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8  ヒロインの恋成就を後押し隊





「それなら俺が────」

 よし、行け宰相閣下の息子オースティン・トンプソン! 王国内で二大公爵家の一つ、トンプソン公爵家に生まれ、頭脳派で第二王子の側近候補有力者として名高い。


 更には片眼鏡(モノクル)に艶々な藍色の様なプルシャンブルーの髪色はサイドに緩く結き、決して弱味を見せぬツンデレ属性。

 きっちり制服を着こなして、王立学院の生徒副会長を務めて品行方正が歩いているキャッチフレーズである。


(インテリでツンデレ担当がお出ましよ)


 彼には度々生徒会にお裾分けに立ち寄ってお菓子を持って行くと、地道な作業だが好感度が少しずつ上昇する面倒ルーティン作業をこなせば攻略出来る。


 またギャップ萌え要員で、甘い物好きを見せられない一面があるので好感度が上がれば新作ケーキ屋でのイベントも起こるだろう。


「それなら私も見てやろう。第一、見苦しいぞセルリアーナ。お前はこうやって彼女を公衆の前で罵倒して」


「罵倒なんか語弊が────」


「……殿下の発言を妨げるのは、幾ら暫定的な婚約者であろうとも些か不躾ではないでしょうかエスメラルディ侯爵令嬢」


 続いて、殿下の隣でセルリアーナを正義感の塊が睨み付けている。


 その男性は王宮直属の騎士団長であるブライアント侯爵家の父親を持つ、第二子息のデイヴィス・ブライアントだ。

 燃える様な真っ赤な短髪と意志の強い瞳は、優秀な長男と日々比較され劣等感塗れで屈辱を胸に秘める青年である。


(筋肉担当ね、婚約破棄直後に大暴れするセルリアーナへ暴力を行使して制圧……。物騒なこと)


 スチル集めで、鍛錬中にこれまた差し入れや檄を送ったりすれば好感度は上昇。荒くれ者イベントでは、主人公が絡まれているところを颯爽とヒーローの如く現れて救出すると言うキラキラ演出もある。


 しかし、実力が評価されず優秀な兄に対してコンプレックスを抱いているので、そう言った心の葛藤を溶かしてやると吉。


「失礼……致しましたこと。この王立学院は誰もが学問を励むことが出来る学舎です。せっかくですし、殿下にお任せ致しますわ」


(殿下との恋路応援したいのに、何言ってんのヒロインちゃん?!)


 早々にフラグ回収をした殿下達を前に、扇子でにまにまと不敵な笑みを隠す。

 とっとと親睦深めてゴールインしてくれないと推しとの数少ない交流チャンスが発生しないだろうがと拳を握り締める。


「……私、勉強頑張ります。もっと特待生として恥じぬ様に努力を惜しみません」


(それなら居眠りしちゃあ良くないですよー)


「マイカは良く頑張っているよ。毎日家の仕事を助ける為に内職したりしているじゃないか」


「デイヴィス……」


(それならセルリアーナも王子妃教育に、侯爵家の一員として魔力供給を担って国民の生活支えておりますが)


「それにマイカ、歴史の試験は教えた成果が出ている。大丈夫、俺がついている」


「オースティンもありがとう……ッ」


(あら、歴史の点数は百点満点中四十二点ね)


 涙ぐましい演出。きっとスチル上なら煌めく照明を当てられて、花弁が待っているだろう。客観的に見ると、なんだか茶番劇にも見えるのは気のせいだろうか。


 いや、当本人達は脳内お花畑かもしれないが、各御令息には漏れなく婚約者がいる。なので、こればっかりはゲーム補正で全部、御都合主義で片付けるのだろう。


 見るからに、一番セルリアーナが割に合わないが、何にせよ推しと接点をより深めるのはこの捨て身の戦法しかないのだ。


「さあ次の授業が始まる。放課後は一緒に復習をしよう」


「アルベルノ殿下……、ぜひお願い致します」


 それはそうと、さっきの棘のある一言は、セルリアーナにとっては地雷に等しい。

 激怒を誘発させて、殿下に生徒が賑わう公衆の場で叱責させたかったのだろうか。


 確かにセルリアーナの禁句は、サファイアの瞳だ。ゲーム内でも語られているので、公式設定では誰もが知る地雷である。


(確かに応援したいわ、だって推しと時間共有をしたいもの。けれども、それとこれは話は別だわ)


 セルリアーナは氷花とも呼ばれる由来として、幼少期に魔力操作がまだ覚束無い頃に、暴走を起こしてしまう。


 侯爵家邸宅を半壊させるレベルで氷漬けにしたのだ。

 かなり大問題になり、一時は婚約の話も流れるところだったが、そこはエスメラルディ侯爵家。両親の計らいで何とか耐え忍んだらしい。


(マイカちゃんは私を────明らかに、敵視していらっしゃるのは確かね)








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