表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/104

92 無相応な願いと推しへの爆裂感情







 生き延びる算段は数々行い、結果としてゲームの強制力に腹も立っているが、ラルシュは基本公平な立場であるはずだ。


 そもそも、ラルシュはセルリアーナの爆裂推し活で滅多にお目に掛かれぬ姿を視認し、追っ掛け回した結果。昼食を一緒に摂ったり、ヒロイン・マイカの小イベントを監視していただけだ。


 正直なところ、ラルシュが厄介者である高慢卑劣な氷花セルリアーナを庇う理由は最初から無いのである。


 バグ補正がされ、ヒロインに優位なシュチュエーションに戻るだけのはずなのに。


(────え? シナリオは? ラルシュ様は、何を仰って……いるの?)


 ラルシュにセルリアーナへ特別な感情は無いはずだ。ただ、一方的に付き纏って余命宣告されたも同然な世界で、悪足掻きしていたセルリアーナは彼と一秒でも話せる時間が幸せだった。


「お前の喉を掻き切ることも、魔装で数マイル離れた場所で脳天撃ち抜くのも出来た。俺や過去のカリュプスを使役する者達は、王家の脅威となる人間は貴族だろうと闇に葬ってきた」


 闇の眷属カリュプスを使役する者は、決して権力に靡かない。呪い同様の課せられた忠誠心は、功績一つ評価されず闇夜へ息を殺して飼い殺される。


(それは勿論、一秒程度のスチルで目に焼き付けてきましたもの……)


 過去に王家転覆を謀って失敗した血族の末路として、カリュプスを宿す者は死に絶えるまで王家の監視者として生かされる。


 汚れた仕事や国家において危険因子を速やかに排除出来るよう暗躍させた、捨て駒に過ぎないのだ。


「だが俺は……お前と関わり過ぎたようだ。死んだ様に生きて王家の操り人形になって、生きていたのに……」


「ラルシュ様は陽の下を歩いてはならぬ誓約を、己に課しているだけです。過去の贖罪はもうおやめになって下さい」


「やめろ、それなら歴代のカリュプスの器は浮かばれない!」


「わたくしが貴方達が抱える罪を共に背負います。まず、貴方が断ち切らねば。第三十四代目として、その責務があります」


 ラルシュはよろ、と後退りをした。まるで親しい人間から寿命を聞かされて茫然と立ち尽くす様な、絶望感をどうしてか彼から感じた。


 額に手を当てて、青褪めた顔色で掠れた声でラルシュは悲観する。


「……それなら俺は何故最近夢ばかり見るんだ? それも……、部相応な夢だ」


 よろめいたラルシュを無意識に身体が動いて、支えようと手を伸ばしたが避けられた。拒絶する意思は曖昧さを滲ませて、触れたら壊れそうな硝子みたいにラルシュは小さく嘆いた。


「俺が生まれ落ちた時誰からも祝福され、平穏に暮らせて、学院に通い、普通に出会って。ありえもしないがお前と恋に落ちる、そんな夢物語……」


(────え?)


「は、はは……自分でも嫌と言う程分かってる。俺は誰からも幸福を認められない出自で、そんな生き方をしてのうのうと乾いたパンを食べて塵溜めの中生きるのが性に合っているらしい」


「────やめて」


「セーナ、俺は────────」


 生きる資格が無いと、口の動きで彼が発しようとした言葉を瞬時に見抜いて、セルリアーナは勢い任せに塞いだ。


「わたくしの推しを、推し自身が卑下するのは断じて許しませんッッッ!!!!」


 黒い目を丸くして、瞬きを数回したラルシュは呆気に取られた。掌の隙間から覗いた悲嘆の表情が、見る見るうちに驚愕へと変わって行く。


「お、おし…………?」


「いや、マジでスチルで一秒以下の動画しか無かったですけれど?! フードに隠れてたけどガチ精悍な美しいお顔とブラックダイアモンドの様に美しい髪に瞳! そして愛されたくて仕方ないのに出自問題あって、色々諦めているけど誰かに認められたかった人生!」


「セ、セルリアーナ?」


「攻略本と初回限定版で完全に絶版してオークションで十五万円の家賃光熱費犠牲にして払ってリポ払い地獄背負ったけれども手に入れた製作裏側の新情報! 読み込んで泣いたわラーメン喉通らんしガチ泣き! 尊い死。なんで幸せにならんのですか? は? 公式は他人の不幸を舐め回す性癖の集まりですの?」


「は、早口過ぎて理解できたか不安だが…………まずお前は頭がおかしくなったわけでは……いや、ないな…………」


 悪夢から目が覚めたように覚醒したセルリアーナは、オタク色全開に早口で捲し立てて説き伏せた。


「貴方こそ幸せにならんきゃあかんのです、このわたくしが許さんこと?!!!! 頼む頼む頼みますから推し様が幸せになるなら借金背負ってでも物理的にも幸せにするからヨロシク(死語)ですわよ!!!!」


「グランド公用語なのに、別の言語に聞こえるのは……」


「要するに、マヂ・ラブ♡なのですが!!??」


「は? マ…………? 悪いが異国語ならば何処の公用語か────」


 グランドル王国の公用語は、建国以降制定されたグランドル語が共通言語である。セルリアーナが熱弁する時は、ラルシュが言語として違和感を感じていた数々の疑問。







「あなたのこと! 全ての人生を賭けて! 幸せ! 誓いますわよ!!」











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