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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第一章/出会いと再会、青年の始まり
3/40

3話/帝都歴10000年4月、人生相談は受付終了

両者共に杖を構え________ることなく、何故か素手で構える。その姿はまるで最強の魔法使いと創造神とは思えず、むしろ狼のように思えた。徐々に距離を縮め、如何なる戦略で殺そうかと獲物を睨む、ただの獣。あれを止めなくていいのかと使用人に訴えかけるも、普段は温厚な使用人も何故か楽しそうに笑みを浮かべる。

これから私好みの愉悦の時間が訪れると言うが、青年にはその一切が理解できなかった。勝手に人の家の敷地内で、穏やかな時間を過ごすための茶会の場所としてセッティングしようと思っていた場所を更地にする気かと訴えたいほどだ。しかしそんな訴えなど微塵も通ずるわけもなく、ただの獣へと変化した二人はただ一言だけ。


「私の腹を満たす、美味しい肉に仕上がってるだろうな?」

「僕の星に食われるほど腕は鈍ってないだろうね。」

「(............神様って人間を食べるんだ。僕の星ってなんだろう。お父様の星はあの神様だよな......?自分でも言ってたし。)」


ツキミはその会話に疑問を持った。感動の再会みたいな雰囲気の時、皇帝である父は確かに、創造神を『僕のお星様』と呼んでいたのだ。これからその星と戦うのに、僕の星に食われるというのは矛盾が生じる。それでは創造神が自らを食うみたいな表現になるんじゃないか。

そも、ツキミは皇帝の魔法のことなど理解すらしていない。以前説明される機会があったが、日常で使える魔法だけ使えたらいいと言って、彼の魔法のすべてを理解していない。

故にツキミが理解したのは、今この瞬間。人類が常日頃から攻撃魔法なんて物騒なものを学ばなかったということもあるが、まさか世界の時間さえ変えてしまう魔法を初撃で繰り出すとは思わなかっただろう。太陽に照らされた美しい草原が夜闇へと切り替わり、夜空には見たこともない美しい星が満遍なく輝く。そのうちの一つがふと光を消したと思えば、次の瞬間には創造神の右半身が何かに食われたように消えていた。


「............今のは?」

「ツキミ様はご存知ないのですか?勉強不足のガキはこれだから......ゲンエイ様の魔法は、星を操る魔法です。腹を空かせた彼の星が、対象を食らうだけのシンプルな魔法ですが、これもこれで趣味が悪いんですよねぇ。ほらだって、星の咀嚼音と笑い声が聞こえてくる。」


夜空からは気味の悪いことに、少年とも少女とも思えない子供の笑い声ばかりが聞こえてくる。もっとちょうだい、もっと食べたい、こんな良質な肉は久しぶりだ。子供のように餌を欲しがる星を可愛がるように、皇帝は容赦なく命ずる。


「食え。」


このままじゃ創造神が食われると、思わず前に一歩踏み出したとき。


「お前の肉より、そっちの星の方が美味しそうだ......!」


何もない空間から溢れ出す血。踏み出していたツキミもその赤い血で染まり、寝間着として愛用していた白いネグリジェは見る影もない。

にも関わらずツキミの瞳は、創造神を凝視している。創造神が骨を噛み砕くような音を鳴らしながら何かを口に含め、それを飲み込むまで。案外味はなかったと文句を言っている彼女の姿から、ツキミは何故か目が離せなかった。誰がどう見ても人食いの化物と判断するそれを、美しいと感じてしまったがために。

食われたはずの半身の肉体は再生を始め、夜空は急速に光を取り戻す。皇帝は度が過ぎると見えない何かを叱っていたが、食えと命じたあなたもあなたで度が過ぎるのではないかと言いかけ、その言葉をぐっと堪えて飲み込む。両者ともに一撃のみの戦いだったが、最強と呼ばれる魔法使いの力の一端の目撃者となったツキミの人生は、ここを起点に大きく変わるものとなった。

帝都歴10000年4月、久しぶりの血を浴びて嬉しそうに微笑む神と皇帝。臆するどころか見惚れた青年に、神はニヤニヤと奇妙な笑みでツキミに近寄る。


「お前、魔法が好きだろ。」

「日常でよく使いますから......まあ。」

「敬語はいらん!気持ち悪い。よく見たらお前、皇帝なんて名乗る馬鹿に育てられるだけの力は備わっているようだな。暇潰しに私の教え子になれ。」

「............なんで!?」


度胸がある。たったそれだけのことで神に好かれてしまった、可哀想な青年。

ここから彼の伝説が始まる......かどうかは、彼の運命と神の気まぐれ次第。確かに感じたのは、この神様はろくでもない神様だということだ。

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