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93 貴族令嬢としての名誉なんかより大切なもの






 つまり転生者として、セルリアーナが日本語を無意識に発していたからだ。


(……もしかして、これってわたくしだけで無く、転生者濃厚ヒロインも該当……する……?)


 異国語として捉える部分と、聞き取れる単語からセルリアーナはその認識の違いに、会話の端々で理解した。


 セルリアーナも無意識下で言語を使い分けていたのである。今は以前のセルリアーナと転生前の遠藤芹は最早この世に同化しつつあった。


 だから言語認識が段々とゲーム内の強制補正が働き浸透され、母国語であった日本語は咄嗟に出なくなって来た。そう言うことだろう。


「……分かった、分かったからお前は……。それなら俺が連れ攫ってやる約束は、まだ有効だからな?」


 大きく深い溜め息を漏らしたラルシュは、外套を脱いでセルリアーナの所々焼け焦げたドレスの上から羽織らせた。


(────えっ、え? え? それって?)


 ラルシュの攫うと言うのは、何処か冗談やセルリアーナを元気付ける為、若しくは軽々と交わし文句だと認識していた。


 しかし、彼の真摯な姿勢や声音は、何処か嘘を含むものでは無い。


「だから一つ、約束してくれ。卒業パーティーでは父親にエスコートを頼め」


「え? 御父様?」


「どうせあれは馬鹿女(マイカ)のエスコートをする。だから最初から、お前は第三十三代目エスメラルディ侯爵家当主と参加するんだ。分かったな?」


 卒業パーティーで正式な婚約発表も催されるのは、王家からしても大掛かりなイベントだ。


 けれども、実際は婚約破棄発表に断罪が繰り広げられ、エスメラルディ侯爵家の失墜や悪役令嬢の退場が謀略されている。


「わ、かりましたわ。御父様に話を通して必ず、そのように……」


「いいか? お前が言う婚約破棄後の断罪は、その場で魔力暴発を誘発させ、王家に脅威を向けた反逆罪とかで処刑されるなんてシナリオを描かれても困るからな」


 セルリアーナは本来ならば、数々の暴虐を尽くした高慢卑劣な悪役令嬢として君臨しているはずだった。


 しかし道理を曲げてでも「意地悪を企てていない証拠」を第三者に証明させることが出来る。火のないところに煙は立たないが、油を注ぐ者の手を封じることは可能だ。


 そしてセルリアーナは徹底して、暫定婚約者の座を退き代わりの者を推薦した。キャサリン・バーンとは今では友好関係にあり、今後エスメラルディ侯爵家の後ろ盾にもなるだろう。


(その線も危惧している状況下なのね……。事態は思ったよりも深刻で、シナリオ通り悪役令嬢が真実の愛を隔てる邪魔者として断罪される日が近いのだから)


 ノエラやシュリシュナータも同様に、セルリアーナの潔白を晴らしてくれる。味方を多く付け、婚約破棄後の最悪な断罪ルートを回避する下準備は出来るだけ行ったのだ。


「悪い、まだ婚約者が居る身なのに……不躾に肩を抱いたりするのは不適切だった」


「ラルシュ様、わたくし────まだ公にはなっておりませんけれど、婚約は無効となりましたの」


 そう言えば伝え忘れていたかもしれない。セルリアーナは不意にあの浮気野郎アルベルノ殿下のことを思い出して、付け加えた。


「…………は?」


「国王陛下と王妃殿下のみ御存じですけれど、わたくしやっと解放されましたの」


 ラルシュには伝えておかなければならない。婚約破棄は既に手筈済みである。あとはカリュプスと約束通り断罪劇は、必要な手順であること。


「婚約破棄騒動を起こさないと、あの浮気男と泥棒猫にお仕置き出来ませんから。一芝居協力して下さいますか?」


「お前の名誉が傷付くだろう……。何故避けない」


 それはラルシュの命がかかっているから。これは闇の眷属カリュプスとの、暗黙の脅迫的約束でもある。


「ふふ、それは乙女の秘密ですわ。ラルシュ様を抱き締めても、一応罪にはなりませんから安心して下さいね?」


「全てが終わったら、侯爵家に正式に足を運ぼう。未婚の貴族令嬢があまり異性と出歩くのは良く無いからな」


「えええ?! 楽しみにしておりますね、ラルシュ様。それに愛称で呼んで下さったの忘れませんからね」


「お前、俺を揶揄うのはやめろ」


「嫌ですわ」


「食えない女だな。だが最初から……、俺はセルリアーナと出会うべくして生まれたのかもしれない。お前だけは絶対に守る、今度こそ────必ず」










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