってことかなぁ」

「間違えなく来るな」

 はっはっはと笑い飛ばす。

 玲奈さんはポカーンとしていた。



 よし、狙い通り。

 これで俺のことを諦めてくれたらいいが。

 ピピピ。

 体温計が鳴る。

「36.6℃。問題ないわねー」

 玲奈さんが淡々と告げる。



「はい。ありがとうございます」

 しおりんが礼を言う。

「あとは2人っきりでどうぞー」

 既に興味なしと言った感じだ。

 そのまま、部屋を出る。

「よかったー」

 しおりんがつぶやく。



「なんで?」

「玲奈さん、まもっちのこと狙ってたでしょ?」

「なんでわかったの?」

「あの人、肉食で有名なんだよねぇ。既婚者を狙ったり、まもっちみたいに若い人見境なく狙うの。病院を出会いの場所と勘違いしてるんだよねぇ。つまり危ない人」

 想像以上に危険な人だった。


「ところでさっきの甘蜜の話だけどさ」

「うん」

 しおりんが切り出して俺が応える。

「どうせならヒナコも一気見しようよ」

 ナイス提案。返事はもちろん

「いいね☆」

「我ながら名案だろ☆」

 こうしてしおりんと数時間ぐらい雑談した。



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