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五人の魔法使いと見習い青年  作者: 維申
第二章/最終試験の結末、星の馴れ初め
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9話/帝都歴10001年11月、一人の魔法使いが誕生した

1年と半年の時間が過ぎれば、人は嫌でも成長するものだ。行方不明になった王族の娘の話題も、今では雪に埋もれ忘れ去られた。今を生きることしか考えてない帝国の民にとっても、この程度は話題の一つにすらならなかったのだろう。

それは青年も同じこと。あの日から同じ魔法を永遠と繰り返し修行しなければいけないのだから、話題を気にする暇があるなら未来のために魔法を学ぶ必要性があると判断した。


「............誰もいない館は寂しいな。20歳を迎えたとはいえ、僕もまだ子供ってことか。」


そう。青年は、ツキミは何があろうとも、それが例え他者に与えられた目的だろうと、目的を達するまでは決して他に目を向けないと決めた。創造神イザナミと賢者ナーサリーが姿を消した半年前から。

それは8ヶ月も前に遡る。帝国内には数多くの森が存在しているのだが、そのうちの一つにはこの世のものとは思えない美しい湖が存在していた。その湖の中心には約10000年前、この世界を破滅へ追い込んだ"断罪者"と呼ばれた神が封印されているのだ。しかし封印してもその力が止まることはなく、その森全体が毒を帯びた魔力に支配されてしまった。

帝国が調査中のため立ち入り禁止を命じた多くの森のうち、どれが該当する場所かは誰も知らない。人々もこの件には誰も踏み込むことなかれと記憶から消していたのだが、事件は起きた。

ただの人間でも封印に綻びがないか確認するために、第一人者として賢者ナーサリーが、断罪者が封印された森へ立ち入った。当然彼女の魔法ですら毒は防ぎきれず、創造神も賢者の館にて看病を続ける日々が続いた。

その日常が崩れたのが半年前。突如姿を消したナーサリーを追うように、イザナミはマジマを連れて旅に出た。長い旅になるだろうが、戻るまでは強い魔法使いになって父親を喜ばせてやれと。あの日の約束を守るために、ツキミはひたすら師より教えられたことを繰り返してきた。

今日行われるのは、皇帝ゲンエイによる最初で最後の試験。ゲンエイの星を突破し、ゲンエイに三撃入れることができたなら、一人前の魔法使いとして認めるというものだ。しかしツキミにとって一人前の魔法使いというのはどうでもいいもので、彼が求めるものはその先にある。その先を見据えるように、ツキミは電気を纏った拳を強く握りしめた。


「............今日こそいける。お父様、準備はできました。」

「今回も容赦はしないからね。今回も星はお前の肉を堪能したがっている、気を付けろ。」

「先に不死を学んでいるので心配は無用です。いきます。」


静かに、ただ静かに________気配を感じ取る。星の元へ導かんとする人の形をした何かは相変わらず見えないが、何がどんな意識を持ってこちらに迫ってくるのかを感じ取る。ここまでは出来て当然、ここからが本番だ。

見えないからこそ勘という運要素を頼りに動かなければならない。敵が最初にどこを狙うか、見極めるべきタイミングはどこか。ツキミはこれまでその全てを徹底してきたが、相手はゲンエイという最強の魔法使い。彼を相手に一撃を入れることはおろか、接近すら叶わないのが現状だ。例外なく今回も、彼が駆け出した直後に四肢を食いちぎられた。

夜空の星はツキミを嘲笑う。


「今回もダメ!」「一ヶ月に一回の試験、不合格!」「魔法使いにすらなれない!」「本当にあの子の教え子なの?」「役立たずー!」

「ツキミ、星の言うことは気にするな。君が何度でもやり直したいなら、今日が終わるまで何度でも相手してあげよう。少なくとも今の君の強さは、そこら辺の魔法使いを名乗るだけの馬鹿より目を見張るものがある。誇りなさい。」


反対に星の主は、地道に成長していくツキミを正しく評価する。実際に彼はこの半年で、多くの功績を残してきた。帝国内でありもしない陰謀論に動かされ反乱する者を殺すこともあれば、一種の治安維持のためとして放置してきた暴力団やギャングの暴走を止めたこともある。電気、水道が修理されるまでの間、自らの魔力を流し続けることで民の生活を維持させることもあった。

