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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第一章/出会いと再会、青年の始まり
4/40

4話/帝都歴10000年4月、10000年ぶりの再会と同窓会

創造神が目覚め、まだ一週間と数日しか経過しておらず。ツキミはあれから教え子として利用されまくりの日々を送るのかと思いきや、案外そうでもないらしい。

彼女は10000年前の携帯電話を何度か使っているようだが、電波が繋がらないと嘆いては机に突っ伏すばかり。彼女の嘆きにも、誰もが同情することだろう。帝都は他の国の追随を許さないほど経済・技術が発達しているが、ここのところ最近は電波が上手く伝わらない日々が続いているらしい。

皇帝自ら原因を探るも、電気系統の魔法に支障は無し。帝都中央だけに電波が繋がっている状態から、一つも進展はない。

この事実を創造神に伝えようか悩むも、伝えたところで彼女はまた皇帝を殺しに行くと言い出してしまう。この一週間、半ば強制的な形で同居生活が続いたことで、ツキミも創造神の性格をよく理解できたらしい。余計なことを言わないように、後で事実を隠したことを責められないよう上手く立ち回ること。

ハードモードすぎる人生だと落ち込んでいると、今日は電波がギリギリ繋がっていたのか、ダイヤル式の電話機が鳴り響く。今度ばかりは待たせていられないと出ようとすると、創造神が勝手に受話器を手に取った。


「もしもし、ナーサリー。お前から電話が来るのを待っていたよ。10000年ぶりに目覚めたことだし、どうだ?お前の好きなワインでも一杯飲まないか?もちろん奢りはお前だからな。」


相手は最初から分かっていたのか、親しい雰囲気で話している。しかも相手は最初で最後と言われる賢者が一人、来る者拒まず去る者殺す、なんて物騒で有名なあのナーサリーだ。

そんな有名人相手にすら親しく話しかけることができるとは、創造神様はいったいどこまで偉大な方なのかと、唾を飲み込むほどの緊張に襲われる。もしや自分は今日に至るまで、この人をぞんざいに扱いすぎたのではないか。そんなツキミの不安は、なんとも微妙な形で終わることとなった。

.......................................次の週、四月最後の日。月の最後ならちょっと軽く散財してみたりとか、友達とたくさん遊んだりとか、少しはめを外すのにちょうどいい日だ。そのはずだったのだが。


「僕の大事なイザナミが起きたことを祝して!」

「未だに幻永の妻を名乗る馬鹿の愚かさを......祝して?何か違うな、これでいいか。」

「我が主の目覚めを祝して。」

「私の可愛い親友が、わざわざ会いに来てくれたことを祝して♡」

「乾杯!」


何故か酒が苦手なツキミを連れて、帝都でも有名な居酒屋で10000年ぶりの同窓会が行われた。

連れてこられるだけならいい。酒が苦手ならカラオケで気分が紛れるように歌いまくったり、とりあえず好きなものを頼みまくったり、寝たふりをしたり。基本はそういう戦術でこの場を逃れてきたツキミだったが、今回ばかりはそうはいかないようだ。


「この時代だとね、すでに結婚していても他の人と結婚することができるんだ。これも僕とクソ兄貴で話し合った結果、完成された法律の一つだよ。私情が混じったけどね。」


皇帝、ゲンエイ。この世界の最高権力者であり、ツキミの父親。

最強の魔法使いの一人と称される彼は、この帝都唯一の門番である男が非番の日は自ら門番を担当することが多い。そのため帝都を攻めた者たちが運悪く皇帝の日に当たってしまった時は、部隊の九割が壊滅。

残った一割は拷問という名の遊び道具として監禁され、今現在も帝都の地下では長く生かされている捕虜たちで蔓延している。

皇帝が飽きるその瞬間まで、捕虜たちは生かされるのだ。なんとも残酷な仕打ちではあるが、そも平和的な帝都を攻め落として独裁国家を築こうと企む輩の心配など、誰がするはずもない。このメンバーの中で、一番マシで優しい人だろう。


「............ゲンエイが先日お前に贈った香水、つけたのか。」

「ああ。いい匂いか?」

「やっぱり似合わないな。今度俺がお前に似合うものをすべて見繕ってやる。ついでに俺の家に泊まりに来るか?」


太上皇、セイラ。帝都元年から100年のみ在位していた、元皇帝にしてゲンエイの実の兄。この帝都の壁が突破された場合の、第二の防壁。兄であるならば弟を超えてしかるべきという信条から、ゲンエイに対しては10000年より前から敵意を抱いている。敵意がより強固なものになったのもその時で、弟の婚約者だった創造神イザナミを愛してしまったからだそうだ。

今も食事をしながらゲンエイの喉元に穴を空けようと攻めているが、ゲンエイはそんなものを気にすることなく、勝手に空けさせてはすぐに修復しての繰り返し。

最早意味のない喧嘩なのではと思っても、それは決して口にしてはいけない。二人とも"互いに仲がいい"というのは他者に指摘されずとも自覚しており、もし指摘しようものなら、人によっては本当に殺される。実際に帝都正門の前で死者が出ているのだから、これは間違いない。

