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ENIGMA6   作者: The kid 王
2/2

【2】我!復活ッ!!


 あの日、私が初めて人を殺したあの日から3日が経った。あの日のその後、私は約束通りハッジさんとキリスコさんとご飯を食べに行った。だがもちろん食事は喉を通る事などなく最近は栄養失調気味である。

 ということで私こと、リーキン・ストゥーは今、国王直属近衛兵団第6部隊の事務所内にて王国で扱う書類の整理をしている。ハッジさんが言うには、第6部隊は基本的には書類の事務処理がメインだという。常日頃から人をぶっ殺しているという訳では無いようで安心した。

 

 「あー超絶技暇やなーリーキンちゃん。ずっと座って印鑑押して印鑑押して……いつ終わるんこれ…ほんまいい加減にしてほしいわー…」


 「そうですか?私はこういう単純作業嫌いじゃないですよ」


 「ほんまに?…ってか!リーキンちゃんもうそこまでやったん!?はやー…ついでにコレも頼むわ」


 ハッジさんはそう言い分厚い書類の束を私の目の前にドサッと雑に置く。


 「ちょっと…後輩に仕事押し付けないで下さいよ」


 「仕方ないやーん、タイチョーは居らんしフェティーちゃんは体調不良やしキリスコは……っおいキリスコ!!テメェ寝っ転がってねーで手伝えや!」


 「えー無理無理無理ー!アタシそういうめんどくさいのチョー出来ないってわかってんでしょー!」


 キリスコさんは事務所に置かれたソファーの上で横になり鏡で化粧をしている。


 「いないよりはマシです」


 「ほら!リーキンちゃんもそう言うとるやん!サッサとやれ!」


 「いっやでーす。ってことでアタシもう帰りまーす」


 「ハッ!どうせジジイにハメられに行くだけやろ!ほんまっ病気なっても知らんぞ…」


 「ハッジに心配される程阿呆(あほう)じゃありませーん。じゃあーねーリーキンくんッ!お疲れさまー」


 キリスコさんはそう言い残すと軽快な足取りで出て行ってしまった。


 「……本当に帰りましたね」


 あの人は何をしに今日出勤してきたのだろうか、結局キリスコさんは朝からソファーでゴロゴロしながら化粧してただけである。


 「なー、アレで副隊長とかほんま勘弁してほしいわ」


 「ええっ!?副隊長なんですかあの人!」


 「おーなんせ第6設立時の初期メンバーやったらしいからな」


 「キリスコさんが副隊長……」


 冗談だろ……っ。

 と、私の引き攣った表情を見てか、ハッジさんは私の目を見て笑う。


 「フッ。リーキンちゃん、気持ち超絶技わかる。タイチョーはホンマちゃんとした人なんやけど、キリスコはただの腐れインポやからなw」


 「…そういや私ここ3日間、ハッジさんとキリスコさん以外の第6の人と会えてないんですが」


 「あっそうなん?……まぁタイチョーはいつ戻ってくるかわからんしなー……明日か1週間後か…1年後かも知れんしなー」


 「えー……」


 「あっなんなら今からフェティーちゃんに会い行く?多分2日目過ぎたし超絶技機嫌悪いことには変わりないけど殺されはしないと思うで」

 

 「えー……じゃあ行きません」


 「行かんのかい…………あー暇やんけー…」


 「仕事しましょう…」


 と、それから私とハッジさんは黙々と書類に印鑑を押して印鑑を押し事務処理をやり続けた。そうして結局、本日分の書類が片付け終わったのはお日様が沈みきった頃だった。


 「あー!終わったわー…リーキンちゃん腹減った!飯!飯行こ!」


 「あー…はい、そうですね。行きましょう」

 

 まだ胃袋の調子が悪いが先輩の誘いを無下にする訳にもいかない。私は少し悩んだすえ行く事した。

 だがハッジさんは私のその一瞬の迷いを見抜いていた。


 「…何やのリーキンちゃん。まだまともに飯食えんの?」


 「っ…まぁそうですね。あの魔人の親子の事…考えると胃が何も受け付けなくなるといいますか…」


 「無理矢理にでも入れろ」


 「えっ?」


 「そういう時は無理矢理にでも食うねん。まぁ吐くかもしれん…けど吐いた分また食うねん。食って吐いて食って吐いて…最終的に胃に食いもんぶち込めてればなんも問題あらへん」


