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44 野外害獣討伐訓練で、ドキワクハプニングイベント起こそう!①





「私がまだ未熟だから、私が平民だから! そんなに強く当たるのですか……ッ?!」


「あの稀代の光魔法、使えるんでしょう? 治療に専念なさったら?」


 このやり取りを皮切りに、恋愛シュミレーションゲーム『光の先に続く真愛』内でも指折りの特大イベントがついに、始まる。


 野外訓練だ。正確には、王都郊外にある国境付近まで遠征して、害獣討伐をする厄介な遠足だった。


 生徒達も課外学習名目で、キャンプファイヤーや夜空の下でカードゲームが出来ると高揚感が伝わってくる。彼等にとっては害獣駆除なんて二の次で、親睦会程度の感覚なのだろう。 


 ゲームのスレッドが立てられた掲示板でも、この討伐訓練は鬼門であった。初見殺しとはこのことを言う。


(皆んなキャッキャ楽しそうに揺られてるけれど、ピクニックならこんな武装なんて必要無いのよね)


 生徒達は単なる郊外まで遠足気分で馬車に揺られるが、待っているのは貴族令息達が一生に一度経験するか否かレベルの過酷さだ。


 野営はするし、武器の手入れから炊事まで殆ど生徒達で行う必要がある。

 この緊迫感のあるイベントは、その難易度の高さ故に好感度を爆裂上げられる救済措置でもあった。


 つまり、好感度上昇や攻略に行き詰まったプレイヤーへのボーナス制度だ。


「あーあ、セルリアーナ様とは班が分かれてしまってテンション駄々下りですわ」


「もうノエラったら、一応これも内申点に響くんだよ」


「だってえ、あたしはグランドル王国騎士団に入団せず、領民達の為にもっと出来ることあるって、色々考えてるからさ」


「ええっ?! あんなに騎士にぜぇったいなる! って子供の頃から言ってたのに?!」


「そりゃあ憧れてたさ! でもまだうちの領民達のハーディ一族への先入観や差別意識を持たれているでしょう? あたしは彼等の文化的遺産を守りながら、自然と共存する人達を支えながら……いつか、手を取り合えるような、そんな未来を作りたくて」


「あら、ノエラ様なら出来ると思いますわ。なんたって、わたくし達はずっと貴女の努力を見て来たお友達ですもの。援助は尽力しますわ」


「結構壮大な夢語ったのに、笑わないで聞いてくれるのは、セルリアーナ様とシュシュだけだなあ」


「わ、私も! ノエラの夢! 応援するよ! 自然破壊せずエネルギー資源の需要供給についての文献とか、調和性の有用と文化保全をテーマにした資料送っておくね!!」


 ガタゴトと馬車が悪路を進む。


 ノエラとシュリシュナータは相変わらず忖度無く接してくれるから有難い学友であった。彼女達の存在は心強い。

 なんたって、援護射撃無く正規ヒロインマイカに太刀打ち若しくは華麗なる悪意ゼロのパワーワードで滅しない為にも。


 何故ならばこの魔物討伐実地で、より心象が悪くなるセルリアーナは苦境に立たされるからだ。突如暴走した害獣達が出現し、多くの負傷者が出てしまう。


 先導者として魔力保持者で且つ攻撃魔法筆頭格のセルリアーナを以てしてでも役職不足だの、力量不足だの諸々。


(これは悪役令嬢を断罪する材料、絶好の機会とも言えるイベント。正に用意された狩場なのよね。弱者を守りながら二メートル以上ある巨大害獣を相手するのは流石に無理ゲーよ)


 そもそもセルリアーナの魔法陣のお陰で、死者こそ出なかったのに。


 最後は悪役令嬢へ責任を擦り付けられる。

 皆んなしてセルリアーナが奥深く行き過ぎただの色々難癖つけたのだ。


「さあ、ゲーテの森だ。皆も気を引き締めるように」


「はーい」


「獰猛な害獣は数十年前に駆逐されていないが、これからの王国を担う者として自覚や協調性、そして精神力を養う訓練だからな。心してかかるように!」


 ゲーテの森。害獣訓練の舞台だ。プレイヤーはとにかく恋愛シュミレーションゲームに搭載された害獣と戦闘に入る「RPGモード」でアイテムを蓄えておく必要がある。


 攻略難易度が学院でのイベントとは遥かに跳ね上がり、かなり苦戦を強いられるのだ。


 本来であれば、野営なんて貴族家出身の生徒達が多いので、テント設置や身辺準備をさせる従者を連れて任せるのが普通だ。


 実際、貴族令嬢や令息達は従者に全て野営準備をさせ、談笑している。

 平民出身の生徒達は勿論、従者はいない。肉体労働は彼等の仕事と言わんばかりな、階級制度故の光景が広がる。


(まあ私は前世以来のキャンプがしたくて全部自分でやるけれど。テント設営とか何年ぶりかしら?)


 貴族家の人間でありながら、従者を連れて来なかったのはセルリアーナとノエラ達の三人だけであった。


 ゲーム内ではセルリアーナが他の令嬢達同様に従者に指示出しをして声高々にマイカを愚弄するが、やる気が起きなかったのだ。

 両親に従者は連れて行かないと啖呵切ったら、卒倒してしまったが。


(帰ったら御父様と御母様にボディーチェックされそうだわ。嫁入り前の一人娘が怪我でもしたらそれこそ心臓停止しそうね……)


 本来の目的は領地を統治する者の自覚と、責任力が問われることだ。

 平民の生徒達にも協調性や、王国民として魔獣に脅かされる事態となった場合の統率力を求められている。


 つまり、非常事態の際に愛国心を持って武力行使が出来るかの、観点を養う為の実地訓練とも言えよう。恐ろしいものだ。


(ゲームじゃ、ふんわり御都合主義だったけれど容量的にも端折ってたのね。そりゃあ隅から隅まで設定入れたら膨大なデータ量だし仕方が無いか)


「魔力判定を測定不能を叩き出し、建国以来の魔力量とスキルを宿すらエスメラルディ侯爵令嬢の前じゃ、霞むな」


(でも、全部マイカさんに横から掻っ攫われるのよ不毛にも。幸せも、人並みの最低限度の人権すらね……哀れな悪役令嬢ったらありゃしないわ)






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