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第25話 【ゴブリンとの戦い③】

 突如として緊迫した報告がゴブリン軍師のもとに届けられた。


「軍師様、約200の混成部隊がこちらに向かって突撃してきています! オーガ、天狗、人間が一緒に…!」


 報告を聞いたゴブリン軍師は一瞬息を呑み、冷静さを保とうとするが、内心は動揺を隠せなかった。「なぜだ?なぜ天狗や人間がここにいる…?」と、焦燥が胸中に湧き上がる。


 彼の頭の中で、次々と疑問が渦巻き始めた。天狗や人間が加勢しているということは、この戦いはオーガだけの問題ではなくなっている。人間たちはともかく、天狗族までが戦線に加わる理由が見当たらない。


 彼は即座に自らの配置とこれまでの戦況を振り返り、斥候たちの動きを思い出す。周囲には十分な数の斥候を放ち、オーガ軍がいる場所や動きについては常に監視してきたつもりだった。


 どうやって天狗や人間たちがここまで近づいてきたのか。彼らが戦場の途中で現れたことは明らかで、初めから潜んでいたわけではない。


「まさか…奴ら、斥侯を戻した後...つまり戦闘が始まった後に動き出したのか?」と、軍師は急速に仮説を組み立て始めた。天狗たちであればこの地域の地形に通じている。


 彼らはこの土地にある隠れ道や抜け道を知っているはずだ。それならば、こちらが予想できない場所から攻撃することができたに違いない。


 さらに、彼の頭に不安がちらつく。この戦いが単なる長期戦を意図した消耗戦ではないかもしれないという思いが拭えない。「これは…やはり短期決戦を狙ったものか…」と軍師は口を結んだ。


 あたかも長期戦のように見せかけ、巧妙に本陣の兵力を前線に引き出し、薄くなった背後を奇襲する計画。これは今までのオーガにはなかった戦略だ。明らかに指揮を取る者が変わり、頭の回る軍師がついている。


「まさか…オーガの中に、こんな知恵者がいたとは…そして、人間や天狗をも従える者がいるとは…」


 ゴブリン軍師は思わず顔をしかめた。自らの計略が破られ、相手に裏をかかれるなど、彼にとって耐えがたい屈辱であった。彼は歯を噛みしめ、急いで命令を下すことにした。


「前線の兵を戻せ! 後方防御を固めるんだ!」


 近くにいるゴブリン兵士に命令を伝えようとした瞬間、背後から突如、燃え上がるような熱が彼の視界に飛び込んできた。


 驚愕する間もなく、火の玉がゴブリン兵士に命中し、激しい爆発音と共に兵士は火に包まれた。その火の玉が、オーガ軍の魔術師、リサの放ったファイアーボールだった。


「何だと…!」ゴブリン軍師は驚愕の表情を浮かべながらも、戦況がさらに悪化する予兆を感じていた。


 ティアの率いる混成部隊は、突き進む勢いをさらに加速させ、ゴブリンの長と軍師の背後に迫っていた。


 ゴブリンたちが中央で奮戦する間、こちらへの注意が一瞬でも途切れることを狙い、ティアはその好機を見逃さず、部隊を引き連れ急襲の間合いを詰めていく。


「全員、戻れ!中央で戦っている者たちよ、早く戻れ!」


 戦況が不利に傾くのを察したゴブリンの長は、喉が裂けんばかりに叫んだ。


 その声に応じようとするゴブリン兵もいたが、オーガたちの猛反撃によって足止めされ、思うように動くことができない。


 苛立ちが頂点に達したゴブリンの長は、矛先をゴブリン軍師に向けると、怒りを露わに睨みつけた。その目は血走り、言葉には冷酷な決意が宿っていた。


「お前が前で食い止めろ!後ろに下がることは許さん!もし下がれば、その場で処刑してやる!」


 その言葉に軍師は青ざめ、冷や汗が額を伝い落ちた。恐怖が全身を支配し、震える手をどうにか握りしめ、勇気を振り絞って前へ進む。心の中は不安と絶望で渦巻いていたが、命令には従わざるを得ない。


 震えながらも、軍師は必死に前線へと足を踏み出し、残る僅かな兵力で必死の防御を試みるしかなかった。


 その瞬間、ティアとその部隊はゴブリン軍師の間近まで迫っていた。鋭い目を輝かせ、冷静に相手を見据えながら、ティアは剣を構えた。その視線には、交渉の余地が全くない冷徹さがあり、無言のうちに彼女の決意を示していた。


 ゴブリン軍師は命の危険を感じ、恐怖に駆られながら叫びを上げた。「待て!待ってくれ!戦いは終わりだ…交渉しよう、命だけは助けてくれ…!」


 だが、ティアは冷酷な視線で軍師を見下ろし、その懇願を一切聞き入れることはなかった。彼女の剣が高く振り上げられ、鋭い一閃が空を切ると同時に、ゴブリン軍師の首が宙を舞い、地面に重たく落ちた。


 その瞬間、ゴブリン軍師の身体は膝から崩れ落ち、命の灯火が完全に消えたのだった。


 彼女の冷徹な行動に応じるように、士気はさらに高まり、彼らの目には燃えるような闘志が宿っていた。ティアは剣を鞘に収めると、再び冷静な顔で戦場を見渡し、次の標的へと視線を向けた。


 その先には、まだ生き残り、戦場の中で孤立しつつあるゴブリンの長がいた。

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