表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛くて強い私の陛下、一生お守りいたします  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/60

42.仲直り?

 わたしとヘルムートは、えっ、と驚いてクラウス卿を見た。

 サムエリ公爵って、クラウス卿のことだから、つまり。


「クラース卿、プロポーズされたんですか!?」

「やめておけ! 何があってもそれだけは断ったほうがいい!」

 わたしとヘルムートの言葉に、クラウス卿は小さくため息をついた。


「必要なら、誰とでも結婚いたします。……が、サルトゥーベ伯についての情報に、それほどの価値はない。おおよその調べはついています。それに、イザベラ殿を利用せずとも、どうやらレーマン侯爵家は、既に国王派に寝返ったようだ」

 そう言うと、クラウス卿は冷たい視線をわたしに向けた。

「……どういう手段を用いたのかは存じませんが、ハロルド殿もレーマン侯爵も、殿下の犬となったようですね」

 なんか、言葉が刺々しい気がするんだけど。


「犬って、……まあ、ヘロードはなんとなく犬っぽいな」

 ハハッと笑うと、クラウス卿はわたしを睨みつけた。

「レーマン侯爵は、殿下の襲撃を計画した主犯であるとの疑いがあります。御身の安全のためにも、彼らを殿下のお側近くにおくことは危険です」

「それについては、わたくしのほうでも調べさせていただきました」

 こほんと咳払いをし、ロウィーナ男爵夫人が言葉を挟んだ。


「レーマン侯爵は、風向きしだいでまた貴族派に寝返る危険性がありますが、ハロルド様については、その心配は無用かと存じます」

「なぜ言い切れるのです?」

 クラウス卿が鋭く言ったが、

「その理由は、サムエリ公爵閣下もよくお分かりかと。……ハロルド様が殿下を見つめる目やその態度を見れば、誰でも分かりますわ」

 ロウィーナ男爵夫人の言葉に、クラウス卿が沈黙した。


「え。……どういうことだ? 私にはわからんが」

「わたしもわからない」

 わたしとヘルムートは顔を見合わせ、互いにイヤ~な顔になった。


 ヤだなあ。ただでさえヘルムートと似てるって言われてショックなのに、こんなところまで一緒とか、不吉すぎる。

「……きさま、今なにか失礼なことを考えていたな?」

「失礼なのはヘルムットーでしょ! 何を考えてようが、口に出さなければ失礼にはならない!」

「つまり考えていたのだな!?」


「お二人とも。……これ以上のお話は、城へ戻られてからのほうがよろしいでしょう。サムエリ公爵閣下も、それでよろしいでしょうか?」

「……わかりました」

 そう言うとクラウス卿は、そっぽを向いて馬車の窓に視線を向けてしまった。


 そんなに怒らなくても……。たしかにさっき、足を踏んで攻撃したのは悪かったけど、それだってクラウス卿がわたしを無視したせいじゃないか。

 でも、せっかく会えたのに、ケンカなんてしたくないしなあ。


 わたしはため息をつき、クラウス卿を見た。

「クラース卿、さっき、足踏んじゃってごめんなさい。……痛かったですか?」

 そっとクラウス卿の袖を引き、謝ると、ややしてからクラウス卿がこちらに視線を向けた。


「いえ……、大丈夫です」

 それだけだったけど、クラウス卿と目が合ったのが嬉しくて、わたしはにこにこした。

「殿下……」

 クラウス卿が何か言いたげにわたしを見た。


 なんでクラウス卿が怒っているのかはわからないけど、こうして会えて、やっぱり嬉しい。無事に戻ってきてくれてよかった。


 怪我はしていないみたいだけど、クラウス卿はなんだかやつれたように見える。何か美味しいものを食べさせてあげたいな、と思い、わたしはハッと気づいた。


 どうしよう。

 そういえば、わたしまだ一頭も獲物を仕留めていない!


「クラース卿!」

 大声で呼ぶと、クラウス卿がびくっとした。

「は、はい」

「クラース卿、ごめんなさい!」

 勢いよく謝ると、クラウス卿が驚いたように目を見開いた。

「殿下……?」

「あのね、クラース卿に美味しいお肉を贈ろうと思って、狩りに行ったんです! でもね、結局、何も獲れなかったの。ごめんね、ごめんなさい。今度は絶対、すごい獲物を仕留めてみせますから!」


 クラウス卿は、あっけにとられたようにわたしを見た。

「狩り……?」

「あの、でもね、ふだんは何も獲れないなんて、絶対ないんです! わたし、草原でなら一人で魔狼の群れを全滅させられるくらい、腕がいいんです! 今回はね……、あの……」

 じっと見つめられ、わたしは言い訳するのが恥ずかしくなってうつむいた。なんと言おうが、何も仕留められなかった事実は変わらない。


「……ごめんなさい。クラース卿が帰ってきたら、美味しいお肉を食べてもらおうって思ったのに」


 ふっと笑う気配がして、わたしは顔を上げた。クラウス卿が、やさしい笑みを浮かべてわたしを見ていた。


「……ありがとうございます、殿下。そのお気持ちだけで十分です」

「クラース卿!」

 わたしは勢いよくクラウス卿に抱き着いた。


「ぉわっ!」

 ガコッ! となにかが馬車の扉にぶつかる音がした。

「ごめんなさい! 次は絶対、絶対、すっごい獲物を仕留めてみせますから!」

 呻き声が聞こえて顔を上げると、後頭部に手を当て、痛そうに顔をしかめるクラウス卿と目が合った。


「あ、大丈夫? クラース卿」

「へ……、平気です」

 クラウス卿はわたしを見つめると、ためらいがちに手を伸ばし、わたしの頬に触れた。その時、


「おい、着いたぞ」

 ヘルムートの声に、クラウス卿がハッとしたようにわたしから飛び退った。そして、ふたたび馬車の扉に体を打ちつけた。


「……っ、……」


 言葉もなく悶絶するクラウス卿に、ヘルムートは冷たい視線を、ロウィーナ男爵夫人は微笑ましい眼差しを向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