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11 視力は生まれ付き良いので御安心を





 元々公爵家の負の遺産として生まれた血筋故に、綺麗事とは無縁の世界で生きていた彼は、黒髪は目立つからと言って髪色を変えている。


 万が一にでも公爵家に隠匿され、他者に出自を知られてはならないと。婚外子で、異質な卑しい人間だと推しは思っている。


 だから太陽の光に人工的な透けた髪でないのは知っていた。


 そして瞳の色も変えている理由として、黒髪黒の瞳は異端だと、不吉であると王国では言い伝えられている。


 しかし公爵家と言えば王国内ではトンプソン公爵家と、黒い噂しか耐えぬベンブルク公爵家しかないはずだ。


 ベンブルク公爵家は、王国の歴史上長きに渡り忠誠を誓い立てる王家派である様に見えるが近年、財力と軍事力を肥やして経済発展にも力を入れる貴族家である。


 何が影で問題視されているかと言うと、王家に数百年前に謀反を働き玉座を奪取し弑逆を図った貴族派を扇動した可能性が払拭出来なかった歴史がある。


 それでも野放しになっているのは、此処数百年は大人しく未来永劫、変わらず王家へ絶対忠誠を宣誓する背景が存在しているからであろう。


 確かに現当主のベンブルク公爵は、金にがめついイメージがある。


 王宮内で遭遇した時も、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて忠臣として自身の子息を当てがいたい魂胆が見え見えだった。


 王家との関係性もやや貴族派よりに傾きつつあるから、コネクション作りに尽力を注いでいるのだろう。


「……やはり、お前にはこれが通用しないとは。本当に何者なんだ?」


「へ?」


(ヤバいわ、あまりの美しさに令嬢あるまじき行為を取ってしまった。貴族令嬢が殿方を見詰めるのは、はしたないのに)


「俺の顔、良く見えているな。いや、認識出来ている。そうだろう?」


 陶器肌の様にきめ細かく、精悍なる御尊顔。拝み倒したい推しが目の前にいる。


 もしも仮に転生前の自分が大金で購入した限定制作裏側暴露本の非公式で公式なガイドブックの情報によれば、推しは公爵家の何方かに隠匿されし存在。


 解明にはまだ情報が少ないが、今は推しと同じ空気を吸っていたい。


 セルリアーナは首を傾げてありのままを答えた。


「ええと、その綺麗な黒い御髪と……どんな腕の良い美術家でも表現出来ぬ圧倒的な美しさを持つ外貌は……早々隠せないもの、かと」


「……別の意味でお前、目の医者にかかるべきでは?」


「視力は生まれ付き良いのですからお気遣い無く」


(はうああああ……一生眺めていたいわ)


 呆れた顔で嘲笑した推しも、可愛い。嫌味口調だろうと全部、好き以外語彙力が失いつつある。


 耳にしたことはある。王家が囲い込んだ暗躍者は特殊な魔法を使え、誰にも顔を知らないと言う噂。


 相応しい王族だけが知る百発百中の、狙撃手である。


 覆い隠す銃口(カリュプス)の通り名も、そこから付いたのだろう。

 表舞台から消えているのは反勢力や暗殺目的の国家侵略を未然に防ぐ為に、眩ませているのである。 


 良くあるRPGゲームで、認識阻害や隠密、スナイパーの能力に長けているのかもしれない。実際のところ、まだ他人で試したことはないので自分自身も確証を得たわけではないのだ。


 もしもそれが本当ならば、推しの御姿はセルリアーナと王家の一部しか知らない……と言う仮定が浮かび上がる。なんて贅沢な。


「俺を認識出来る人間は片手で収まるのに、なんたって……」


 苛立ちを覚えて、推しは苦悶の表情で前髪を鬱陶しそうに払った。下唇を噛んで、じろりとセルリアーナを睨み付けるところも可愛い。


「ま、まあこのわたくし、こう見えても泣く子も黙る(?)第二王子殿下の婚約者ですもの? 審美眼も兼ね揃えてますわよ」


「あんまり俺をおちょくると、王族の婚約者風情だろうが脳天撃ち抜くぞ」


(それは本望! と言いたいところだけれど、推しの手を汚すなんてダメダメダメッ!! ぜーったい駄目よ!! 彼に無駄な殺生をさせるには断じて回避させますから!!!!)


「あら物騒なこと! わたくしこう見えても魔力過多で体力魔力共に有り余っておりますのよ? 手合わせでもお願いしようかしら」


 面倒事は御免だと推しは掌をひらひらとさせて降参した。分厚い手には蛸が出来ており、努力の結晶が物語る。生で見る推しはこの世界で本当に生きているのだ。


(やっぱり私が誰かカマかけてみたけれど、ご存知なようね)


 セルリアーナの後ろ盾である膨大な魔力量を誇るエスメラルディ侯爵家を物怖じしない素振りから、私よりも格上の貴族であることは確定だ。


 公爵家の出所まで掴んでいるのに、中々尻尾を掴ませてくれないなんて焦らすなんて。


 公式情報によると、高潔な次男の血筋を表した顔立ちが表立って、次期公爵家の跡取り息子だと我が物顔でひけらかすクズ級の親玉が居るのは間違いない。早く炙り出してやらねば。


 だから推しである彼は所詮、公爵家の名を語るのは許されても婚外子なのだ。綺麗なことは次男に、汚れ仕事は長男に。


(これは課金して作者の特設ブログコーナーで暴露されていた記事で知ったのよね。えへ)


 金で解決、飯美味い。もやし生活に暫くなったが後悔はしていない。


 公式ゲーム内では一切明かされぬ情報なので、侯爵家が他家の極秘情報を保持しているとなると、命を狙われてもおかしくはない。

 情報の出所は? と疑念を抱かれ、上手く処理するのがオチだ。


 これらの情報を念頭に、本物の推しを生身で拝見出来るなんて今日まで生きていて良かった。感無量。







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