「ぬいぐるみたちのお絵描き!」
❅「冬の童話祭2023」参加作品です。
ここは、ある女の子のお家。
お家は建てたばかりのぴっかぴかなお家なんです。
当然、引っ越してきたばかりのお家にはまだ何もありません。
引っ越しの段ボール箱がいっぱいありました。
「今日の荷解きはこれくらいかな~」
まなちゃんのパパがよいしょと立ち上がりました。
まなちゃんのママも雑巾掛けの手を止めます。
「そうね、何とか寝れる様にはなったわね」
「ママ~、眠いよ~」
小さなまなちゃんは新しいお家にはしゃいで、すっかり疲れてしまった様子です。
3人はお布団を敷いてぐっすりと眠りました。
時計の針がカチコチと夜中の時間を差した頃。
1つの段ボール箱がガサゴソと音を立て始めました。
パッカーン!
「ああ、狭かったー」
「本当に、肩が凝ったわ」
「ここが新しいお家か~」
「まなちゃんのお部屋広い!」
声の主はまなちゃんのぬいぐるみたちです。
わいわいと、新しい自分たちのお部屋を探検です。
でも、まなちゃんのお部屋はまだ引っ越しの段ボール箱だけで、何もありません。
あるのはまなちゃんの新しいベッドくらいです。
「……何も無いわね」
「本当に」
「つまんないや」
「お家中を探検する?」
「誰かに見つかったらどうするの!」
「それもそうね」
ぬいぐるみたちは輪になって相談しています。
すると、好奇心旺盛なうさぎのぬいぐるみがつまらなくなって他の段ボール箱を開けてみています。
「ねえ! 見て見て!」
うさぎのぬいぐるみが声を上げました。
そして、段ボール箱の中からある物を取り出しました。
それは……。
「うふふふ」
「こっちもいい?」
「たのっしいな~♪」
ぬいぐるみたちが何をしているか、わかりますか?
「青色のクレヨン取って」
「ほい」
「こっちは絵の具でちょうちょ描いたよ!」
なんと、まなちゃんのお部屋の真っ白な壁に、絵を描き始めたではありませんか!
それも一面大胆に、それぞれが夢中になって絵を描いています。
うさぎさんのぬいぐるみが見つけたのは、まなちゃんのお絵描きセット。
すっかりぬいぐるみたちは調子に乗っています。
「「「出来たー!」」」
「おはよう、ママ」
「パパ! まなちゃんのお部屋の壁!」
朝起きたまなちゃんのパパとママは驚いて口をあんぐりと開けました。
まなちゃんのお部屋の壁に、絵が描かれているのです。
それも、素敵な動物たちが遊んでいる絵。
「……まなちゃんったらいつの間に!」
「怒るのかい?」
まなちゃんのパパが言葉とは逆に楽しそうにまなちゃんのママに聞きます。
「素敵な絵に免じて、まなちゃんをうんと褒めようかしら」
笑ったまなちゃんのママはとても嬉しそうでした。
不思議なのはまなちゃん自身。
「わたしじゃあ、ないよ?」
大人になってもまなちゃんはそう言いました。
絵は色褪せても、まなちゃんが大きくなるまで残されていましたとさ。
〖おわり〗
お読みくださり、本当にありがとうございました。