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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第二章/最終試験の結末、星の馴れ初め
18/40

16話/帝都歴10001年12月、一人の魔法使いが消えた日

「って、寝てる場合じゃねぇだろ!!!俺がここで寝たら、あの人............!」

「もう行った。それから一人称も僕に訂正しておけ。興奮したり慌てたときに性格まで変わるそれ、悪癖すぎるぞ。」

「むっ、あ、せ、セイラさん............」


顔をしかめ、すぐに声の主に気付き冷静を取り戻す。皇帝である父には多少は逆らえど、兄であるセイラには頭が上がらないらしい。

帝国という国家が成立したのも、彼を魔法使いにすることを反対したゲンエイが納得したのも、すべてはこの男のおかげなのだ。セイラは他者とは考えが合わないことが多く、帝国を築く前もナーサリーとマジマの圧に負け、仕方なくゲンエイと共に帝国の基盤を作り上げたらしい。

それからはゲンエイとは反論して反論されての関係が続いたそうだ。以前より同じような関係だったが、創造神イザナミが眠りについてからはより悪化したと、当の本人たちが話している。ツキミ自身もあまり詳細を聞かないようにしているが、賢者ナーサリーの矛先は魔法使いであるセイラにも向いているはず。

この際関係ないことだろうと事情を聞き出した方が早いと考えたツキミの思考を、セイラは察したようだ。


「............俺は」

「ん?」

「俺は元々、イザナミの処理に肯定的な人間だった。金にもならない戦力は不要だろう?だが神獣を封じたその体は、魔法使いにとっては価値があった。それがナーサリーの怒りに触れている。お前も本人から聞いたんじゃないのか?それも、ナーサリーの目の前で。」


ナーサリーの目の前で、ふと一日で終わった戦争の最後を思い出す。


「西暦に存在した魔法使いは、後継者のために夫妻関係なく多くの人間を誘拐し、子を作らされた。特に私みたいに特別なものを封印された女は特別でなぁ、昼夜問わず人間ではない何かを産まされたものだよ。」


紛れもない、イザナミ自身が言ったその言葉を。あの日のツキミはそうなのかと聞き流しただけで、あの話題も自分をどんな魔法使いにするのか、それを知るための前提話題に過ぎなかった。

セイラはその話こそが、今のナーサリーを突き動かす原因だと言う。イマイチ理解していないツキミに対し、セイラは呆れながらもその詳細を説明した。

時はまたまた西暦以前にまで遡るのだが、彼女は魔法使いの殲滅を目指した第一人者。そこまでは誰でも知っているのだが、彼女が殲滅を目指した理由の詳細までは把握していなかった。今の話を聞いて理解したことは、イザナミとナーサリーもその被害者だったというわけだ。それだけでナーサリーが10000年の時を経て、あのような状態になるとは考えられない。

それがどれだけ辛いものだとしても、10000年も長い時間が経過したのなら。復讐相手はもうどこにもいないし、魔法使いの在り方も変わっているのだ。そこまでは無知の考えだと、セイラも当たり前のように見抜いてそう言う。


「本当に馬鹿みたいなことを考えてばかりだな。10000年なんて途方もない時間を生きたのは、確かに俺たち五人の魔法使いだけだ。殺し損ねた魔法使いたちはとうとう不死の方法を知ることなく死んだ。それはどうでもいい。」

「(さらっと見抜いているし............じゃあ何が問題なんだ?)」

「問題は、ナーサリーは誰よりもイザナミの痛みと怒りを理解し、今になって例の神にその感情を引き出されてしまったことだ。その感情は............誰よりも強かったはずだ。ゲンエイと比べろというのは無しだぞ。今は詳しいことは聞かず、ただナーサリーを殺すことだけを考えろ。」


ただ冷酷に。ツキミに疑問を抱くことは許さないと、そう言った。それでも彼は一度気になったことはハッキリさせなければ納得できない性格にあり、確かに感じた二つの疑問を素直にセイラにぶつける。

その神とは、例の森に封印されたと言われる復讐の神、または断罪の神のことかと。本当にナーサリーを殺す以外に、彼女を止める方法はないのかと。


「............止める方法があるなら選んでいる。だが、あの神と戦ったのは歴史上イザナミただ一人だ。しかしその神は一切攻撃をしなかった。イザナミから聞いた情報だけでは、ナーサリーにかけられた魔法の正体など解析できるわけがない。だから殺すんだ。」


セイラは普段は決して浮かべないはずの表情をしていた。普段は怒るか嫌みたらしい態度ばかりとっている彼が、だ。

寂しそうな、苦しそうな。そんな表情をしていた。

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