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41 合法的なおもてなし〜推しが会いに来てくれた!







「はあああああああああ疲れたああああああああ」


 王子妃教育。幅広い知識や歴史、そして国外の地産物やら地理等様々な分野を極めなければならない上に、何ヶ国語も徹底して叩き込まれる詰め込み教育である。自分からしたら。


(あーあ、王宮へ来た途端マイカさんの功績を耳にして、益々ゲームの正規ヒロインの圧倒的強さを感じてしまったわ)


 王宮に缶詰に強制的にさせられて、もう二週間になる。推しと話したい気持ちが腹奥で滾って暴発しそうだった。


 稀少の光魔法持ち、マイカ・チャンベラが王都内で起こった馬車の横転事故で、怪我を負った子供達を治癒したと言う。


 その神秘的な優しい光に包まれた彼女を、グランドル王国が建国前に闇を打ち照らした聖女エウフェミナの生まれ変わりとも、貴族内にも噂が広がる始末だ。


(親である貴族からは、そりゃあもう……。王立学院内でより一層、殿下の婚約者をすげ替えろと息巻く生徒が増殖する……まったく)


 この国の神殿では、祀る聖女エウフェミナを讃えている。


 ゲーム内では王家が条件付きで、マイカへ絶大な支援を施す背景はあまり語られていない。縮図を展開するにも、膨大なデータ容量に入り切らなかったりする。


(これがきっかけでマイカさんは人格者で、持って生まれた癒しの力が明るみになり……人々からの支持も獲得する。ストーリーと同じね)


 貴族の子供を助けたことで、平民であるにも関わらず人気を誇る。一部の民衆の支持を得る一方で、悪役令嬢の横暴さがより際立つのだ。


 あの悪女だったら、手を差し伸べるなんてことはしない────と。


「あーあ、つくづく思うわ。わたくしって、及第点すら取れないのでは?」


 供給元を作らねば、永遠に推しを摂取出来ぬなんて。自動的に循環させるスチルエンドレス流し機とかないのかと疑念を抱くくらい推しであるカリュプスを渇望していた。


(缶詰になるのも、余計気分が滅入るわ。落ちて行くスピードは減速しているけれど、悪い女であるイメージは覆せない)


 実は暫定的、と呼ばれたセルリアーナの立ち位置。


 それは本家セルリアーナの愛しき第二王子殿下へ有力な婚約者は多数いたものの、一番家格も良く王家でコネクションを固めたいのがエスメラルディ侯爵家であったからであり。


 ぶっちゃけた話ではあるが側妃候補、所謂愛妾は王家として多くの子孫を残す為にも、率先して取り入れられている。


 だからセルリアーナは自分以外の女を迎え入れたくなくて、断固拒否姿勢を崩さなかったのである。ゲーム内ではその様な設定であったはずだ。


 王家や高貴な血族ならば、特段普通のことである。子孫繁栄は王族の使命だ。


 たった一人の生涯を誓った相手に浮気相手で且つ子供まで作られたらそりゃあ、合法的だろうと感情が爆発するだろう。自分もそうなる。


(まあでも今の私は殿下に女性の影が複数あったって、どうだって良いわよーん!)


 それが今では王家へ嫁いだ令嬢を家から出したいバーン侯爵家へ打診したのは、紛れも無くエスメラルディ侯爵家だ。つまり政界にも深く入り込みたい、野心家の彼等を抱き込めたのは強味である。


 父が本当はセルリアーナを王家へ嫁がせたく無かった本心を聞き出せて、やっぱりゲーム内では多く語られぬ親心を知れて良かったと思う。


「推し補給したいよおおおおおおおおあああああああ抜け出せないかなああああああああ」


 推し供給が欲し過ぎて、セルリアーナはテーブルに突っ伏していると、こんこんとノックがされる。


 ガバりと反射的に身を起こして振り乱した髪を整えて、にこりと笑みを浮かべる。

 淑女教育で散々骨の隅々にまで行き渡った、教育の賜物かもしれない。


「どうぞ」


 しかし。誰も現れない。


(────は? 意味不明なんだが?? じゃあ誰がノックしたんじゃいボケ)


 ブスッとした途端に顔が崩れた。笑顔保つにも、数十秒が限界なんじゃいと言わんばかりな態度で。


「用もないのにノックするのはどうかと────」


 こんこん。


 再度ノックされて、堪らず淑女の顔を崩して般若で対応しようとすると。


「おい、俺だ」


「あ、新手のオレオレ詐欺……?」


「オレオレさ……なんだそれは」


「待って待って待って下さいどうしてこんな、王宮に出入り────あ」


「王宮に出入りしているのは、何もお前だけじゃあないぞ」


 低音の透き通った声が、セルリアーナの鬱憤を一気に掻き消した。


「窓を開けてくださいますか、お嬢さん。何せ夜風は体に堪えるもので」


 扉からでは無く、バルコニーがある窓側からカリュプスが現れたのだ。


(身形、良し。顔の緩み、無し。部屋の清掃、問題無し。推しを招ける環境下であることを此処に認めることとする)


 誂えた食器で良かった。豪奢な一室は婚約者が心地好く滞在出来る空間となっている。


 天蓋付きの柔らかいベッドに、王宮専属の料理人が作る最高級の食事。紅茶やお菓子一つも、何から何まで下級貴族では手が出せぬ高級品である。


(オーケー、推しをお出迎えする場は問題無さそうだわ。なんたって、あのカリュプス様がいらして下さったのだから!!!! 合法的な! お! も! て! な! し!)






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