 「…ハッジさんもそうやって来たんですか?」


 「せやせや、んで今言った事は実際昔タイチョーから言われてん。ほんまあの時は救われたわ」


 「そうですか…では今回は私の番という訳ですね」


 「ハッ!…別にそんな大層なことやあらへんよ……じゃっとりま前いった飯屋でええか?」


 「はい」


 そうして、私はハッジと食事をしに行く事になり事務所を出ようと扉のノブに手を伸ばした。

 だが次の瞬間、私の頭部に激痛が走った。


 「フハハハハハー!!我!復活ッ!!」


 突然事務所中に響き渡る女性特有の甲高い声と、その声の主によって勢いよく開けられた扉の角に頭をぶつけ悶絶している私。

 そしてそんな私を見下ろしながら笑みを浮かべる初めて会ったその少女(声の主)は、頭から大きな(つの)が2本…生えていた。


 だが、そんなことよりまず頭が痛い。


 「ぐぅううー……痛ッッたー…」


 「おい大丈夫かリーキンちゃん」


 額からは普通に血が出ていた。


 「ううッ…ギリ大丈夫です…けど、何がどうなったんですか?」


 「ハハッ、まぁ何がどうやて…そりゃ…」


 「フハハハ!お前が新しい第6の隊員か!悪かったな!だが!(われ)は謝らん!何故ならその傷は我の覇道に居たお前の自己責任だからだ!…………でも…その…わっ我を嫌いになったりとかは……しないでくれ」


 「…………へぁ?」


 何を言っているんだこの少女は?

 『謝らん!』とか言ってその前にもう謝ってるし、最後の方の気の抜けたセリフといい、情緒が分からない………だが俺は確信した。この子は絶対悪い子では無いということが。


 「まだ休んでなくてええのか?」


 と、ハッジさんが『絶対悪い子じゃない子』に話しかける。


 「あっ…ああ!って!そもそも我は体調などこれっぽっちも悪くなどない!」


 「あっそう……そりゃ良かったわ…」

 

 「それよりだハッジ!扉の外で聞いていたぞ…ご飯に行くそうだな」


 「せやけど?」


 「……わっ…我も連れて…ついてって…連れてけい!」


 少女は辿々しく凄ぶりながら、いぜん大きな声をあげる。


 「もちろんやん!人数は多い方がええ!せやろ?リーキンちゃん」


 「そう……ですね」


 「やったー!」


 『やったー!』?

 一人称『我』で『やったー!』???

わからん。何なんだこの子?そんなに一緒にご飯に行く事が嬉しいのか?

 おいおい、両手挙げてジャンプまでしちゃってますけど…。


 そうして、私が(いだ)いた目の前の少女の第一印象は『キャラ定まってないし強がってるしでよく分からんけど絶対良い奴』だった。


 それと、どうでもいい些細な事かも知れないが、私は何故かこの少女を見た瞬間に、心臓が早くなり顔が熱くなった。額から血が出たせいで興奮でもしているのだろうか?

 でも、だとしても、私の中には私が経験した事のない知らない感情が溢れかえっている。


 なんだこれは?


――


 そうして、場所は変わり私達3人はご飯屋さんにいる。

 私とハッジさんが向かい合う様に席に座り、ハッジさんの隣に少女がいる形だ。


 「しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃく…」


 と、野菜に赤いドロッとしたソースをかけ食べるハッジさん。


 「パクパクパクパクパクパクパクパク…」


 と、穀物の握り飯を食べる頭に2本角の生えた少女。


 「もっしゃもさもさもっしゃもさもさ…」


 と、カエル肉を胃袋に無理やり詰める私。

 食事をしているとはいえ、会食というには余りにも会話が無かった。

 そんな状況を見かねてか、ハッジさんが食べる手を止め口を開いた。

 

 「…っはぁ……そういえばおたくら自己紹介がまだやったな…ってことでせい!」


 「……あっあーそういえばそうですね。すいません、少し遅れましたが私リーキン・ストゥーと申します。魔法を使います。よろしくお願いします」


 「うん…我は[フェティー・セント]。武器は…えーっと…今は短剣を使って……ます。よろしく…お願いします」


 先程の元気はどこえやら、少女…フェティーさんは私と視線をあわせることなく静かにそう応える。


 「………フェティーさんですか。素敵な名前ですね」


 「……………うん、でしょ……」


 「…………」


 「…………」


 やばい、気まずい雰囲気(沈黙)が流れている。

 何故だろう、フェティーさんを前にすると言葉が喉から出てこない。何故だ?私は緊張しているのか?


