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52 四分の一を何も引かなくても良くってよ?





 最大難易度を誇る戦闘イベント、ゲーテの森。


 セルリアーナは単独行動し、生徒達を危険に晒したなんてゲーム内では説明されていた。けれどもそれ以前に怪我人を誘導し、一人で害獣と退治していたのがご都合上カットされたらしい。


 ゲーテの森二日目は、ABCDとアルファベットで班が構成される。一つのチームには、四人組である。


「じゃあサクッと狩りに行ってきますわあ!」


「セルリアーナも、気を付けてね」


「何かあれば各自狼煙を上げる様に。では解散」


「ノエラとシュシュ、皆さんもお気を付けて」


「御守りあるから大丈夫ですよー、セルリアーナ様」


「帰り、またお話ししましょうね」


 平民の生徒達とも解散して、セルリアーナは今回の班員を確認した。D班に配属されたセルリアーナは、マイカと同じ班になる。他二人は索敵や槍の使い手で、昨夜一緒のメンバーだ。


 何も四分の一を確率を引かなくても、良かったのにと毒を吐きたくもなった。


「セルリアーナ様、宜しくお願い致します。私達、足引っ張らない様に頑張ります!」


「気合十分なのは良いことですけれど、生命の危機を感じたら迷わず逃げましょう。ポーションもお持ちよね?」


「はい、命大事にで行きましょう」


「セルリアーナ様ったら、ポーションを恵まれたのですか? 私だけ仲間外れなんて冷たいですね〜」


 マイカは治癒魔法が出来るから、すっかり忘れていた。

 そもそもマイカも実際、ゲーム上ではアルベルノ殿下から回復薬や保護魔法のが掛かったマントをボーナスで貰っているはずだ。


「狡いなあ、私だってか弱い嫁入り前の乙女なのに。そう思いませんか? 私にも分けて欲しいです」


「いえ……これは、セルリアーナ様が学校で支給された装備を身に付けている市井の子達にって……」


「えー? 無いなら買えば良かったのに」


「お、俺の家は小さい弟達がいるから、装備品に回せる金なんて無いから」


「ゲーテの森はとっても危ない場所なんですよ? なのに意識低くないですか?」


 平民の生徒達はただでさえ、後ろ盾が無い。

 セルリアーナはこの煽り文句を口にするマイカの異変を感じ取った。


(どうせ寵愛を一身に受けちゃった〜とか? 今更ですけれど)


 一夜を開けて、何だかマイカは第二王子殿下のテント内で何かあったようだ。態度が大きく、同じ平民出身の生徒達にマウントを取る口振りである。


 マイカの装備は王宮御用達の商人が、マイカ専用にと見繕った物だ。全て軽量化魔法でコーティングされているが、天使の羽の様なスカートの可愛らしさも聖女風なのもゲーム仕様である。


「彼等は学校で装備を借りている身なのです。わたくし達が恵まれていることを、少し御理解下さい」


 一方でセルリアーナ達は、女子生徒であろうがパンツスタイルだ。軽量加工は多少されているが、実戦形式なので重みはある。


 また、貴族家は勿論家門を背負っているからか、金で物を言わせた装備を身に付けている。


(施しを受けた上で、まだ集る気? 図々しいひとね)


 ゲーム内では味方ステータスの状態異常やスキルを見ることが可能で、ランダムで選出されたチームを駆使して害獣討伐をする。所謂初見殺しだ。


「あら、そのお召し物! とってもお似合いですわ。王宮で先日見掛けた、ある程度の攻撃は跳ね返せる保護魔法がかかった物ではありませんか!」


「え……? まあ、はい。可愛くて気に入ってます」


「確か殿下がお召しになる予定で、急遽編ませたと小耳に挟んだのですが、わたくしの思い違いね、失礼」


 マイカは歯切れが悪そうにして前をずんずん歩き始めたので、二人へウインクをした。


 いきなり戦闘モードになるので、RPGゲーム経験者でも戸惑うスキル発動時のコマンド入力が、とにかく熱い。いや、難しい。


 そしてその正確さが攻撃範囲や効果判定基準に上乗せされ、ダメージ威力に反映されるのだ。


 点々バラバラに各班は東西南北と配置され、そこで害獣を殲滅する。特に獰猛な猪型や熊はいないのは、調査で判明していたが。


 このゲームはマイカに用意された舞台である。

 プレイヤーがドキドキする展開、その後の褒美が用意されているのは正規ルートなのだろう。




 しかし、二つだけ想定外のことが起こった。




 一つ。害獣が凶暴化しており、戦闘に不慣れな生徒が負傷したこと。

 二つ。マイカに別の異変が起こったことだ。


 まずは索敵担当の生徒が、耳を澄ませて周囲の害獣が潜んでいないか確認していると。西方向から微かに人の呻き声が聞こえる、そう報告があった。








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