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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第四章/神を敬う時代はとうに終わりを迎えた
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25話/帝都歴10005年12月、妖精の祝福

「妖精を殺すんですか?」


こくりと頷くツキミ。抵抗があるのか、理愛子は決して踏み入ってはならないとされる魔法障壁の手前で立ち止まった。

時は12月。彼らは当初の目的地であるキメラと妖精の国を囲う魔法障壁近くに到着、しばらくの徒歩でようやくここまで辿り着いた。最初にここに訪れた理由として、まず二人の杖の新調のため。魔法使いが持つ杖とは常に一流である必要がある。少しでも魔法の出力が落ちようものなら、それは三流以下。

本来なら金を支払うことで簡単に杖を購入できるが、もっと器用な魔法使いなら自分で作ることも可能とする。しかしそれは人の心を取り戻したい人間には合わない方法。


「妖精の中身は人間とは違う。確かに臓物も骨もあるが、死ねばそれらはすべて溶けて血となる。その血が杖の材料になるんだ。魔法の魔の字も知らないような他者に任せるより、魔法を知る自らの手で工夫を凝らせば凝らすほど、杖はより僕たちの魔法出力を引き上げてくれる。嫌なら僕に任せてもいい。」


ツキミは特に抵抗もない様子。説得も無理な話かと諦めた理愛子は、障壁を潜り抜けた。

先程まで二人が立っていたのは草原。その広大な土地を占領するように、巨大な障壁がある一帯のみを囲んでいる。その線を越えてしまえば、視界は先程の美しい自然の地から異界のようなものへと切り替わる。

帝都によく見られるビルという建造物が建ち並び、誰かの焼け焦げたような死体が瓦礫に埋まっている。空を人と変わらない大きさの妖精たちが飛び回り、キメラと呼ばれる人種は二人一組を凝視する。

また外から人間が訪れた。あいつらのせいで昔の生活が失われた。殺してやる。その皮を剥ぎ取ってやる。彼らの会話だけで治安なんぞとうの昔に失せたものと分かるのだが、ツキミはそれらを恐れずに彼らに話しかけようとした。もちろん、理愛子はそれを止めようと腕を引っ張る。


「ま、待ってください!」

「怖がっていたら進めないだろ。それによく見ろ。キメラという人種は頭部が変わっているだけで、体そのものは人間のものだ。大昔、魂もない死体の蘇生を試した結果というやつだよ。」

「............昔は同じ人間でも、怖いものは怖いです。お菓子を詰め込んだような頭に、死体の元の頭部のサイズに合わせたライオンやウサギの頭。他人のせいだとしても、今の彼らに接することはできません。」

「だが言葉は通じる。何かあっても僕が守るから、どうしても怖いなら目を瞑れ。」


結局彼は理愛子の言葉に意にも介さず、異種族たちと会話を始める。とあるイベント参加の申し込みをしているようだが、理愛子には何がなんだかさっぱり。

かろうじて分かるのは、これから参加するらしいイベントは毎日開催されているということ。こんなイベントに参加するような奴は金稼ぎ目的、またはただの快楽殺人者ぐらいということ。

嫌な予感で彼女の体は震える。しかしツキミは一切動揺も示さず、そのイベントの参加を申し出た。


「何が、あるんですか?」


理愛子が恐る恐る聞くと、ツキミはまだ説明していなかったか、と気付いたようにイベントの説明が始まる。


「妖精殺しだ。正当な殺しが認められるのは、この妖精殺しのイベントのみ。罪人としてこの国の博物館だった場所に収容された妖精がいるんだが、そこからより質のいい妖精を選んで殺すんだ。君も参加することになってる。」

「しませんよ!?そんな物騒なイベント!!」

「いいや、君にも参加してもらわなければ僕が困るんだ。無法地帯で女一人残せば、どんな目に遭うか分かったもんじゃない。というわけで不参加は諦めろ。」


内容はなんとも物騒な上に、しかも参加者以外はその実態を詳しくは知らないそうだ。興味がないからとうの昔に忘れた、とも言うのだろう。

彼女もこのイベントのターゲットとなる妖精には、少し疑問を感じたらしい。

かつては神聖なものとして扱われた妖精が、何故この時代においては殺戮の対象となっているのか。罪人とはどういう意味なのか。この国に訪れてまだ一時間にも満たないが、二人が見た妖精は高所を舞うように飛ぶだけの純粋な生物というイメージ。

その妖精がどのような罪を犯したか、彼女には想像もできなかった。しかしそれはイベントに参加した瞬間に覆されることになる。

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