35.5話/西暦■■■■年■月、その鏡に映るのは
ここでは時間というものは存在しない。空間はかつて文明が滅んだ直後の世界の光景と同一、目の前にいるただ一人のターゲットが指を小さく振り________見えない斬撃が、ツキミの頬を掠める。
「あぶねぇッ____!」
勇敢なことに。世界中から帝都の討伐隊に志願した者は多い。
未熟な子供に、世間を学んだだけの大人がいれば、連携のとれない魔法使いから、もっとたちの悪い魔法使いまで。千差万別の戦力が揃ってもなお、この神には攻撃が通ずるどころか届かない。
「schneide」
「はっ............!?クソッ、また攻撃パターンが変わりやがった!!」
部隊のほとんどが全滅。指揮前にかの斬撃で首が飛び、残るは月見の男が二人と、見習いを自称する青年のみ。神はここまでしぶとく生き残ったことに驚いたらしく、戦いの最中たまに指先に現れる鏡を見つめては、今か今かと何かを待ち続けている。
何時間戦いが続いていることか。ここでの一時間は、向こうでは何日に換算されるのだろうか。そんなことを考える余力はない。今はあれに通ずる攻撃を探さなければと、三人は再び杖を構え________突如空間に映し出された映画のようなスクリーンに、動きが止まる。
「決めました。あなたたちは意外と根性もおありのようですし、ここで一つ縛りを課してあげましょう。もちろん帝国代表の皆々様には、人質なんてものが通じないのはご承知の上です。ですので、人を選びました。おとなしく死を選ぶのなら、映像空間に閉じ込めた彼女を解放してあげます。」
「........................」
「諦めないとしても解放しますよ?魔法使いたちの苗床として、ですが。ほら、彼女って人間の尊厳を奪われている姿の方が面白いでしょう?私もあなたたちの醜い感情劇を見ていたら、そういうものに影響されましてね。」
スクリーンに映されたものとは。ホコリが舞う部屋の中心に、小さな椅子がぽつんと一つだけ置かれている。そこには見覚えのある女が一人、複数の縄で拘束されていた。
あの日青年を送り出し、ゲーム機を買ってこいと叫んだ馬鹿女。今じゃ我が娘かと見間違えるほどの愛らしさもある、月見理愛子という女の姿だ。さらに神は言う。ここでの一時間は向こうでは一ヶ月に変わる、と。
時間が長引けば長引くほど、囚われた人間の体力は消耗していく。原因は空腹からストレスまで様々だ。
「今の彼女を自由に動かせるのはわたしだけです。私が死んだら、もしかすると永遠に解放されないかも...........なんてね。では、戦いの続きといきましょうか。」
自害なんて、そんなことを考える暇もなく。次の斬撃が三人を襲う。




