1話
皆さんはお姉さんキャラはお好きでしょうか?
私は大好きです。
ただ、漫画やアニメ、ゲームでは妹が欲しい!というキャラはよくいますが、姉が欲しい!というのはあまり聞きません。
お姉さんキャラ成分が欲しいなら自分で書けばいいじゃない!
本作はこういうお話です
「まもなく鬼道島〜まもなく鬼道島〜」
ゆらゆらと船に揺れられて1時間ほど。
艦内アナウンスがスピーカーを通じて目的地を知らせる。
それぞれの席で談笑やらゲームやらスマホをいじっていた連中が甲板へ上がっていく。
ゆらゆらと揺れる船内。
俺は窓から海を見ていた。
「君は見に行かないのかい?桜が絶景なのに」
紳士服を身につけた中年でちょび髭が特徴な男性が俺に話しかける。
「大丈夫です。見慣れてるので」
興味なく答える。
「ってことは、鬼道島の人?」
この船が俺たちを運ぼうとしている目的地の島だ。
男性が問う。
「母の実家がこの島なので、帰省で何度か訪れてるんです」
「だったらこの島の伝承、知ってる?」
「24時間365日桜が咲き乱れる理由ですか?」
食い気味に男性が顔を近づける。
「そう!それを調べに来たの!」
「はぁ……。なんでですか?」
ちょび髭を軽く撫でて答える。
「実は僕、アニメ監督でね。この島の伝説をアニメにできないかなぁって思って観光がてらやってきたの」
「アニメ監督!?」
いかん、目がつい輝いてしまった。
「そう、島田信幸っていえばわかるかな?」
「はい!「霊力魔法少女ヒナコ」の監督さんですよね!」
「よく知ってるねぇ。もしかしてファン?」
「そうです!」
「サイン書いてあげようか?」
「いいんですか!?」
つい有頂天になってしまう。
「いいよ、ファンにあったらいつでもサイン書けるように色紙持ち歩いてるから」
島田さんはそう言ってカバンから1枚に色紙を取り出す。
「えぇと、君の名前は?」
「希導守です!」
「鬼道?行き先と同じ名前だね」
「いえ、希望の希に導くと書いて希導です!」
「へぇ、なんとなくだけど、君、この島の重要人物だったりしない?」
色紙にマジックペンで自分の名前と島田信幸の名前が刻まれる。
「そんなわけないですよぉ」
「いや、にしたって苗字といい島の名前といい、色々合致してない?」
「僕の居候先が母親の実家なので、もしかしたら従姉の桜花姉ならわかるかもです」
「なら、紹介してもらえるかい?」
「いいですよ!」
元気よく答える。
有名なアニメ監督に会えただけで満足だ。
もし本当にこの島に伝説があったとして、それがアニメになると思うと胸が高鳴る。
「ぶぉぉぉぉぉん!」
「鬼道島へ到着〜」
ちょうどいいタイミングで島へと着いた。
ガラガラ。
琥珀色のキャリーケースを引いて船をおりた。
潮騒が聞こえて、海の匂いが嗅覚を刺激する。12月とは思えない暖かい陽気が俺たちを迎えてくれた。
ふと、空を見上げる。
サンサンとした太陽が島全体を明るく照らしてくれている気がした。
「あ!来た来た!待ってたよ!」
こじんまりした栗色のくせっ毛の女の子が手を俺に振る。
「例の従姉さん?」
監督が訊く。
「いえ、こんな小さな子ではなかったはずです」
「小さいのは事実だけど、従姉のこと忘れたの!?」
ぷんぷんと顔を怒りで真っ赤にする。
「え?もしかして本当に桜花姉?」
一瞬ぽかんとしてしまった。
「そうだよ!まもりん久しぶり!」
そう呼ぶのは桜花姉ただ一人だ。
「小さくなったね」
「まもりんが大きくなりすぎたんだよ!」
「はっはっは!昔は身長でかかったのになぁ!」
ポンポンとバカにしつつ頭を撫でる。
「にゃあああああああ!久しぶりの再会がそれ!?」
桜花姉の怒声が響く。
「はぁはぁ……ところで気になってたんだけど、そちらの方は?」
叫び疲れて落ち着いたのか、彼女が島田さんの存在を尋ねる。
「初めまして、アニメ監督をしています。島田信幸と言います」
「はぁ、ご丁寧にどうも」
お互いお辞儀をする。
「そのアニメ監督さんがこの島になんの用でしょうか?」
「この島の伝承を知りたいのですよ」
「知ってどうするんですか?」
「アニメを作るんです」
桜花姉は訝しんだ表情で顎に手を当てる。
「お伝えするのは構いませんが、あまりリアルにしないでください」
「それは心得ています」
「わかりました。長い話なので、家で話します」
「ありがとうございます」
桜花姉は警戒しつつ迎える。
「まもりんも行くよ」
「お、おう」
踵を返す桜花姉を、俺たち男性二人はあとをついて行く。
不思議なことに、この島は一年中桜が咲ける気候が包んでいる。
港を離れて、緩い坂道を登る。
次第に竹色の屋根が見えて、木造の家屋が姿を現した。
庭には1本の桜の木。
ヒラヒラと花びらが舞い散る。
桜花姉は見慣れているのか、気にもとめず、玄関へ。ただ俺は久しぶりで魅入ってしまった。
島田さんからしたら初めての光景で、開いた口が塞がらない。
「本当に年がら年中桜が咲いてるんですねぇ」
「はい。それがこの島の特徴ですから」
ガチャ。鍵を開けて扉を開く。
「お母さーん、まもりん連れてきたよー。あとお客さん」
「はーい」
家の奥からゆったりとした返事が聞こえて、すぐにその人物はやってきた。
「あらあら、まぁまぁ。守君久しぶり、大きくなったねぇ」
桜花姉の母、俺からしたら叔母さんが俺のことを迎えてくれる。
「そちらの方は?」
「初めまして、島田信幸と言います。この島の伝承を知りたくてお邪魔させて頂きました」
「何故でしょうか?」
穏やかな雰囲気がピリッとした空気に変わる。
もしかして島の人にとってこの話題は、タブーなんじゃ?
「アニメを作りたいからです」
「悪いようにしなければお伝えします」
「娘さんからも釘を刺されました。約束致します」
「わかりました。では中へどうぞ」
「お邪魔します」
桜花姉、俺、島田さんの順で家の中へと入れて貰えた。
「守君、部屋用意してるわよ。2階に上がって1番奥の部屋使って」
「監督さんはリビングへどうぞ」
「はい」
「わかりました。ありがとうございます」
そういい、俺はキャリーケースを持って2階へ。
「1番奥の部屋、ここか」
紺色の扉を開く。中は6畳ほどの小さな部屋だ。掃除されてないのか、埃っぽい。
ケホケホと軽く咳をしながら、薄暗い原因のカーテンを開ける。
この時は思いもしなかった。
運命の出会いが待っているなんて。