もちろん表彰されることはなかった。それは都市勤務の兵士たちにもできることだったというのもあるが、皇帝曰く、


「人として当然のことをしたのだから、これを特別扱いしてはならない。相手が息子ならなおさらね。............一回特別扱いしたら、妻に五百は越えるほど殺されたこともあったし。」


とのことだが、最後辺りに反省の意も含めていたのは気のせいだろうか。

とにかくツキミという青年は、他の者よりも小さな功績を積み上げてきた。そんな彼ですら皇帝より試験を与えられているのは、外地は現在戦争が続いているためである。それに紛れて帝国を陥れんとする輩も多いが、そんな輩ほど平和嫌いの地位狙いの馬鹿しかいないというのが皇帝の認識。そんなバカほどずる賢く、どんな天才ですら死んでしまうのがこの世界だ。

最強と言われる自分、またはセイラに勝てないのなら、一人前の魔法使いとして外の世界へ行く資格すらない。ツキミの目的すら見抜く皇帝の厳しい言葉は、彼を何度も奮い立たせた。


「さて。どうする?」

「............もう一度お願いします。」

「一応理由を聞いておこう。君が外に行きたがる理由はなんだ?強くなるためという目的ならここで果たしているし、誰かを救うためなら君はもう満足している。」

「そうですね。強くなるというのはあくまで、本来の目的を達するための手段。誰かを救うのも、自慰行為に過ぎません。」

「では、その本来の目的は。」


彼が諦めない理由。改めて問い質されたツキミは、すでに修復を終えた体で、赤く染まった地面から立ち上がる。

星たちが嘲笑う声は未だに響いている。彼のこれまでの努力をへし折るように、何度も何度も殺してきた者の声だ。星の性格の悪さに屈することなく、ただひたすらに自分の人生を勝手に決めた師に向かって、ツキミは叫ぶ。


「自分への教えを放棄して、勝手に消えたあの神様を捜して連れ戻すためです!あそこまで勝手な人、今まで見たことないですよ!?殴りはしませんが、一回殺したいぐらいです!!!」

「............身勝手なことだ。でも僕も同意見ではあるよ。彼女の身勝手さに振り回されて従った結果が、10000年前の神との戦い。うん、同情する。同情するからこそ僕は、君の目的を否定することなく今日まで相手してきたんだ。今の僕が唯一の星を追いかけるのは難しいからね。」


ああ、また同じことを言ってると、彼の発言が妙に引っ掛かる。ゲンエイは自らの魔法で生み出したものも星と呼ぶが、それ以上に愛おしい存在の神様に対しても星と呼ぶ。僕だけの、唯一の、どれも自分にとって特別なものだと言ってるように聞こえるものだ。

誰が誰をなんて呼ぶのかは、実際のところどうでもいい。星と呼ぶに値するほど美しいのだろうと理由で片付けられるし、指摘したところでツキミ本人の人生に変化はない。

だから、ここで彼が聞いた理由はただの好奇心だ。人の過去をむやみに聞くのは人としてどうかしているの思うが、何故あんな人をそこまで愛せるのか。


「お父様。」

「ん?続きを始めるのか............いや、何か聞きたそうだね。僕と彼女の馴れ初めかい?」

「なんでも見抜きますね、お父様。」

「そりゃあ長いこと生きていたらね。彼女の両親が自殺する前から、僕は一方的に彼女を婚約者だと決めていた。外壁もしっかり埋めたよ?当時のご両親からも、娘をよろしくお願いしますって言われたぐらいだ。」

「(............怖い。)」

「イザナミと出会う前から、僕だけがイザナミの魅力に気付いていた。それだけの話さ。初めて彼女を見たとき、どんなものよりも美しかったから僕だけの星と例えた。それだけだよ。」


その答えはなんとも簡単なものだ。どこにでもあるようで、意外となさそうな馴れ初め。こんなに穏やかな性格をしておきながら、実際は恋愛においても戦略家だったとは恐ろしい話だが。

あんな強引な女性をどんなものよりも美しかったと例えれた彼の目がおかしいのか、それとも彼女の幼少期が穏やかなものだったのか。案の定ツキミでもそこまでは聞く勇気がなかったようだ。今だけはその疑問を振り払うようにと、試験のリトライを開始。結局その日も彼の攻撃をまともに避けれず、一日の終わりを迎えた。

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