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53 馬鹿三トリオの弊害





 そして、今に至る。


「きゃああああっ、誰かッ、誰かあ助けて!!」


「嘘だこんなの、俺達が敵うわけ……」


「う、ううう……っ」


 襲撃を受けた隣班のC班は全員が負傷し、辛うじて防御する状態だったのだ。危機一髪とはこんな状況下のことを言うのだろう。


 悲鳴と呻き声、そして啜り泣く声に混じって獣の匂いが立ち込める。


「皆さんご無事ですか?!」


「セ、セルリアーナ……様。私達を庇って、ティモラスビーテ侯爵令嬢が……!」


「急に群れで俺達を襲ってきたんです! 害獣達が次々と出没して!!」


 もしも索敵担当の生徒や、槍使いの男子生徒と交流を深めていなければ、連携も無く全滅に近かったはずだ。

 より最悪な断罪ルートへの第一歩を踏み出すところであった。


「ポーションを使う時間をまずは稼がないと」


「セルリアーナ様、危ないです!」


「こんな時にわたくしの凍て付く氷魔法が役立つのよ?」


 セルリアーナは集中する。彼等は戦闘経験が浅く、ましてや獰猛な四本足害獣には手も足も出なかった。血走った瞳がぎろりとセルリアーナを射抜く。


 害獣達は毛が逆立って、此方を威嚇するかの様にけたたましい声で叫んだ。ここまで興奮状態の害獣は珍しい。


「皆さんはわたくしの背後に固まって! 怪我をしている者にポーションを飲ませて止血も!」


「わ、分かりましたッ!」


「チャンベラさんは深傷を負った生徒を優先して治療に当たって下さい」


「私が全部治しますから、この聖なる光で────」


 攻撃魔法で次々と群れになって襲い掛かる害獣を倒して行くが、一向に「治った」の一言が無い。


 大きな激風の中、セルリアーナのマゼンタカラーの髪が巻き上がる。


「何を呑気に治療なさってるの?! わたくし一人で凶暴な害獣押さえ込むのも限度ってものがありますのよ?!」


「どうして……」


「もしもし?!」


 負傷した生徒を守りながらの戦闘は、神経をより研ぎ澄まさなければならない。守りと攻めを同時に行うのは至難の業だ。


「セ、セルリアーナ様! 奥から二体、四本足の害獣が此方に来ます!」


 切羽詰まる状況下で、しどろもどろしたマイカにセルリアーナは堪らず催促した。

 振り向くと、彼女は唇を戦慄かせ両手を組んだまま、泪ぐんでいた。


「は、発動しないんです!!」


「はあ?! この期に及んで出し惜しみでは?!」


「だから本当に出来ないんですってば!!」


「嘘でしょう……?」


「ポーションが無かったら、俺達動けなくて死んでた……?」


「私のせいじゃない!!!!」


 逆ギレか、とセルリアーナはマイカの金切り声に思わず眉間に皺を寄せた。


 此方は負傷者を守りながら獰猛な害獣と対峙しているのに。聖女気取りはここまで来ても、役割を果たさないのか。


「……まさかとは思うけれど、神気を宿す者として祈祷……、教会での祈りも捧げてらっしゃらない?」


「祈祷? そんなのしたこと……」


「常識ですわよ。誰も教えて下さらなかったのかしら」


「だって私には特別な光魔法の力が────」


「あの馬鹿達から何も教わっていないと?」


「ば、馬鹿だなんて…………」


「ああもう本当に何やってんのよ……」


 何やってんだあの馬鹿四トリオ!

 ゲーム内では、戦闘モードに入ると光魔法は回数制限が生じる。


 日々の祈祷や教会に足を運ぶ選択肢がマップ上にあるのはその為だ。


 攻略者一人の好感度を上げたければ、モブキャラクター達に回復させることはスルーすれば良い。


 けれども逆ハーレムルートを選択した場合は無条件に、このイベント攻略で百回以上通いステータスを高めるクリア条件が科されるのだ。


(真面目に何もしてなかったなんて、男にうつつ抜かしておいて職務怠慢以前の問題よ!!!!)


 勿論、これは逆ハーレムルート限定の御作法で、誰彼構わず魔法を使って負傷者を回復させなければ条件は満たされない。


 第二王子や他の攻略者達が常日頃くっついているのだから、こう言った大切なことこそ教えなければならないのに!


 普段からくだらない話ばかりなのだろう。光魔法の担い手は、稀少である。

 王家からの手厚い援助を貰っているにも関わらず、全く身に付いていないとは。もう呆れるしかなかった。


「光魔法、神気を扱う物として普段の行いや精神コントロールは力に反映されますのよ?」


「そんなの学院終わってからも、修行とかに身を投じろってことですか?! そんなのあんまりです!!」


「あのですねえ……貴女勘違いされてますわよ」






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