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99 形勢逆転するにしても、ちゅっちゅシーンを会場中に垂れ流すって? 最高じゃない。




 愛が齎した一部始終の、回想シーンが盛大にリップ音と共に流れ出す。マイカと第二王子殿下の逢瀬は、堂々と明らかになった瞬間だった。


『ずっと……こうして抱き締めていたい』


『私もです……。それに、今日は私達が初めて愛を交わした記念日ですね♩』


『君とこうして口付けが出来るなんて、夢のようだ。早く君に乱暴したあの悪女と婚約破棄をして、君と一緒になりたいものだ』


『アルベルノ様の正義感が強くて、いつも守ってくれて優しいところ、大好きです』


『マイカ……ッ!!』


 芸能人が不倫や浮気でニュースになるのと同じく、学院の生徒達にとっても旨いネタであったようだ。


「ちょっと……あの熱愛は本当だったの?」


「しかも、なんか……未婚の男女として有るまじき行為が聴こえたような……」


「て言うか口付けって、キスしてんじゃん……まじか。俺の父ちゃんなんかガサツだけど母ちゃんと結婚するまで手を繋げない奥手だったのに」


「不純異性行為もそうですけれど、品位に欠けているのでは……?」


「寵愛以前に、婚前に不適切な接触は如何なものでは?」


 慌てふためく二人を横目に、セルリアーナは周囲の当然の反応にやっと安堵した。第二王子殿下から退けたラルシュは警備兵を威圧的な魔力で下がらせる。


(浮気された彼女が、恋人と浮気相手諸共一斉清掃する瞬間って、こんな感じなのかしら……)


 読み手が受け取った瞬間に、時空を捻じ曲げられぬ狭間から記録された、正式な文書が映像化される。


 つまり日本式で言うなれば、録画機能付きの再生出来る高技術が施された特殊魔法である。


(甘ったるい台詞と、感動的シーンはゲーム通りだけれど唯一違うのは周りの空気感ね。とっても良い具合に仕上がってるわ)


 グランドル王国建国以降、弑逆者は史実から全ての功績は抹消され、存在すらも消された。それは王族が継承されて来た特殊魔法の一つだろう。


「良くぞ戻った、第三十四代目カリュプスよ────いや、ラルシュ・ベンブルク」


「国王陛下、妃殿下に置かれましては御健勝のこととお慶び申し上げます


「良い。公の場に出たがらぬお前が、姿を現してまで真意を語る理由は私も納得行っておる。今まで大義であった」


「────勿体無き御言葉」


 跪くのもせず、謝辞すら「カリュプス」にとっては唯の褒章ですら意味を成さない。


 淡々と常套句を述べるのは、ラルシュが闇の眷属カリュプスの器であると同時に、先祖の遺恨があるからだろう。誰にも傅かず、祖先が犯した大罪を永遠と贖罪させられる末裔である。


 その重々しく残る、暗い影が王家の監視者として宿命を果たせと表舞台から姿を消した由来かもしれない。


「ラルシュ……様、どうして」


「お前を守れることよりも、何も要らないだろ?」


「それに、そのお召し物……」


「匿名で贈られたドレス、似合っているなセルリアーナ」


 漆黒の髪を後ろに靡かせたラルシュは精微な刺繍が施された、深みある藍色の礼服にサファイアのネクタイブローチが煌めく。まるでセルリアーナの瞳の色身に付けているかの様に。


(……もしかして、わたくしの色を身に付けてらっしゃったの?)


 馬子にも衣装なんて言われることを覚悟していたのに。セルリアーナはラルシュの端正な横顔に思わず頰を染めた。


「王家の威信を揺るがそうとしているのは、愚息と言うことか」


 ラルシュは冷淡な口調で王族であるアルベルノへ抗議した。


「貴様!! 私を嵌めようと画策したな?! お、王族侮辱罪で、死刑────」


「茶番は無用だ。エスメラルディ侯爵家へ私兵を無断で派遣し、領地へ攻撃体制が敷かれていればよもや────交戦状態は免れぬだろう」


「な、なんだって?! 私兵を送っただと?!!!」


 ガタンと椅子が倒れる物音が騒々しく響いた。

 しかし、ラルシュは冷淡な口調で説明をする。国王陛下に対しても、物事に動じず剣を抜いたデイヴィスをあっさり片手で諌めた。


「それは妻が適切な対処をしておりますので、国王陛下が気を揉む様なものでは御座いません」


「────そ、それは(まこと)か? まだ何も事は起こっていないのだな?!」


「エスメラルディ侯爵夫人は、元々国内で極大魔法を使える有識者であり、王立学院で首席卒業者だからな。上手く片付けたんじゃないのか?」


 父が呆れ返って言葉を発するのを忘れていたので、代わりにラルシュがぶっきらぼうに答えた。


(お母様、実は凄かったのね)


 母は天然気質が強いけれど、出自は侯爵家内でも滅多に無い魔力持ちだったらしい。それがどの貴族家よりも凌駕し、魔力数値はライフラインを支える柱の一部に成り得る人材であった。


 父はエスメラルディ侯爵家当主であるが、魔力数値で言えば母の方が圧倒的格差があり、婿入りした身である。


「三十三代目エスメラルディ侯爵家当主は身分差すら覆した魔力量もあるし、こんな魔力相殺する陳腐な魔法陣さえ無ければこの会場を吹き飛ばしてもおかしくはないだろうが」


「や、やりかねません……」


「会場全体が、お前を謀る罠が敷かれているなんてフェアじゃ無いだろう」


『俺サマが見えねーなんて、血筋大事な王族も地に堕ちたぜ。尻の穴が小さいクソ野郎の顔すら拝む価値ねぇよお』


「肉片散らずに済んで良かったな、セルリアーナ?」


「もしかして会場に入って来た頃からいらっしゃいました?」


「さあ? 約束が守れるまともな父親で良かったとは思っているが」







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