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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第三章/人類と神の決戦、その前日譚
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21話/帝都歴10002年2月、あの日本当に死んだのは誰?

病室で目覚めたツキミには複数の事柄が伝えられる。帝都歴10001年12月、複数の生命が消えたことが確認された。最初はその生命をイザナミかと思ったが、その人は病室に現れた。あの日心臓を刺され、直後灰となってしまった彼女は別の体で生きていた。その人の魂が消えてさえなければ死とは見なされないのだが、そうなればおかしいのだ。なればあの日、政府が報告した死者の数はどうして"誤差"が生じたのか?

亡くなった商人の数は13、名称不明の死者の数は1。計で14名。商人の数は一致していたが、もう1名の数は不一致。死体と断定されたものはあれど、当の本人はツキミの病室で林檎を食べてばかり。他に死体が見つからないらしい。

__________さて。

あの日本当に死んだのはどこの誰なのか。高性能索敵魔法の応用のため、ゲームで言うところのバグはありえない。死者が出た場所も、ツキミが倒れたあの場所で合っている。ゲンエイとナーサリーは昏睡、セイラは皇帝の代理、イザナミは他人の体、ツキミは奇跡の生還。

............脳内に過るのは、あの男。名前も経歴も語らなかった、長年共にいてくれた使用人。しかしそれでは辻褄というか、何か違う。

あの日、結果的に自分を救った赤い何かが使用人だと断じるのは、違うのではないか?

彼女の声が、情報が足りない彼の思考を遮る。


「ツキミ、聞いてるのか。言っておくが私は患者にも容赦しないぞ。」


いつもと同じ服装だが、少し幼くなったような。人並み程度の髪の長さ、青空を宿したような瞳。

一昨年までテレビに、去年はたまに新聞で見かける程度だった娘の姿だ。確か歳は20を迎えたか迎えてないか程度だっただろうか?無垢を突き通してきた子の姿にも関わらず、その中身は相変わらずの厳しさがある。


「その患者は首を落とされていたんですがね。イザナミが死んだのを見てショックだったんですよ?しかも帝都で行方不明になっていた、王族の娘の体を魂の器にするなんてね。どうせならあのまま一回死んで、人の心を学びに行ってほしいぐらいだ。」

「これが人の心の消失の証拠と言うなら、それは違うな。魂の入れ替え及び同居というものは、互いの契りがなければ成立しない魔法だ。私を責めるなら、元の体の主である彼女も責めるのが筋じゃないか?」


イザナミ改め、月見理愛子。別人の体をしばらく借りていく以上、呼称も変えなければならないという考えから、彼女は旧名を名乗っている。

体の主の名前は不明。唯一知っているとされるゲンエイが目覚める日は遠く、他に知ってる者は少ないだろう。何せ彼女が行方不明になったのは昔の話なのだ。死んでいてもおかしくない人間の名前を覚える物好きは、家族や友人以外に存在しないもの。いつか主が意識を取り戻すその日まで、本来の体の主の情報すべてを知ることはない。

彼女の状態はさておき、ツキミは現在去年の12月の事件の詳細を語られていた。ゲンエイが半ば本気を出さなかったのも影響したのか、皇帝と神の戦は皇帝の惨敗。神は学べることがあってよかったと微笑みながら、その場から姿を消したという。その場に取り残されたセイラはイザナミだった塵をかき集め、駆けつけた兵士たちにツキミ含む三人を引き渡した。

例の塵は現在、屋敷内にて保管されている。


「いつかは再生してみせる。あれの姿を彼らに見せてしまった以上、私も本当の意味で責任をとる必要がある。その時消えるのは、この娘ではなく私でなければならない。」

「............?」


なんて言ってるが、はたして本当に再生は可能なのだろうか。長い時を生きてきた彼女でも、さすがにその技術は持ち合わせていないだろうに。それよりもツキミが気になったのは、彼女の消えるという言葉だ。


「消えるというのは、どういう?」

「文字通りだ。10000年の時が過ぎた今、人類はさらに進化を遂げなくてはならない。ある計画を成し遂げる最初の段階として、私は断罪の神と相討ちで死ぬ必要がある。その後は............うん。魔法使いたちの殲滅は皆に任せて、あの馬鹿どもが早く来てくれることを祈るとするかな。」


自らの死すら計画の一つとする、強固な意思。それとは別に思い出すのは、セイラの言葉。

彼はどうして共に死ぬべきだったと口にしたのか。あの言葉は彼女の計画と関連するものなのか。この疑問には答えてくれないらしく、彼女は病室を出ていく。行き先はおそらく、ゲンエイの病室だろう。

ツキミも重い体を起こそうとするものの、どうしてか体は動かない。痛みも何も感じない、血は充分に巡っている。追いかけようとする意思はあるのだが、ツキミの体は頑なに言うことを聞かず。

そうしてしばらくして、ようやく自分のおかれた状況を察した。


「............あの日、あなたは死ぬ覚悟でナーサリーを止めようと考えていたんですね。その役割を私に与え、ナーサリーが止まれば神を殺す気でいた。その覚悟ごと、僕にも背負わせてくれればいいものを。」


隣の病室から聞こえる師の泣き声が、彼に道を示す。

これからやることは、師を捜すことではない。師が今までどこにいて、何をされて、いつから帝都にいたのか、それを問い詰めることでもない。自分から死を選ぶなどという納得のいかない答えを引っ込めさせるか、納得のいく答えを提示させること。これらも優先すべき事項なのだが、より優先するべきなのは魔法使いになることだ。

他者がツキミを魔法使いと呼べど、彼にとって自身はまだ見習いに過ぎず。まだ誰も知らない魔法使いとしての在り方を見つけ、それから少しずつ学ぶべきことを学んでいこうと考えた。そうすればいつかは、彼女が例の計画を実行してしまう前に、もっとマシな方法が見つかるのなら________


「ん?僕、なんでたった一年の付き合いの人間に、そんなことをしようと考えてるんだ?」

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