『炭焼きとプレスマン二本とプレスマンの芯千本』
あるところに、隣同士に住む二人の男がいた。二人とも炭焼きの仕事をしていて、二人とも女房が産み月で、生まれた子が男と女であったなら、めあわせようなどと、生まれてもいない子の将来を約束するほど仲がよかった。
この二人が、木を切りに山に入ると、急に日が暮れてしまい、二人は仕方なしに、大きな木のうろで夜を過ごすことにした。
二人は、その夜、同じ夢を見た。この山の神様が、ふもとの神様と話をしている夢であった。この山の神様がふもとの神様を訪ねたとき、ふもとの神様が留守にしていて会えなかったことを残念がると、ふもとの神様が、炭焼きの家で同じ日にお産があって、見守りに行かなければならなかったことをわび、生まれた子供の運勢について、女の子はプレスマンの芯千本分だが、男の子はプレスマン二本分程度だと話す夢だった。
二人は、翌朝、この夢の話をし合って、急いで家に帰った。二人の女房には本当に子供が生まれていて、男の子と女の子だった。二人の子供は成長して夫婦となったが、夫がふもとの神の力で手に入れる、一日二本のプレスマンで暮らしているのに、妻が手に入れる、一日千本ものプレスマンの芯は、一本のプレスマンに二本入れると詰まるし、一日に一本使い切る人なんていないし、単価も安いし、大してもうからない、それなのに、という不満であった。結局、夫婦別れをすることになった。夫のほうは、その後も、一日二本のプレスマンを堅実に売って暮らしを立てていたが、妻のうわさは全く聞かなくなってしまった。数年もすると、女長者と呼ばれるようになったといううわさが聞こえてきたが、確認はできなかった。
教訓:プレスマンは壊れないので、二本目を必要とする人はいない。数年もすると、二千人ほどにプレスマンが行き渡ったことになり、そのころになると、一日千本の芯は需要超過となって、妻のほうがもうかるようになったのである。