第2話 【異世界への目覚め】
意識が戻ったとき、直樹はぼんやりとした視界の中にいた。周囲は暗く、どこか湿った空気が漂っている。彼は心臓が激しく鼓動しているのを感じながら、身体の感覚を取り戻そうとする。
まるで夢の中にいるかのような不思議な感覚が心を覆っていた。ゆっくりと、意識をクリアにするために深呼吸をしようとしたが、空気はどこか重く、肺に吸い込むたびに違和感を覚えた。
「ここは…どこだ?」
直樹は薄暗い空間に目を凝らし、周囲を見回す。目の前にある壁は木でできているようで、自然の温もりを感じるが、この場所に馴染みがない。
どこか静けさが漂うその空間は、彼に不安を抱かせる。耳を澄ませても、微かな物音すら聞こえず、心の奥底に不安感が広がっていく。
ゆっくりと身体を起こそうとしたが、力が入らない。動かそうとするたびに全身に鈍い痛みが走る。彼は自分の手を見つめる。手の甲は引き締まった筋肉に覆われ、以前の自分の手とは異なる感触を持っていた。
指は太く、力強いが、骨格も何か異質なものを感じさせる。指先をそっと動かすと、その動きに反応して硬い爪が感じられた。
「これ…俺の……手?」
直樹は自分の手の甲に浮かぶ静脈を見つめながら、皮膚の質感も思い出せないほどに違っていることに気づく。手のひらはごつごつしていて、指先の爪は予想以上に硬く、まるで武器のようだ。
その感触が、彼の心に不安をもたらす。心臓が早鐘のように鳴り響き、呼吸が次第に乱れてくる。冷や汗が背中を伝い、彼は再び目を閉じて、深く息を吸った。
考えを巡らせているうちに、直樹は頭の上に何かが生えていることに気づいた。驚きと共に手を伸ばし、触れてみる。角は硬く、しっかりとした手応えがある。
自分の頭に角が生えていることを感じながら、ますます混乱が深まっていく。彼の心の中に広がる疑念が、恐怖と合わさって体を凍りつかせた。
「これは…角?」
その存在に戸惑い、いったい自分がどうなってしまったのか考え込む。周囲の光景を再度見渡す。木の温もりが感じられる壁、何かの香りが漂ってくる空間。
暗闇の中で微かに木の香りや土の匂いが混ざり合い、彼の感覚を刺激する。意識をクリアにしようとするが、思考がまとまらず、頭の中は混乱のままだった。
身体は自分のものではないように感じ、周囲の状況もまったく理解できない。
「俺は…人間じゃない…?」
その言葉が彼の心に響き渡る。混乱した思考の中で、彼は段々と自分の状況を受け入れざるを得なくなっていく。自分に何が起こったのか、どのようにしてここにいるのか、彼の頭の中では様々な考えが渦巻いていた。
直樹は静かな闇の中で、自分の存在に対する疑問を抱えながら、動けない身体で思考を巡らせていた。目の前には未知の世界が広がっている。
彼はただ、何も分からないままその場に座り込み、混乱の渦の中で自分を見失わないように必死で思考を整理しようとしていた。