 「ハッ……なんやお前ら、人見知りかっつーの。なぁフェティーちゃん、一応第6部隊としては君が先輩になるんやから自分から何か話かけて仲良うしてこうや」


 「うぅ…でも我あんまそういうの得意じゃない」


 「まぁ確かに歳はフェティーちゃんの方が下やけど、そこはほら、頑張らんと、な」


 「わ、わかった…頑張る………おっ、お前!……好きな食べ物は!?」


 フェティーさんは私の方に振り向き、辿々しく問い始める。


 「えー…ガチカエルです」


 「出身は?」


 「ダフト街です」


 「好きな色は?」


 「えーっと、赤色ですね」


 「兄弟とかはいるの?」


 「一人っ子です」


 「お前魔法使うんだよな…得意魔法は?」


 「全般的に何でも得意ですが…強いて言うと、精神操作系ですかね」


 「へぇー凄…えーあとは……今好きな人とかいるの?」


 「フェティーさんです」


 「へ?………………………………うえっ!?わっ我ェ!?」


 「ギャハッ!リーキンちゃんマジか。ブッ飛ばし過ぎやろ!」


 「…………………………ッッッッ!?」


 私自身、今自分が何を言ったのか理解出来なかった。

 フェティーさんの『好きな人は?』という問いに対し、私はノータイムで脊髄で『フェティーさん』と答えてしまった。

 ……いや、マジで何を口走ってしまったんだ私は?

 いやいや、本当にわからない。え?

 確かにフェティーさんを一目見たその瞬間、私の中から湧き出る『何か』があったのは確かだ。

 だが、それが何故この答えになったのかわからない?

 ん?

 いや、まてまてまてまて。

 まてまてまてまて。

 ひょっとしてアレか?

 アレなのか?

 恋?

 いやいやいやいやいや……え?マジで恋?

 いやまぁー確かに、フェティーさんは顔立ち良いし、仕草も可愛いし、初めて見た瞬間からまるでお人形さんみたいに愛くるしくてい抱きしめたくはなったけど……って!もう好きじゃん私!

 え!?え!?

 この私が!恋!?しかも一目惚れしてただと!!

 えー!!マジですか!この気持ちが恋か!

 えーヤバいヤバい!なんか語彙力低くなってるし、なんか今の私キモい!

 あーなるほどー!恋は人を変えるってよく聞くけどこういう事かー!!!おもろー!!

 ………ふぅー…まぁ一旦落ち着け私。現状をよく見ろ。

 私はフェティーさんに一目惚れしていた事に気づかず、だが体はすでにフェティーさんに惹かれていたせいで告白をしてしまった。

 つまり取り返しのつかない事をしてしまったのだ。

 と、いうことはだ…これから私の一挙一動がフェティーさんという天使からの評価を受けることになる。

 ヨシ!気張るぞ私!告ってしまった以上!必ずフェティーさんとお付き合いしてみせる!


 と、1人の世界で意気込む私の向かいではハッジさんが腹をいだえて異常なほど笑っていた。


 「ギャハハハッ!…突然の愛の告白…俺は大好きやよ、そういうの……でもなー残念やでリーキンちゃん」


 「うん?何がですか?」


 「うっ……うっうぅ……オエッ!…」


 するとハッジさんの隣から嗚咽?が聞こえてきた。

 嗚咽?が聞こえる方見るとそこにはフェティーさんがいて、何故か顔色が段々と悪くなっていた。

 

 そして…


 「ゲェエエエ!!オエッエエエ!!オロロロロロ!!」


 フェティーさんの口から吐瀉物がベチャペチャと大量に床一面に広がった。


 「ワッと!!???」


 何で!?と、驚く私の肩に手を置きハッジさんが静かに言う。


 「あーあのな…リーキンちゃん。ホンマにこれは運が悪いとしか言いようないんやけど……フェティーちゃんな…」


 「……………ッ??」


 「ダークエルフアレルギーやねん」




 私はダークエルフである。

 名前はリーキン・ストゥー。

 

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