とはいってもその死者とは帝都外からの刺客であるため、これも特に問題無し。この中ではまあまあマシな方のギリ常識人枠だろう。


「だからこの魔女に会いたくないって言いましたよね!?なんで私なんかを気に入るんですかぁ!?」

「人外のくせに人間ぶってるところ♡」

「お前ら全員不老不死の時点で同じムジナだよなぁ!?もうお持ち帰りすんじゃねぇ、クソ魔女!!!」


名称不明、帝都の使用人。創造神がマジマという呼称を用いていたため、ここではマジマと呼称する。

マジマはこの帝都唯一の門番である。帝都は大きな円形で建設された都市であり、その南に位置するのが正門。その他三つの方角に位置する門は、非常事態に備え強固な造りとなっている上に皇帝の魔法障壁によって保護されており、基本は正門のみの守りに集中している。

皇帝の魔法障壁は如何なる技術でも攻略不可能のため、外部は正門の攻略が無難だと判断するが、マジマという男は帝都建設以来外部の侵入を一切許していない、優秀な門番だ。

攻撃魔法とは杖、または指で正しく相手に狙いを定め、詠唱することでより強い力を引き出すもの。だがこの男は詠唱の一切もせず、視線で追うだけで的確に刺客を殺すという、どんな天才でも決して辿り着けない域に達した魔法使い。皇帝と太上皇もお世辞無しで褒めることのできる、この時代唯一の存在だ。


「そうだぁ!ねえイザナミ、私たち二人で結婚しない?私たち体の相性も抜群だったでしょ?」

「どこの女の話だ。お前に恥ずかしい姿を撮られたことしか記憶にないぞ。」

「あれ、そうだっけ?」


賢者、ナーサリー。ゲンエイとセイラの二人をこの時代の最強と呼ぶのなら、ナーサリーは史上最強と呼ぶべき存在。記録上で最も強大な力を持つ女性だ。

彼女の魔法は謎に包まれている。だが一つだけ分かるのは、特等地の彼女の屋敷に無断で立ち入ることは許されない。童話と自然が侵入者を食らう。そんな噂話は、言うことを聞かない子供たちへのちょっとした脅かしにも便利と言われるほどだ。

実際にナーサリーの屋敷に無断で近付いた者は例外なく消え、間違えて侵入しただけの子供でさえも、一日の入院を強制される。当の本人たちは一日程度の入院では消えない心の傷を負ってしまい、彼女の敷地は最も死人の出る場所として知られるようになった。

だが同時にナーサリーは館の談話室にて、帝都住の相談も聞き入れる心優しい人物でもある。事前に連絡を入れれば、一時間以内の遅刻であれば怪物も襲うことなく、誰でも安心して館に立ち入ることができるそうだ。

後半二名は常識人とまでは言わないが、まあ普通と言えなくもない。問題は最後の一人だ。


「本当にお前らは変わってないな。それでこそ、我が月見家の元同居人だ。そういえば幻永、なんでこのガキにツキミの名を与えたんだ?この時代は名字すら存在しないと聞いたぞ。」

「彼の母親がその名を望んでいたから、僕から与えたんだよ。親の意向を無視するわけにはいかない。名字がないのは......なんでだっけ?」

「お前が皇帝とは思えんな。頼むから五百回死んでくれ。」


創造神、イザナミ。国問わず天地創造の神として崇められてきたその人であるのだが、彼女が言うにただの人間らしい、時々四人との会話が噛み合わず、ゲンエイが10000年前より保存し、改めて贈られた結婚指輪の存在すら忘れていたようだった。

目覚めたばかりの彼女は大半の記憶が欠落しているらしく、自分がどの土地で産まれたのかさえも覚えていない。四人との出会いもうろ覚えだが、ろくでもない出会いだということと大切な人だというのは最低限認識できているようだ。皇帝はあからさまに表情だけで不満の抗議を訴えているのだが、イザナミがそれに気付くはずもない。

そんな五人の同窓会。ツキミは居心地悪そうにしながらも、ナーサリーの奢りということもあり遠慮なく唐揚げばかりを頼んでいる。居心地の悪さを誤魔化すためでもあったが、せっかくの人の奢りだというのに遠慮するのは勿体無いという図太い精神も持ち合わせているようだ。遠慮なく唐揚げを食べるツキミを眺めながら、ナーサリーは自分の胃を気にするように胸の部分を擦る。


「............はぁ。若い子っていいわね。」

「私たちも肉体関係は若いだろ?」

「肉体年齢はみんな三十路越えてるわよ。老いてるわよ、完全に老いてる。見てるだけで胃もたれしちゃうけど、若い子が元気な姿も見てて気持ちいいものね。」


案外本当に人間らしい部分も相見えたことで、この人は本当に適当に扱っていい人なのだと、改めて認識したツキミであった。

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