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第4〜6回なろうラジオ大賞

チェックメイトを叫ぶ烏

掲載日:2022/12/15








 異世界人(いせかいじん)がもたらした盤上遊戯(ばんじょうゆうぎ)。



 役割(やくわり)がある6種(しゅ)計(けい)16駒(コマ)を駆使(くし)して64マスの中(なか)で相手(あいて)のキングを討(う)ち取(と)った者(もの)が勝者(しょうしゃ)となるゲーム。


 時代(じだい)の流(なが)れでゲームはいつしか頭脳戦(ずのうせん)のスポーツとなり、最終的(さいしゅうてき)に代理戦争(だいりせんそう)の手段(しゅだん)として各(かく)国々(くにぐに)の貴族達(きぞくたち)の間(あいだ)で用(もち)いられるようになった。

 魔物(まもの)が脅威(きょうい)の存在(そんざい)であり、互(たが)いに戦争(せんそう)で無闇(むやみ)に血(ち)を流(なが)さないために取(と)られたこの手段(しゅだん)は軍事費(ぐんじひ)の削減(さくげん)と言(い)うコストパフォーマンス。更(さら)には人権(じんけん)の尊重(そんちょう)と、人類同士(じんるいどうし)で暴力(ぼうりょく)のない世界(せかい)を構築(こうちく)する思想(しそう)に賛同(さんどう)する者(もの)が増(ふ)えたと家庭教師(かていきょうし)から教(おそ)わったのは昔(むかし)の話(はなし)。



 揉(も)め事(ごと)があればチェスでケリをつける。

 貴族(きぞく)の嗜(たしな)みから義務(ぎむ)として教育(きょういく)に組(く)み込(こ)まれ、一族(いちぞく)の中(なか)で必(かなら)ず「騎士(ナイト)」と呼(よ)ばれるチェスの代理戦争(だいりせんそう)の役目(やくめ)を担(にな)う者(もの)を置(お)く事(こと)が常識(じょうしき)として定着(ていちゃく)した近年(きんねん)。



 僕(ぼく)がその役目(やくめ)を引(ひ)き受(う)けたのは当時(とうじ)騎士(ナイト)であった九(ここの)つ上(うえ)の義理(ぎり)の兄(あに)を打(う)ち負(ま)かした時(とき)。

 チェスの師(し)でもあった義理兄(あに)は「コレで肩(かた)の荷(に)が降(お)りた」と、言(い)いながら清々(すがすが)しい顔(かお)で僕(ぼく)に騎士(ナイト)の称号(しょうごう)を譲(ゆず)り渡(わた)した。


 チェスの腕(うで)を見込(みこ)まれての政略結婚(せいりゃくけっこん)であった義理兄(あに)だが、領土(りょうど)を死守(ししゅ)するのは並大抵(なみたいてい)の努力(どりょく)では出来(でき)ない。

 重圧(じゅうあつ)から年々(ねんねん)食(しょく)が細(ほそ)くなり、比喩(ひゆ)ではなく本当(ほんとう)に身(み)を削(けず)りながら役目(やくめ)を真(ま)っ当(とう)したそんな師匠(ししょう)を僕(ぼく)は今(いま)でも尊敬(そんけい)している。


 今日(きょう)は大陸(たいりく)で10年(ねん)に一度(いちど)開催(かいさい)されるトーナメント戦(せん)。この伝統的(でんとうてき)な大会(たいかい)の勝者(しょうしゃ)は願(ねが)い事(ごと)をひとつだけ口(くち)に出来(でき)るのが習(なら)わしだ。

 どうしても叶(かな)えたい願(ねが)いがあると当主(とうしゅ)に相談(そうだん)して、今回(こんかい)参加(さんか)した大会(たいかい)。

 当主(とうしゅ)である父(ちち)はお前(まえ)なら優勝(ゆうしょう)出来(でき)ると背中(せなか)を押(お)してくれた。



 

 決勝戦(けっしょうせん)の相手(あいて)は格上(かくうえ)。我(わ)が国(くに)強敵(きょうてき)王家(おうけ)の三(さん)の姫(ひめ)である幼馴染(おさななじみ)の獣人族(じゅうじんぞく)猫(ネコ)種(しゅ)。艶(ツヤ)やかな黒(くろ)い毛並(けな)みに、真剣(しんけん)なアーモンドの眼差(まなざ)し、たまに動(うご)く尻尾(シッポ)に気(き)を取(と)られながらも劣勢(れっせい)を逆転(ぎゃくてん)して粘(ねば)る。

 毎度(まいど)毎度(まいど)負(ま)け続(つづ)けていたが、今回(こんかい)ばかりは絶対(ぜったい)譲(ゆず)るものかと食(く)らいついて、ポーンを犠牲(ぎせい)に相手(あいて)のクイーンの駒(コマ)を弾(はじ)き飛(と)ばす。


 キングまで目前(めまえ)。


 そんな中(なか)、負(ま)けを悟(さと)ったのか彼女(かのじょ)が涙(なみだ)をポロポロと流(なが)す。


「そんにゃぁ〜」


「うっ。泣(な)くなよ姫様(ひめさま)」


 何(なん)で今日(きょう)に限(かぎ)ってそんな強(つよ)いんだと罵(ののし)られ、調子(ちょうし)が狂(くる)う。それを見逃(みのが)さなかった姫(ひめ)はどこまでも強気(つよき)で攻(せ)めて来(く)る。何(なん)でも、どうしても勝(か)って僕(ぼく)にお願(ねが)い事(ごと)を聞(き)いて欲(ほ)しいらしい。何(なん)だそれは?



「カラス、お願(ねが)い貴方(あなた)と結婚(けっこん)したいの負(ま)けてっ!?」



 その言葉(ことば)を聞(き)いて赤面(せきめん)しながら僕(ぼく)は全力(ぜんりょく)で叫(さけ)んだ。


 こんな世界(せかい)で幼馴染(おさななじみ)兼(けん)ライバルでもある愛(いと)しいネコを手(て)に入(い)れるために。



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― 新着の感想 ―
[一言] で、負けたのかな。勝ったのかな。 試合中にそんなこと言われたら戦えなくなっちゃうよぉ笑う
[良い点] 了解です!納得しました。お答えいただき感謝です。 (^∇^)
[気になる点] すみません。「総ルビ振り作品」には何か理由おありですか? 童話ジャンルではないので気になりまして。 [一言] 壮大なお話かと思ったら可愛らしいオチ。 和みました。
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