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第12話 【元将軍ティアとの会話2】

夜の静けさが一層深まり、漆黒(しっこく)の空には無数の星が輝き、月明かりが薄ぼんやりと地面を照らしていた。冷たい風が静かに木々を揺らし、焚き火の炎が揺らめきながら、わずかな光と温もりをもたらしていた。


火の弾ける音が、夜の沈黙を時折破るだけで、あたりには深い静寂が(ただよ)っている。


「ティアさん、君に一つ提案があるんだ」


ルークは静かに口を開いた。焚き火の音が、彼の低い声に溶け込むように響く。夜風が彼の髪を揺らし、静かな闇が二人を包んでいた。


ティアはルークをじっと見つめた。彼女の表情には、長年の経験からくる警戒心が色濃く(うつ)っている。


「提案、ですか?」


その声には、油断できないという緊張感が感じられた。


「そうだ。オーガの集落にいる人間を解放し、近くの人間の集落に送り届ける。それが俺の提案だ。」


ルークの言葉は、慎重に選ばれたものだった。火の明かりが彼の横顔を照らし、その決意を強調している。


「その代わり、君には俺の配下として力を貸してほしい。そして、近くの人間たちと協力して、ゴブリンを一緒に倒す交渉を進めてほしい。」


ティアはルークの言葉を受け、しばらく沈黙した。彼女の顔は、焚き火の揺れる光の中で陰影(いんえい)を帯び、複雑な感情が渦巻(うずま)いているように見えた。


その瞳はまっすぐにルークを見据え、彼の真意を探るように光っている。これまで裏切られ、信頼を失った経験が、彼女の心を縛っているかのようだった。


「もし、ゴブリンを倒したら、その後どうするつもりですか?」


ティアの声は落ち着いていたが、その裏には深い懸念があった。


「人間たちと再び敵対し、奴隷にするつもりではないのでしょうか?」


彼女の瞳には、長年の奴隷生活がもたらした不安と苦しみが宿っていた。


ルークはすぐに答えた。


「違う。俺は人間と友好的な同盟を結ぶつもりだ。二度と奴隷を買うことも、攫うこともないと誓う。」


彼の声は真摯で、焚き火の光に照らされて揺れない意志が浮かび上がる。


「君がその交渉を手助けしてくれれば、俺たちは互いに利益を得られるはずだ。君も、俺も。」


ティアの目には、わずかな迷いが浮かんでいた。彼女は長い間、(しいた)げられた者として生き、誰も信じられなくなっていた。それでも、彼女の心の奥底には、変わりたい、変えたいという思いがあった。


彼女はゴブリンが人間の奴隷をどれだけ酷く扱っているかを知っていたし、オーガの滅亡が人間にも不利益をもたらすことは理解していた。


「……わかりました」


ティアは静かに息を吐き、目を伏せてから再びルークを見上げた。


「あなたの誓いが本当なら、私も力を貸しましょう。ただし、あなたが約束を破れば、私も黙ってはいません。」


彼女の声には、冷静ながらも強い決意が込められていた。


ルークは頷き、立ち上がるとゆっくりと手を差し出した。焚き火の影が彼の手に落ち、二人の間に緊張感が漂った。ティアは一瞬ためらったが、やがてその手をしっかりと握り返した。


彼女の手は冷たかったが、その握力にはかつての将軍としての強さが感じられた。


「ありがとう、ティアさん。」


ルークは微笑み、彼女に感謝の意を込めて言った。

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