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97 断罪イベントの幕開け②






「ほら、あのドレスも葬式の様に薄暗い────と言うよりは、なんだか」


「……あのマゼンタカラーの髪色に映えて、凛然とした御姿」


 何故か前日に、匿名でドレスや靴一式全てが届いた。侍女達は地味だと言ったが、当日ドレスの袖を通すと誰もが息を呑む美しさに思わず手が止まった。


 黒を基調としたレースの繊細さはセルリアーナが悲劇を飾る憐れな婚約者では無く、決別を意味するように。


 銀色の刺繍も、アマリィシアも第二王子殿下アルベルノとの婚約を白紙にしたからこそ、意図的に身に付けているのだから。


「皆の者、良く聞きたまえ!!」


 マイカは殿下の髪色と瞳の色をモチーフにしたドレスを身に纏い堂々と腕を組んでいる。


 卒業生達は静まり返る。厳かな卒業式に伴って、社交場とも化した場には、父兄達も多く参列している。忠臣とも言える、攻略対象者達はマイカが贈ったであろう、テラコッタカラーの物を何らかの形で身に付けている。


 逆ハーレムルートへ円滑に進んだ様な枠組みは、今日────全てが決着の付くはずだ。


「グランドル王国王位継承権第二位、アルベルノ・キャルスラータが宣言する!」


 身勝手な振る舞いが始まろうとすると、セルリアーナは衛兵達に囲まれる。


 スチル通りの絵面が仕上がって行く。父は数人係でセルリアーナから離されると、スポットライトの様な眩しい光が照らされるかの様に。


 婚約破棄のイベントは盛大に多くの衆目を集めて、社交界からも断絶させる為に。


「数々の愚行と傲慢による、光魔法の担い手に対し尊厳を奪い、暴漢を雇い暴行罪を企て傷付けた! 卑劣な振る舞いと所業は、次期王族の名に連なる者として相応しく無い悪烈さ────セルリアーナ・エスメラルディ! 貴様と本日を持って、婚約破棄をする!!」


 扇を広げて、悪役令嬢さながらの面持ちで、セルリアーナは凛然と立ち振る舞う。


「わたくしは、身に覚えのない罪を認めるわけには参りません」


 このイベントでは魔力暴走や、魔力持ちからの攻撃等の介入を防ぐ為に特殊な魔法陣が敷かれている。だから妨害行為は行えない、と言うことだ。


「追放しろ!」


「この悪女が!」


 警備兵達に取り押さえられ、セルリアーナはこれより公の場で断罪される。


 此処迄が用意された茶番だ。


「な、何を仰るのですか第二王子殿下!! エスメラルディ侯爵令嬢はこの、ペルシャ伯爵家次期当主として……ッ!」


「はあ?! ノエラ、女のお前が次期当主だと?! それにこの悪女の愚行なる振る舞いに? 出任せを言うとは、まさか逆賊に加担したんじゃないのか?!」


「ブライアント侯爵令息。婚約者がいても嫁入り前の子女と二人きりで市井に赴いたり、ましてやその横柄で貴族令息としての品位を欠落させる振る舞いこそ、改めなければならないのでは?」


「な、何を言うんだノエラァア!! お前ッ、俺に逆恨みでもしてんのか?!!!」


「仲睦まじい関係性ではもう無いのです、ブライアント侯爵令息。私のことは、ファーストネームで呼ぶのはお控え下さい。嫁入り前の貴族令嬢でもありますので」


 ノエラがずんと前に出ると、ブライアント侯爵家とは縁談が破断したこともあって痛烈な言葉を浴びせた。うんざりしたと言わんばかりに、冷笑した。


「……ッ彼女はメリウスの騎士として既に次期当主の資質を認められております……! 偽証を働き他者を貶める者を庇うなど、騎士道に反し────」


「君も殿下の御言葉を遮るのか、ティモラスビーテ侯爵令嬢。本の虫で引き篭もってばかりの苔が生えるくらい他人と関わらぬ君が、何を知った気でいる?」


「婚約者である私とは顔を合わせず、懇意になさる子女と逢瀬を重ねた……トンプソン公爵令息とは交わす言葉は御座いません」


「誰も見向きもされぬ、苔同然の女が?」


「本から得られる知識や、先見者の知恵は蓄積された人類をより豊かに導く言葉。決して無碍には出来ぬとはお思いではありませんか。少なくとも、真意を精査せぬまま正当性を主張なさるのは────」


「静粛に、国王陛下の御前であるぞ!!」


 先にセルリアーナを軽侮したのは、取り巻き連中である。


 流石に好き勝手主張を連ねる彼等に対して、トンプソン公爵家当主が堪らず一喝した。ごほんと咳払いをして、醜い争いを繰り広げる息子達に親世代は苦言を呈したいところだろう。


「もう……あの愚息は何てことをしでかしてしまったんだ……」


 貴族家における、領地繁栄に家門同士の繋がりを強固にする婚姻政策を台無しにした張本人達だからだ。


「事の重大さを何故、分からない? 俺の育て方が間違えたのか?」


「はあ…………息子の失態は、我が公爵家を失墜させる火種に成り果てたか」


 額に手を当て悲嘆する親の苦労さを知らぬ息子達も、これから学ぶだろう。一人の少女を婚約者そっちのけで庇護した結果は、きちんと己の枷になって足元を縛り付けてくれるから。


 ただ形勢は圧倒的では無くとも、不利な状況下である。


 援護射撃があるとしても、王族へ反感を買ったことは事実。静観をする国王陛下達には感謝しか無いが。


 ここで次期王弟として、第二王子殿下の力量を試したいと言う意向を汲み取ったことで、エスメラルディ侯爵家と王家は婚約破棄騒動の顛末を見届ける意義があった。


 セルリアーナは両端で警備兵の槍に阻まれる形でいるが、微動だにせず堂々と佇む。







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